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矜持

1時間前

集められた若者に、上官は声を荒げて言った

『特攻隊の編制をするよう命令が来たから、よく考えて1時間後に提出せよ』

紙には、選択肢があり

『熱望する』『希望する』『希望しない』

再び集められた若者は、覚悟と不安がみられる

上官は叫ぶ

『熱望する者、希望する者は、一歩前へ!』

その刹那、部屋の扉が開く

扉の方を振り返ると、軍服を纏った人影

よく見れば、顔にはシワが刻まれ
頭髪がある者の多くは白く
居並ぶ若者とは打って変わって華奢な肉体の
老人たちがそこには立っていた

口元を少し緩ませながらも
真剣な眼差しをたたえたまま
部屋の中へ入ってくると

若者達の横を通り越し
彼らと比べれば若輩者の
上官の前に並び

『熱望する』
と静かに発した

なにか言わんとして、口を開けようとする上官を
遮るようにして

『この作戦はスピードと敵艦に特攻を仕掛ける前に撃墜を回避する技術が必要だ』
『見ろ、彼らは筋肉が重すぎる、我々が適任だ』
『伊達にこの歳まで生きていない、回避する技術においても、彼らの出る幕じゃない』

そこまで言い終えると、上官に背を向け、若者の方を向き、顔を紅潮させ、強く吠えた

『いいか!あんたら若者の出る幕じゃない!祖国のために犠牲になるには諸君らの命の価値は低すぎる!!
よいか?この悔しさを忘れるな!
そして、いつの日か、諸君らが、営みを続け、家族を持ち、子を育てた後に、諸君らの前で、その犠牲になるには低過ぎる命を捧げようとする愚かな若者が居た時には、今日の悔しさを思い出し、その若者の前へ歩み出て、存分にその価値を示して欲しい!!!
その日が来るまで、どうか生き抜き、犠牲に足る価値を持った人間となるよう、精進したまえ』

言い終えると、ニヤリと笑い、敬礼をした。

、、、、、

僕は、時々、こんな妄想を、します。

老獪な飛行技術を携え、戦地に出向けなかった方が居たのかどうかすら知らないです。

ただ、戦時中に限らず、そんな想いで、生きることに憧れがあります。

若者の未来のためなら、喜んで犠牲になりたい。

もちろん、犠牲になる前提じゃなくて😆
そんな想いを持っていたいって話。

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