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馬場状態を読み解けたかで勝負の決まった3重賞の振り返り(第59回フローラS・第55回マイラーズC・第21回福島牝馬S回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.04.07 16:30~からの文字起こしです。


第59回フローラS

蒼山サグ(以下、蒼):東京メインのフローラステークスの回顧をしていきましょう。こちらはゆたさんからよろしくお願いします。

くらみゆた(以下、ゆ):3歳牝馬で初めての2000m重賞という形になりまして、今後はレガレイラみたいなパターンも増えるのかもしれませんが、やはりこの距離に慣れていない中で、いかにスムーズに競馬ができるかというところが試されるレースだと思います。特に府中の開幕週ということもありますので、与えられた枠をどのように使っていくかというところが大事。ただその中で今日の勝ち馬は、あまりバイアスの恩恵がない中でしっかり勝ち切ったというところは注目していいのかなというレースになりました。

まずスタートですね。やはり府中の2000mということもありましたので、内ラチ沿いのポジション取りは激しくなっています。外からユキワリザクラがダッシュでハナを狙うも、内枠のメアヴィアの方がダッシュはこれほど良くなかったんですけど、やっぱり内枠を活かして、並走する形になりました。

そして一番激しかったのは、その1つ後ろですね。逃げ馬の後ろのポジションの奪い合いです。一番枠のバロネッサが当然ながら取りに行きたいところだったんですけれども、スタートがいまいちであまり行き脚がつかないという中で、3番の岩田望来騎手のラヴァンダが狙っていきました。1回目のアタックでは取りきれない気配もあったんですけど、コーナーの入り口ではしっかりと取り切るという形になりまして、ラヴァンダがポジション確保に成功しています。ここで1つの勝負が決まった形で、一番人気のバロネッサの方はここから先は苦しい競馬となりました。

あとは外からですね。やっぱりこちらも人気でしたが、大外引いてしまったクリスマスパレードが強気にこちらの前を取りに行きました。ただ、やっぱり強気に外から行った分だけ少し噛むような力んだ走りになってしまいまして、こちらもバロネッサ同様、道中での消耗は激しかったのかなというふうに思います。その中で、クリスマスパレードのちょっと後ろを取ったのがアドマイヤベルです。枠自体は真ん中というところで良くも悪くもというところだったんですけど、スムーズに好位置で後ろを取ることができました。

前半ペース自体はそこまで速くなかったんですけども、各馬かなり無理してポジションを取りに行ったということもありましたので、600m以降だいぶゆったりと流れて、直線の末脚が問われる勝負となりました。直線ではユキワリザクラが抜け出しにかかるも力尽き、それをやり過ごした後にラヴァンダがインから抜け出そうという形でしたが、これを外から一気の末脚で突き抜けたのが、1着がアドマイヤベル、2着がラヴァンダという結果で終わっています。

勝ったアドマイヤベルは、各馬が結構無理をした中でスムーズな走りを見せていたというところは横山武史騎手のエスコートが良かったのかと思います。ゴール前でガッツポーズが出てましたが、会心の騎乗ができたのかなと思いました。開幕週の馬場で外から差し切りがというところもありました。今年はあまり距離が伸びて良さそうな牝馬というのが少ないだけに、オークスでも楽しみかなと思います。またスワーヴリチャード産駒が距離が伸びたところで一発勝負で結果を出して、トライアルを勝ってクラシックに駒を進めたのは、さすがだなというところです。今年の1歳馬、0歳馬はどんどん売れるんだろうなと思ったところではあります。

2着のラヴァンダは、逆に本当に騎乗がビシッとはまった形で、前週の福島牝馬ステークス同様、岩田望来騎手がインベタでしっかりと騎乗馬の力を出し切ったところだと思います。岩田望来騎手は一時期ペースが落ちてましたけども、去年の後半から復活してきて、予想通り福永厩舎の主戦候補の一人として騎乗馬も増えてますので、どんどん楽しみになっていくのかなと思います。あとは3着のカニキュル、4着のクリスマスパレード、この辺は外枠ながらよく頑張っているとは思います。クリスマスパレードは道中だいぶ力んだ走りで、直線では外からユキワリザクラを押し込んでしまったような感じで、ちょっと印象は悪かったので、騎手のやろうとしたことは理解しつつも、どういう評価で次走誰が乗るのかというのは気にした方がいいかなというふうに思った一戦ではありました。以上になります。ありがとうございました。

蒼:こひさんの方はいかがでしょうか?

こ:私もこのレース、岩田望来ジョッキーがうまくインを取り切ってくれたなというところがすごく見ていて感心したところです。こういった回顧をずっとやってきていると、この枠に入って前残りの馬場で岩田望来が内枠引いているのであれば、こういう競馬をしてくれるんだろうなというところの具体的な期待をして、今回それに応えてくれる形になりました。ポジショニングですとか、そういったものを分かってやっているジョッキーがいるなというのも、こういった回顧を積み重ねていくと分かってくるなというのがちょっと体感できたなという点でも面白かったです。ちょっと岩田望来との絆が深まったこの土日でした。

あと勝ったアドマイヤベルですね。ちょっとこの馬が母がベルアリュールⅡというところで、アドマイヤリードの下になります。今回この馬、当然ながら近藤利一オーナーが亡くなっていますので、後妻という形になります近藤旬子オーナーになっているんですが、このセレクトセールで3800万ぐらいで競り落とされているですね。スワーヴリチャード産駒の当時の評価でいうと高かったのかなという側面と、兄弟にG1馬のいるノーザンファーム生産馬でいうとちょっとお安くも見えたりしていまして、そういったところがひょっとしたら旦那さんとの縁ですとか、そういったところも含められていて落とされたのかなという感想をもちました。久しぶりにアドマイヤの馬が人気の形でG1に出るというような形になります。近藤英子オーナーの馬もまだまだいますが、こちらのアドマイヤ本家の方もしっかりまたG1に出すような馬を持たれているというところが個人的にはちょっと嬉しいなと思っているところです。はい、以上になります。

ゆ:ちなみに、今のお話を聞いて、他の兄弟はどうしているのかなと思ったのですが、4歳の兄は藤田オーナーが落札していましたね。ドゥラメンテ産駒でデビュー戦3着後に取り消しなので体質が弱かったのかもしれません。セレクトでは1億2千万弱ですね。

こ:そうなんですよね。この兄弟を見ていると、多分このレベルで走っているのはアドマイヤ冠の二頭くらいですよね。

ゆ:どこまでアドマイヤの馬が続くかは分からないですけど、この牝馬ですからね。また産駒が生まれてくることを期待しています。

こ:そうですね。以前ほどの規模ではないにしろ、何かつながっていってほしいなということですね。

第55回マイラーズカップ

こひ(以下、こ):京都で行われましたマイラーズカップの回顧をさせていただきます。京都開幕週という設定に戻ってきて今年が2年目ですね。今年の京都は2月までにリニューアル後に開催が続いていた影響で、ちょっと馬場が悪くなり、力が必要な馬場になっているというような印象でした。今週もやはり開幕週としてはちょっと使い込まれた感が残っているような、そんな印象でした。

今回は安田記念に向けたトライアルらしい構図になっておりまして、マイル路線の能力上位馬であるセリフォスソウルラッシュの2頭が揃い、そこに対して冬から春のオープンやリステッド、G3等で結果を残してきた馬がどうかというような構図でしたが、ペースが流れたこともありまして、実績馬が力の違いを見せつけるような結果になったかなと思います。

スタートのところですが、ゲートではセッションエエヤンが好発しました。この2頭は両方前に行ける馬なので前に行くのかなと思いましたら、最内からスタートではやや出負けしていたはずのトゥードジボンが押して出していき、ハナまで行ってしまったというような形になりました。その後ろにセッションがつけるというような展開。その外にいましたエエヤンはその後やや行きたがるというようなシーンもありました。前の並びが何度か変わるというところで、2ハロン目からは10秒9、11秒1、11秒5、11秒5と、あまり休むところがないようなペースになっていたかなと思います。そんな中3コーナーからは手応え十分にソウルラッシュが外からポジションを上げていこうかなと動いているところに対しまして、その内にいましたニホンピロキーフ、田口騎手が応戦をしていくというようなところが見られました。直線では結果的にソウルラッシュが来たので早めに動いていく形になりましたニホンピロキーフが一旦先頭に立ったものの、外からソウルラッシュが鮮やかに突き抜けるというような競馬になりまして、もう1頭の実績馬であるセリフォスも内枠からうまくさばいて2着に浮上してきたというレースになりました。

まず勝ったソウルラッシュは一昨年もこういった渋った感じのマイラーズカップを勝っていまして、こういった馬場も問題なくこなせるというところに加えまして、結構強気な騎乗をしていきながら外から被されることはないように、逆に言うと安全面を気を配ったような騎乗をしていたなというような印象で、しっかりと動けるポジションを取って勝ちにいったという騎乗になりました。団野騎手も落ち着いていたなというふうな印象です。本番の鞍上が誰になるのかというところはあるかなと思いますが、何かしら恵まれたもう一押しというところがありましたら、今年こそタイトルに手が届く可能性というのはやはり十分にあるなという印象です。

2着になりましたセリフォスも相変わらずこういった条件設定でも安定しているなというところで、今日は内目の枠からもうまく立ち回っていまして、本番への上積みもありそうな調整過程というところも含めますと、安田記念という舞台であれば本番ではこちらの方が向いていそうだなというような印象があります。この2頭は去年のG1でそれぞれしっかり馬券圏内になっていたマイルとの相性の良さを示していた馬ですが、今年も同じようなポジションをしっかり保って回していけるなというようなところは見せてくれたレースだったのではないでしょうか。

そこに真っ向勝負して3着に食い込んだニホンピロキーフですね。この条件で勝ってきた形でしたが、早めに動きながらも4着以降の後続とは差はついていまして、完全に重賞を勝てるレベルのポテンシャルというところは見せたレースだったかなと思います。特に田口貫太騎手とのコンビというところは、師匠の厩舎なので、あまりすぐ変わったりしなさそうかなと思いますし、今後が非常に楽しみだなと思います。賞金的にはそんなにまだ積めている立場ではないので、サマーマイルあたりになるのかなと思いますが、そういったところでうまくはまれば重賞を勝って秋に行くというようなところまで期待できるのではないかなと思いました。

蒼:ゆたさんの方からはいかがでしょうか。

ゆ:マイル路線はベテラン勢が元気というところくらいでしょうかね。

蒼:シュネルマイスター出資馬として、かつてのライバルたちもまだ元気だなと

こ:もうシュネルマイスターは高見の見物ですからね。

蒼:マッドクールあたりから突き上げが来てますけれども、種牡馬として勝負になれば嬉しいなとは思っております。

第21回福島牝馬S

蒼:福島牝馬ステークスの回顧をお願いしましょう。こちらはゆたさんからよろしくお願いします。

ゆ:福島牝馬Sは重賞には足りない馬、それから条件上がりという馬が中心となった一戦でした。内前有利という馬場状態もありましたし、道中残念ながらアクシデントもありましたので、先行してないと競馬に参加できないという一戦になってしまったかと思います。

レースの流れですが、スタートからまずはウインピクシスがハナを主張し、外からラリュエルフィールシンパシーという形になっていました。スタート後1コーナーまでの距離が短い福島芝1800mでしたので、隊列自体はあっさりと決まって、前半はスローで入ったのかなという形。600から1000mが12秒台とかなりまったりとした流れで進みましたので、後方からタガノパッションを筆頭に後続勢が早めに馬群を詰めているという展開になりました。

ただ、その結果3コーナー手前ではかなり前後の間隔が詰まるような馬群になってしまい、その中でのアクシデントが発生しました。シンリョクカが少し動いたフィールシンパシーに足を引っ掛けてしまって落馬し、その影響でライトクオンタムも転倒してしまいました。また、キミノナハマリアファユエンあたりもちょっと大きく振りを受けてしまいましたので、この時点で中団外側にいた馬というのは競馬には参加できない状態になってしまっています。ペースが落ちたところで馬群が詰まってしまった中での事故というところで、制裁も特に出ていないという形になるんですけれども、ちょっと続いてしまっているのは危ないなというか、あんまり起きてほしくないなというところですね。

4コーナーでは内前にいるだけの馬が勝負に参加できるという展開になってしまいました。直線に入るとウインピクシスフィールシンパシーが並びかける形で、内のコスタボニータは、ちょっとその前にいたラリュエルの手応えが悪いことと、コスタボニータ自身が一瞬内を狙っているときに一旦進路はなくなってしまったんですけれども、残り100mから一気に伸びて重賞初制覇という形になりました。

勝ったコスタボニータ。道中は枠を生かしてインでしっかり脚を溜める形を作っています。前が瞬発力勝負にしたくないタイプでしたので、上がり4ハロン競馬に持ち込んだところでも慌てて動かなかったというところは良かったと思います。ちょっと直線では、インを突こうとしたりして進路をなくすロスのある競馬にはなったんですけれども、4コーナーまでの貯金がしっかりと伸び脚につながったのかなと思います。このインからピュッと差す競馬っていかにもイスラボニータ産駒的な血統というイメージですかね。今後も使う脚の短い展開であれば出番はあるのかなと思います。

あとは2着のフィールシンパシーと3着のウインピクシスは、スタートから積極的な競馬をしたことがプラスになったと思います。この2着のフィールシンパシーの母父がダンスインザダークで、3着馬の父親がゴールドシップですから、馬群が詰まった後、早めに自分たちで動いて、そこそこ上がりの速い競馬に持っていったというところが、特徴を生かすことができたポイントだったと思います。他の人気馬は、今日に関して言うとアクシデントの影響が大きかったので、この後長引いたりとかダメージがないかというのは気になるところだと思っております。以上になります。

こ:福島牝馬ステークスは、個人的には中山牝馬ステークスとの連動が気になるレースになっています。今回勝ったコスタボニータが前走の中山牝馬ステークスで5着、2着したフィールシンパシーも4着というような形で、コース形態的なところが似通っているというところもあり、この2つのレースの関連性は今後に向けても見ていきたいと思います。

特に開幕週で割と前が残りやすいところもありますので、中山牝馬ステークス組でも前に行ける馬は一つの狙い目なのではないかと思いました。今回、岩田望来騎手が内目をしっかり守っていって、直線で抜け出すという競馬をしたことが、馬場状態や周りの馬との関係性を見て、うまく乗っていたという印象でした。また、3着に入ったウインピクシスは、福島記念で4着に入っていたりしますので、福島記念や中山牝馬ステークスのようなレースはケアしていきたいという印象でした。


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