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【映画】事実は小説よりも奇なり~「パリ・ブレスト~夢をかなえたスイーツ」

タイトルの通り、「パリ・ブレスト~夢をかなえたスイーツ」を観てきました。実はなんとなく予告編だけしか知識が無いまま本編を鑑賞したので、そこでも実話だとは触れられていたような気もするのですが、ここまで壮絶な幼少期を乗り越え、成功を掴んだとは!と感動だけでなく、むしろ驚愕のほうがピッタリくるような内容でした。ということで感動さめやらぬうちに鑑賞レポートをしていきたいと思います。

(ネタバレにならないよう注意していきますが、一部触れてしまうと思いますので、予めご了承下さい!)

まずは予告編内容の確認から・・・

22歳でパティスリー世界選手権チャンピオンに輝いた天才パティシエ、ヤジッド・イシェムラエンの自伝書をもとに映画化し、つらい少年時代を過ごした孤独な青年が極上のスイーツで奇跡を起こす姿を描いたフランス発のヒューマンドラマ。

映画.comより

予告編ではこの程度だったので、つらい少年時代といっても、せいぜい移民家庭の少年が困難を乗り越えて・・・くらいだと思っていたんです。そしたら・・・

なんと、予想を遙かに超えた過酷さだった!!

母親に育児放棄され、過酷な環境で暮らす少年ヤジッド。そんな彼にとって唯一の楽しみは、里親の家で団らんしながら食べる手作りスイーツで、いつしか自分も最高のパティシエになることを夢見るように。やがて児童養護施設で暮らし始めたヤジッドは、パリの高級レストランに見習いとして雇ってもらうチャンスを自らつかみ取る。田舎町エペルネから180キロ離れたパリへ通い、時には野宿もしながら必死に学び続けるヤジッド。偉大なパティシエたちに従事し、厳しくも愛のある先輩や心を許せる仲間に囲まれて充実した日々を送るが、嫉妬した同僚の策略によって仕事を失ってしまう。

同上

なかなかの過酷さだと思いませんか?冒頭からそうしたシーンで始まり、「おいおい、どんな感じになるんだ?」と観ていてハラハラしました。それくらいの壮絶な幼年期を送るのです。そんな中で一筋の光だったのは、里親家族がとても愛情深く主人公(ヤジッド)に接してくれたこと。里親の息子さんがパティシエ志望だったこともあり、ヤジッドも同じ夢に向かって進むことを決意するのです。

映画でも一部触れられていましたが、里親家族とスイーツを共に食べる団らんシーンがあるのですが、ここがとても温かいんですね。きっと彼は実のお母さんにも自身のスイーツを喜んでもらいたい、そんな気持ちがきっとあったと思うんです(実際に実家で作るシーンもあります)。そんな複雑な幼少期を経て、さらに大変な児童養護施設での生活が始まるのです。ここもまた観ていて「しんどい」シーンの連続でしたね・・・。

ようやく必死でチャンスを掴み、上向くかと思いきや・・・

それでも必死にチャンスを探し、なんとかパリの高級レストランで職にありつくヤジッドでしたが、ここでもまたなかなか大変な目に。とはいえ、持ち前の度胸とお菓子作りのセンスを買われ、なんとか道を切り開いていきます。青年期を演じたリアド・ベライシュさんは本職はYouTuberなのだそうですが、過酷なストーリーながらも、なぜか飄々とした独特の演技でシリアス過ぎない空気を作ってくれていました。彼の演技に救われたといいますか、だからなんとか観られた感は否めません(それくらい悲しいんですよ、ストーリーが)。

後半はパティスリー世界選手権へ向けて突き進む!

まあ、タイトルにはそう書きましたが、ここに到達するまでにまだまだ過酷な試練は続くんです、いろいろと。しかし、前述の通り、リアドさんの演技なのか、監督の演出術なのか、ベターっとした暗さではなく、どことなくカラっとした描き方をしていることもあり、観ているこちらが「ヤシッド、ここはもっとキレる場所だろ!」と思うことも。その一方で、ある場面では
目一杯怒りを表現するシーンもあり、濃淡がしっかり描かれています。そして後半はいよいよ世界選手権に向けたストーリーになります。まあ、ここに関しては、数多のサクセスストーリーモノ同様、ハラハラドキドキしつつの展開となります。ぜひ、スクリーンでご覧になって手に汗を握って欲しいところです。

映画を彩る、様々なスイーツも見どころです

この作品では主人公のヤジッドがスイーツを作るシーンでは、スローモーションを多用した他とは異なる演出がなされています。恐らく、彼が天才的なスキルを持っていること、さらにはスイーツを作っている時こそが彼にとっての生きがいであり、心から楽しめる時間だということを強調するためだと思うのですが、とても魅力的なシーンになっています。そしてもちろんパティスリーですから、出てくるお菓子が素晴らしい!普段それほどスイーツを食べる方ではありませんが、観ていたら当然食べたくなりました(笑)。ちなみにパンフレットによると、登場するスイーツは、フォンダンショコラ、フィンガーフランボワーズ、タルトタタン、キャラメルのフィナンシェ、ショコラ・スフェール、サンノトレ・・・だそうです(実は全然知らない笑)。

スイーツ映画と言えば、「ショコラ」ですが・・・

ちょっと(いや、かなり?)古い映画になりますが2001年公開の「ショコラ」という作品がありました。「ギルバード・グレイプ」のラッセ・ハルストレム監督、ジュリエット・ビノシュ、ジョニー・デップ出演で、これもまたなかなか面白かったです。とにかくその名の通り、ショコラ(チョコレート)をふんだんに使ったお菓子や料理が、これでもか!というくらい登場し、とにかくお腹がすくというか、観たら絶対に帰りにチョコレートのスイーツを買って帰りたくなること必至な作品です(笑)。まあストーリー自体は新旧の文化の衝突、他者を受容できるか否かなど、なかなか深い問題を描いてはいるのですが、とにかく「美味し(そうな)映画」であることは間違いありません。こちらもあわせてオススメです。

ここで急に社会問題を少しだけ・・・

やはりここ最近のフランス、とくにパリ近郊といいますか、そういった映画ではとにかく移民問題、格差問題をテーマにした作品が多いように感じます。かつて紹介したことのある「パリに見出されたピアニスト」、「テノール!」もそうだったように、我々が「パリ」と聞いてイメージする煌びやかなパリではなく、近郊にある移民や労働者階級が多く住む地域が今回もテーマとなっていました。しかも今回の場合はもっと「郊外」。毎日180キロ離れた場所から電車でパリまで通勤していたと書かれていました。

フランスの場合、北アフリカだけでなく、世界各地に植民地を持っていたので、フランス語を母国語とする彼らが、祖国から移動して来るということが以前から問題になっていたように思います。特に二世、三世と育っていき、フランスが祖国になったにも関わらず、依然として様々な差別や貧困状態の中で生活をしている姿がこうしてたくさんの作品で扱われていると言うことは、それだけこの問題が非常に根深く、またフランスではポピュラーな問題になっていることを表しているように思いました。この問題は決してフランスだけでなく、お隣ドイツもまた大変なことになっており、そうした動きはヨーロッパ全体に広がっています。そしてなぜか(だいぶ)周回遅れで日本もそうした流れに乗ろうとしているというから、大丈夫なのか?不安しかありません・・・。

結論・・・★★★☆☆

勝手に5つ星で評価すると、星3つ!(←ちゅーぼーですよ風に)。これまで書いてきたように、なかなかの壮絶具合で、しんどいシーンも多いのですが、主人公ヤジッドがどこか飄々としているので、なんとか乗り切れたという感じです。ラストシーンの後、エンドロール直前には実際のヤジッドさんや里親家族との写真が登場し、これもまた感動を一層深めてくれます。そして何より、これが実話であり、様々な困難を乗り越えたヤジッドさんは実際に自身の店舗を複数経営し、実業家として成功されているということを知り、これが一番の収穫だったように思います。もしお時間がありましたがぜひご覧下さい!




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