見出し画像

フランボワーズ(仏語)はラズベリー(英語)で、木苺(日本語)です。

シェフの進藤です。

今日ご紹介するのは、当店の人気商品で期間限定販売の〈フランボワジエ〉。
リアルな仏語の発音に順ずれば
フランボワズィエ
の表記が正しいのですが、読みにくいし発音しにくいと“満場一致”で否決されました(笑)。なので、少し不本意ながらの〈フランボワジエ〉。

フランボワジエ

このケーキは、何年か前のクリスマスに向けた新作として商品開発したものになります。
実は今後出てくる〈オマージュ〉と同様に、私の〈お気に入りケーキ〉ケーキのひとつ。お客様からのご要望もありますが、〈自分も食べたいので1年に1回は必ず作る〉そんな感覚のケーキです。
私が言うのもなんですが、かなり完成度の高いケーキ!
作るにあたり、私がパリの修業で体験した〈フランス菓子の極意〉である〈甘味と酸味のバランス〉+〈多重食感〉をめちゃくちゃ意識しました。
これまでの売れ行きを見ると、一部熱狂的ファンを獲得してはいますが、かなり過小評価されてしまっているケーキの1つ。
是非ともこの機会に、この素晴らしく美味しいケーキに気づいて頂けたらなぁって思います。

このケーキは〈フランボワーズ×チョコ〉がメイン。フランスでは、フランス人が大好きな、ある意味〈鉄板の組み合わせ〉です。

のっけから話が逸れてしまいますが、日本には、日常でよく見かける〈英語〉みたいなフリをしている〈フランス語〉が沢山あります。例えば

〈メゾン=家〉
〈ルージュ=赤〉
〈マロン=栗〉
〈プランタン=春〉

等は、英語ではなくフランス語。
知らず知らずにそれとなく使われているんです。実は〈フランボワーズ〉も英語ではなくフランス語。
英語だと〈ラズベリー〉。
なので、フランボワーズとラズベリーは同じ〈木苺〉の意味です。ご存知でしたか?では話を本筋に。
あ、以降は〈ラズベリー〉ではなく〈フランボワーズ〉表記で統一します(笑)。

引用:アンベール・ジャパン株式会社が販売する〈シコリ〉のフランボワーズピューレより

私にとってフランボワーズは〈ザ・フランス〉の印象を持つ食材なんです。
パリで働いていた時、ケーキの仕上げにはフレッシュフランボワーズを、それこそ色んなケーキに飾っていて。
華やかな赤色。味の印象も強く、甘酸っぱくてオンリーワンな風味。粉糖でお化粧してあげると、それはもうめちゃくちゃ可愛い。それを使うだけでフランスを感じてしまいます。粒の中に食べられる程度の小さく固い種があり、それを日本人は嫌う傾向にありますが、アゴが発達していて噛む力の強いフランス人には、それは全く気にならないようで(笑)。
そしてこれも自分勝手な印象かもですが、

〈チョコレート×フランボワーズ〉

がとてもフランス菓子らしい組み合わせだと思っていて。

個人的に大好きなマリアージュ。

フランスで最初に働いたパティスリー〈シュクレ カカオ〉に、〈オジリス〉と言う名の〈チョコ×フランボワーズ〉の大人気ケーキがあり、そのケーキがその印象を決定づけた感があるのですが。
ビターなチョコレートムースの中央に、冷凍したフランボワーズの実をたくさん逆さまにして沈め、そのフランボワーズの空洞に自家製フランボワーズのジャムをたっぷりと絞り込んで、最初と同様のビターチョコレートムースで蓋を。そして、仕上げにはビカビカで漆黒なグラサージュをかけ、フランボワーズとチョコを飾り付ける。そんなケーキでした。
本当によく売れるからスゴく頻繁に仕込むので、その様な印象になってしまったのかもしれません…(笑)。

話を戻します。
その〈フランボワジエ〉の構成は、
上から飾りの金箔+フランボワーズチョコ、ミルクチョコのグラサージュ、アングレーズベースのミルクチョコムース、フランボワーズジュレ、アーモンドスポンジ2枚、フランボワーズガナッシュ、フランボワーズチョコのフーユチン(サクサククッキー)になります。
肝になる部分は色々ありますが、強いて1つ挙げるとすれば〈フランボワーズガナッシュ〉。
私の好きなサッカーで例えると、前衛の〈フランボワーズ〉と後ろを守る〈チョコ〉を繋ぐ中盤の要的な。ガナッシュレシピ中の生クリーム+牛乳の中に、あらかじめフランボワーズピューレを入れて作ったガナッシュ。若い頃、初めてそういった、フルーツピューレを加えたガナッシュ(チョコクリーム)のレシピを見た時、衝撃が走りました。守りのタスクに優れた選手に、攻撃の能力を与えるような。
大活躍中のリバプール遠藤選手の様なリンクマンを作るレシピ。素晴らしい発想です。
ごめんなさい。サッカーファン以外には理解できない表現かな…(笑)。

また逸れたので、本筋に(笑)。
今回この商品を作るに当たり、最初に決めたコンセプトが〈余計な物は加えない〉。
あくまで

〈チョコレート×フランボワーズ〉

のマリアージュの追求。
なので、わざとシンプルな味の構成に。
上級パティシエを目指すと〈複雑な味を作る自分〉に酔いがちで、やれアニスだとかローズだとかトンカだとか、胡椒だとかもっと別のスパイスだとかお酒だとか。
そういった物をついつい入れたくなるのですが、今回はNGに。
日本人にしっくり来るのは、やっぱり〈シンプル イズ ベスト〉だと思います。
既に大勢の方に〈すっごく美味しい〉の評価を頂いているので、間違いないかと。
直球な味わいを意識しましたが、その中でもちゃんと進藤流を表現しています。

〈甘味・酸味・苦味少々、ネットリ、ツルッ、サクサク〉

間違いなく当店のコンセプト〈違いの分かる大人向けのケーキ〉。期間限定で、今回も短い期間の販売になると思います。
最後に、再度言わせて下さい。
私の思いとは裏腹に、過小評価されていると感じるこの〈フランボワジエ〉。
是非ともこの機会にご賞味下さい!

ちなみに名前〈フランボワジエ〉は、同名の古典菓子とは全く繋がりなく、〈フランボワーズの木〉としての意でそう名付けました。
ではいつも通り、論より証拠。ご来店をお待ちしております。

この記事が参加している募集

至福のスイーツ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?