見出し画像

石見・湯めぐりノススメ

はじめに

みなさんは九州を除く西日本で優れた温泉があるエリアでどこが思い浮かぶでしょうか?

温泉といえば九州そして東日本の東北・北海道というイメージで、特に近畿・中国・四国なんかは優れた温泉のあるイメージは乏しいかもしれません。

実はあまり知られていないのかなと思うのですが、中国地方だと岡山県北部の美作のエリアには足元湧出のピュアピュアな美人・美肌の湯が複数あったり、近畿地方だと神戸市から大阪市の間の都市部に上質な温泉がごくごく普通な見た目の銭湯に湧いていたりと少ないながらも優れた温泉が集中するエリアがあります。

そんな実は優れた温泉地があるんだと思える九州以外の西日本で、私が最も優れていてなおかつ温泉の個性が強いと思えるのは、島根県の石見地方東部と出雲地方南西部にまたがる三瓶山温泉郷と呼ばれるエリアです。今回は2月24日に三瓶山温泉郷の石見地方側の温泉及び石見地方を代表する温泉、温泉津温泉をめぐるドライブをしましたので、石見・湯めぐりノススメとしてドライブルートを紹介します。ただ温泉を巡るだけでなく、“味”のある鄙びた町並み・神社巡り・重伝建巡りを合わせたドライブルートの紹介となります。

2024年2月24日現在、三瓶山温泉郷では湯めぐりスタンプラリーも実施されている



8時00分頃 千原温泉・千原湯谷湯治場

三瓶山温泉郷スタンプラリー、千原温泉の紹介ページ

まず初めに向かうのは、邑智郡美郷町千原にある千原温泉。ここが三瓶山温泉郷の中で一番朝早くから営業しています。

三瓶山温泉郷は優れた温泉が多いエリアですが、ここの温泉の良さは他の温泉と比べても段違いの良さだと個人的に思います。細い山道を走らざるを得ないアクセス難な温泉ですが、三瓶山温泉郷でどこか一つだけ行くと選ぶならここに行ってくださいとおすすめしたくなる極上湯です。

このお湯の特徴は足元湧出でプクプクと気泡が沸いてくるぬる湯であるということ。これがとにかく快感です。中国山地だと足元湧出はそこまで珍しくなかったりするのですが、ここまでプクプク感があるのは熊本県の地獄温泉や岩手県の藤七温泉ぐらいだと思います。プクプク感だけでなく34℃程度のぬる湯というのもこの温泉の良さだと思います。

湯船も小さく人気の温泉なので、人が少ない時間を狙って行きたいなら冬場の朝一がおすすめです。今回も冬場の朝一に行くことができて1時間程度、じっくりと独泉ができました。

山奥にある千原温泉。かつては旅客を受け入れない湯治療養専門の温泉だった
底板の下は地面でそこから直接温泉が湧き出る珍しい温泉と紹介されている
千原温泉の湯船からプクプクとした泡が湧き出る


10時00分頃 旧・石見川本駅周辺の散策

旧・石見川本駅 駅舎には現在・信用金庫のATMが設置されている。

次の温泉に入るまで時間の余裕があったので、ここで、かつて石見地方を走っていたJR三江線沿線の町で町歩き。目指すは旧・石見川本駅。三江線の廃線跡に沿って島根県道40号線を走り、千原温泉のある美郷町から川本町へ向かいました。


旧・石見川本駅周辺の風景その1
旧・石見川本駅周辺の風景その2
旧・石見川本駅周辺の風景その3
旧・石見川本周辺の風景その4

たどり着いた旧・石見川本駅周辺は川本町の中心部であり、そこには“味”のある鄙びた町並みが広がります。小さな町であるが、三江線の中間駅では最大規模の町でした。昼頃に石見川本に到着する列車は石見川本で長時間停車し、ランチ時には三江線に乗っていた乗り鉄たちが川本の町で昼食をとっていたとされています。私は三江線に三次→江津、江津→三次ともに乗りとおしたことがありましたが、どちらも石見川本に昼に着く列車ではなく、石見川本で途中下車して川本の町を散策する機会には恵まれませんでした。もう叶わない夢ですが三江線を利用して、川本の町を歩いてみたかったです。


11時00分頃 湯抱温泉・中村旅館

三瓶山温泉郷スタンプラリー、湯抱温泉の紹介ページ

川本町を後にし、再び美郷町に戻ってきて次の温泉へ。次に向かう温泉は湯抱温泉です。今回のドライブで個人的に一番行きたかったのが、この湯抱温泉でした。湯抱温泉は今では、今回伺った中村旅館のみが営業中。そして、中村旅館で入浴するには、2024年2月24日現在では2名以上で昼食付日帰り入浴か宿泊(予約できるのは1日あたり1室のみ)しないと入浴ができないとかなり入浴ハードルが高めでした。

今回は温泉オタクの知り合いとタイミングを合わせて、2人で昼食付き日帰り入浴プランを予約することにより、ようやく行くことができました。予約は知り合いにとってもらいました。ずっと入ってみたかった温泉だったので、本当にありがたかったです。

温泉析出物が芸術的な湯抱温泉の湯船
水色のボタンを押すと旅館の人が源泉をドバドバと流してくれる

ようやく入浴できた湯抱温泉。加温された浴槽は柔らかなお湯。かけ流される源泉は舐めると冷たい塩味。千原温泉と比べると個性にかけますが、ここもやっぱりいい湯だなあと感じました。ようやく入浴できて感動的でした。


湯抱温泉中村旅館の昼食
天ぷらが揚げたてさくさくで美味
島根県でのランチタイムなのでお蕎麦もついてくる

湯上り後に昼食を用意してくれて、12時ごろに優雅にランチタイム。写真には写っていませんが、サツマイモの天ぷら特に美味しかったです。


湯抱温泉街の入り口
入浴した中村旅館
廃業した日の出旅館
石州瓦の素敵な建築の旅館。こちらでも入浴したかった。

もう中村旅館しか営業していない湯抱温泉街の風景はとても鄙びた感じの温泉街でした。せめて中村旅館さんだけでも長く営業を続けてくれて、この温泉地がなくならないことを願います。

13時00分頃 旧・粕淵駅周辺の散策

旧・粕淵駅。粕淵駅が駅名だったが、地名の粕渕表記になっている

次の温泉へ向かう前に、千原温泉と湯抱温泉のある美郷町の中心部・粕渕で町歩きをしました。こちらも川本町同様にJR三江線沿線の町でした。

粕淵駅ホームから先の廃線跡は舗装されていて歩行可能
廃線跡に転がる旧・邑智町のバリケード
粕淵駅旧ホームからトンネルまでが舗装されていた

旧・粕淵駅のホームからトンネルの区間までは舗装されていたので、とりあえず歩いてみました。もうこの線路に列車が来ることはないと実感し、少し寂しくなりましたね。


階段上から駅舎と石見交通バスと石州瓦の家を眺める
粕渕の町並み

美郷町の中心部・粕渕もなかなか“味”のある町並みでした。もう列車は来ることはありませんが、ドライブついでにかつての三江線沿線の町を歩くのは意外と楽しいなと感じましたね。


13時45分頃 三瓶温泉・さんべ荘

三瓶山温泉郷スタンプラリー、三瓶温泉の紹介ページ

美郷町を抜けて、大田市三瓶町志学にある三瓶温泉さんべ荘へ。極上ぬる湯の露天風呂がある温泉です。三瓶山の温泉ではここが行った回数が一番多く、三瓶山の温泉の中で一番気軽に行くことができる温泉だと思います。


プロ棋士による将棋の大会の会場にもなるさんべ荘
ぬる湯と加温浴槽との交互浴を推奨する張り紙がある
施設の外にドバドバと温泉が垂れ流されている

ここのお湯は鉄っぽさと炭酸を感じる34℃の露天風呂がとにかく最高です。この日は快晴で、青空の下でつかるぬる湯はとにかく最高でした。三連休の中日ということもあり、日帰り利用客が多くじっくりと交互浴はできませんでしたが、いつかここで宿泊してじっくりと推奨されている交互浴をやってみたいと思います。

14時45分頃 石見一宮・物部神社

三瓶山信仰につながる石見一宮、物部神社

三瓶温泉から大田市街へ車を走らせて石見一宮の物部神社へ。


物部神社の鳥居
物部神社の拝殿等

宿のある温泉津温泉に向かう前に、石見一宮の物部神社で参拝。出雲一宮である、かの有名な出雲大社に比べれば小ぶりですが、石見の中ではかなり大き目で立派な神社。昔この神社へ大田市駅から石見交通バスで向かったことがありました。物部神社へ向かう頃には乗客が自分一人になっていた思い出があります。


15時10分頃 大田市大森銀山重要伝統的建造物群保存地区

大森銀山の重伝建看板

物部神社を出る頃にはもう温泉津温泉に投宿してもいい時間になっていましたが、いい意味で予報を裏切ってくれた快晴が広がる中、重伝建巡りをせずに投宿したくないと思い、大森銀山地区の大森地区の部分だけ散策してみました。


木箱に包まれる自販機がある
中國新聞の看板等
“たばこ”がレトロな感じで良い

バタバタしつつも大森地区を散策。前回来たときは天気が悪かったので、快晴のタイミングで来ることができて良かったです。今回は湯めぐりメインのドライブなので、銀山地区には行きませんでしたが、いつは世界遺産石見銀山のメインエリアの銀山地区もきちんと巡ってみたいところ。


16時30分頃 温泉津温泉・なかのや旅館


温泉街と港町のある温泉津町

大森地区を後にして、いよいよ宿泊地のある温泉津温泉へ。温泉津温泉街へ入っていく入口近辺には温泉津港が広がっています。久しぶりに温泉津に来たら、温泉津港の近くにランチとディナーができる店ができていて少し驚きでした。


なかのや旅館玄関
なかのや旅館客室
なかのや旅館内湯
源泉は薬師湯のものを使用

温泉街から離れた駐車場に車を停めて、ようやく投宿。料理が自慢のお宿です。旅館の内湯は薬師湯のお湯が注がれています。


なかのや旅館の夕食
三瓶サーモンの刺身など


〆のだし茶漬け
デザートは大田市産の2種類の苺

18時30分頃、なかのや旅館の美味しい夕食をいただき優雅な時間を過ごしました。三瓶サーモンなど地域のグルメありで美味なものばかりです。

夜の温泉津温泉街を散策

夜の温泉津温泉街その1

夜の温泉津温泉街その2
夜の温泉津温泉街その3

なかのや旅館での食事を堪能した後は夜の温泉津温泉街を散策。個人的にはこれが温泉津温泉に投宿した際の醍醐味のひとつだと思っています。
温泉津は投宿前に立ち寄った大森銀山とともに石見地方の重要伝統的建造物群保存地区のひとつです。優れた景観の温泉街は数あれど、その中でも温泉津は珍しい重要伝統的建造物群保存地区に指定される温泉地なのです。

そんな優れた景観を持つ温泉津の町並みをライトアップされた瞬間に散策するのは非常に楽しいところがあります。散策ついでに夜遅くまでやっている薬師湯に浸かるのもいいかもしれません。私はこの日はさんざん湯めぐりをしてきましたので、夜は宿の内湯に浸かるだけにしましたけどね。


温泉津温泉で迎える朝

温泉津温泉元湯は朝6時から営業

温泉津温泉で迎える朝。朝の6時からやっている元湯の熱いパンチのあるお湯を浴びて気持ちいい朝を迎えることが個人的な温泉津宿泊時の醍醐味のひとつとなっています。

温泉津温泉元湯のお湯はぬる湯でも44℃ほどあり、熱い湯は46℃ほど。熱い湯には10秒入るのが限界です。しかし、朝に熱い湯にさっと入るのはとても気持ちいいので温泉津で朝風呂するときにはぜひ体験してほしいです。

なかのや旅館の朝食
しみじみと染み渡るしじみ汁


温泉宿の朝食の定番、温泉卵かけごはん

温泉津温泉元湯の熱湯を浴びたあとは宿に戻って、客室でテレビを見ながらはんなり。7時30分からはこちらも美味しい、なかのや旅館の朝食を堪能。

朝食を食べたあと、8時00分過ぎにチェックアウト。玉造温泉でのイベント会場を目指して出雲方面へ向かいました。これにて石見・湯めぐりノススメでのドライブルート等の紹介はおしまいです。

終わりに

今回紹介したドライブルート

今回は三瓶山温泉郷・温泉津温泉を巡るドライブルートを紹介しました。今回紹介したルートは個性あふれるパンチ溢れるお湯をひたすらめぐったものとなっており、もう少し活動範囲を広げてさっぱりとした温泉との湯めぐりを組み合わせた方がいいかもしれません。

三瓶山温泉郷はにごり湯の個性的なお湯が多いのですが、少し離れると石見地方西部では有福温泉美又温泉、出雲地方に入ると日本三大美人の湯のひとつである湯の川温泉と日本三大美肌の湯のひとつである斐乃上温泉など、つるつるとしたあっさり目の無色透明ないい湯があります。

三瓶山温泉郷を中心に島根県には意外とあまり知られていないようないい温泉が多くありますので、より多くの人に島根県の温泉を今回の記事を通して興味を持ってほしいと願います。東京からは遠いですが、湯めぐりドライブをするにはいいところです。
















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?