たけりゅぬ

はじめまして「たけりゅぬ」(真毒丸タケル改め中)といいます。 現代ファンタジーを中心に…

たけりゅぬ

はじめまして「たけりゅぬ」(真毒丸タケル改め中)といいます。 現代ファンタジーを中心に執筆しています。ヴァンパイア多めです。 今回は平安時代を背景に怪物退治の話を掲載させて頂きました。 よろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾ヨロシク

最近の記事

嬰喰の女(えばみのおんな)

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 【参考文献】・『枕草子』(萩谷朴校注 新潮日本文学集成 第十二回)  夕星の仮名をユウズツとする場合があるようですが、萩谷注にならいユウヅツとしました。 ・『新訂女官通解』(浅井虎夫著 所京子校訂 講談社学術文庫) ・『新訂官職要解』(和田英松著 所功校訂 講談社学術文庫) ・『有職故実』(石田貞吉著 嵐義人校訂 講談社学術文庫) ・『楽しい鉱物図鑑』(堀秀道著 草思社)   各嬰嶽は鉱物をイメージしています。  「座間輝

    • 嬰喰の女(えばみのおんな)

      #創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 #富士山噴火 七の下、琥珀地獄判官 溶岩帯は果てしなく続き、それにつれてクサビは自分の位置がわからなくなっていた。 スハエの姿も見失っていまや溶岩の襞の中をはいずりまわる小動物の気分になっていた。 両側は高々とそびえる溶岩の壁に迫られ、空は一筋の線のように見える。 もうなん時も歩いているのに山へ登る感じがない。 平坦な狭い場所をひたすら歩き続けている。 世界から断絶してしまったかのようだった。  そんな中、溶岩壁が透け

      • 嬰喰の女(えばみのおんな)

        #創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 七の上、琥珀地獄判官 クサビは人の背に負ぶわれていた。 負ぶっているのは母のようだった。 クサビは身を固くした。 負ぶった赤子がぐずると後ろ頭でド突いて黙らすような女だからだ。 そんなはずはない。 母はずっと昔に死んだのだ。 押しつぶされるような頭の重さを感じつつ、クサビはそこで目を覚ました。    クサビは衛士に負ぶわれていた。ザワだった。 「どうして」 「轍を追って来たらお前が道中で倒れていたので連れてきた」

        • 嬰喰の女(えばみのおんな)

          #創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 六、小夜姫 館の西門からユウヅツたちの痕跡は続いていた。それは道幅いっぱいの轍と、真ん中のか弱げな足跡だ。 轍も足跡も泥濘るんだ道にはっきりと残っていたので、暗い夜道でもよく分かった。 クサビはそれを頼りにユウヅツを追うことにした。  途中、遊行の僧に行き会った。ユウヅツのことを聞くと国分寺の者だというその僧侶が笠の中から言った。 「そなたの娘御は、巨大な泥の山を積んだ土車を一人で曳いておった。土車から荒縄が伸びて娘御の首

        嬰喰の女(えばみのおんな)

          「小説を書く人に100の質問」への回答

          Q.1 筆名(ペンネーム)を教えてください。たけりゅぬ です。 前ペンネの真毒丸タケルは、 しんどくなるくらい仕事が来ますようにとつけたペンネでしたが しんどくなるばかりで仕事が来ないので変えました。 Q.2 筆名の由来は?意味はありません。前ペンネのタケルを残してお気楽な感じにしました。 Q.3 主にどんな小説を書いていますか?(長編・短編・掌編など)長編です Q.4 主にどんなジャンルの作品を書いていますか?現代ファンタジーです。ヴァンパイアやライカンスロープが住み

          「小説を書く人に100の質問」への回答

          嬰喰の女(えばみのおんな)

          #創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 五、天青鬼鹿毛 世話好きな刀自や采女たちが、紅潮した頬をクサビに向けて話しかけてくる。 「またとない話じゃないか。なにを拒む理由があるのかい」  無論だ。 関東最強の判官様がユウヅツの裳着の後見をしてくださると仰せになられたのだから。 たかが走り隷の養女ごときを、この関東でおそらくもっとも権勢のある、これ以上望みようもない御方が介添えを申し出てくださるなど、僥倖以外のなにものでもない。 だから拒んでいるわけではない。

          嬰喰の女(えばみのおんな)

          嬰喰の女(えばみのおんな)

          #創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 四の下、厚木蛍宇津保 クサビたちは晴れ渡った空の下をザワの母の居所に向かう。 厚木の集落を抜けた先に小高い山が見えてきた。 麓から続く急勾配の石段を上ると、貞観の大噴火前からのものなのか蒼然とした杜に隠れて古びた祠があった。 さらにその杜に分け入り斜面を北側に回ると岩屋があった。 入り口周辺には割れた土器が散乱していてどれもが錆色に赤く染まっている。 ザワの母はこの中に居ると言う。 「三秋になる」  ザワが絞り出すよ

          嬰喰の女(えばみのおんな)

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          #創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 四の上、厚木蛍宇津保 クサビらが関東検非違使所に帰ると、局室が西の離れの隷長屋に移されていた。 嬰嶽の一、座間輝安彙を解除したことによる物忌のためであるが、おそらくこれからここがクサビの局室になる。 判官様の居所からは少し離れたが檻でもなく明るい局室でクサビは気に入った。 それとクサビがユウヅツを連れ帰ったことに頓着する者はいなかったので、おのずとそこに同居することになった。 与えられる食餌はこれまでと変わらないので、そこ

          嬰喰の女(えばみのおんな)

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          #創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 三の下、座間輝安彙 まどろみの中、クサビは戸外に激しい衝突音を聞いた気がした。 それは地鳴りを伴ってクサビのいる屋根裏の床をも揺るがしている。 外で何事か起こっている。 クサビは飛び起きた。 ユウヅツが階の降り口に立って表を指差している。 そのユウヅツは夢の中とはうって変わって色つやのある頬をしていた。 クサビはひとまず安堵した。  階はすでに降ろされていて、屋根裏を明るくしていたのが下からの光だと気づく。 女は外

          嬰喰の女(えばみのおんな)

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          #創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 三の上、座間輝安彙 クサビとユウヅツが三叉に辿り着いたのは、一つ星が西の地平に消えた後だった。 スハエはさらに先に行ったのか三叉周辺には見当たらなかった。 道標は苔生して読み取りにくかったが苔を削り落とすと「左 さま」とあった。座間とは古くは大寺があって栄えた場所で、ここからだと南に位置する。 右は、夜空に不死の噴煙が赤く見えるから西へ行く道だ。 今クサビが行くべきは南へ向かう左の道であろう。  左の道を進み出そうとした

          嬰喰の女(えばみのおんな)

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          #創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 二、夕星   翌朝、関東検非違使所の門前はまだ暗く人の往来はない。 獄門下に目をやるとそこに赤い小袿を壺に被り市女笠を手にした旅装姿のクサビが佇んでいる。 小袿の中から東の空を一瞥して茜色に染まりだしたのを確認すると、クサビは一人出立した。 スハエは現れていないがいつものことだ。 ここから西には一本道で最初の三叉まで終日歩かねばならない。いずれ追いつくつもりなのだ。  一時ほど歩いて来たところ、薄の穂が風に揺らぎ、まるで

          嬰喰の女(えばみのおんな)

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          #創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 【あらすじ】 富士山の貞観大噴火が起こった平安初期。関東では各地に、人の心魂に土魄が憑り付き発現する物の怪、嬰嶽が出現していた。  関東検非違使所では長官の地獄判官のもと、嬰嶽狩りを行っていた。その配下で、走り隷の役に就くクサビは嬰喰使の女である。嬰喰使とは、身中に嬰喰という嬰嶽の異種を飼い、それをひり出して嬰嶽を喰らわせ解除=滅殺する者たちのことだ。  クサビは嬰嶽狩りの任の途次に野盗に強殺された旅の一行の中から童女を救いユウヅ

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