【朗読】吉川英治短編集『春の雁 / 玉堂琴士 / 夕顔の門 / 御鷹 / 夏虫行燈』  ナレーター七味春五郎 発行元丸竹書房

一、春の雁
■あらすじ
骨董の商いで、上方から江戸のとくいをまわる、旅商人の清吉。深川の芸者・秀八にいれこんで、大金を渡してしまう。

■登場人物
清吉……長崎からながれてきた旅の商人
秀八……人気芸者だったが、とあることがきっかけで、困窮している。
通船楼のおかみ
傳兵衞……大泥棒


◆用語集
御寮人……ゴリョウニン・貴人のむすこ・娘の敬称。更に広く、人の妻・子女の敬称。
花柳界……カリュウカイ・遊里。 花柳の巷
枯淡……コタン・人柄・作品などで、俗っぽさや欲気がなく、あっさりとしている中に深い味わいを感じさせること。
享楽……キョウラク・快楽にふけって、十分に楽しむこと。


二、玉堂琴士
文人画家 浦上玉堂1745-1820を、吉川英治が描きます。
玉堂が、脱藩をしたのは、50才のとき、二人の子供(春琴(紀一郎)と秋琴(紀次郎))をつれていたそうで、春琴さんが、のち岡山にいくどかもどり、孫が浦上家を再興しております。岡山を脱藩したのは、問題を起こしたからではなく、文人活動のためのようです。岡山は武士の出奔に寛容で、一族が罰されることもなかったそうです。

二男の秋琴さんは、玉堂と訪れた会津でそのまま藩士となり、本書の主人公紀一郎一家とは、67歳から身を寄せ、関西きっての人気絵師として活躍。親子の仲は良かったそうです。

国宝、重要文化財の画をのこし、玉堂製の七絃琴もいくつか残っております。有々閑たる晩年をすごし、76才没。長男の春琴さんとともに、本能寺にいまも眠っておられます。


■登場人物紹介
浦上紀一郎……主人公。紀貫之の子孫。
兵右衛門……父。岡山の支藩、鴨方藩の臣。浦上玉堂
赤穂屋喜左衛門……旅籠屋の主人
司馬江漢……江戸の画家
紀二郎……弟
水野七郎右衛門……叔父。本藩の臣
おゆき……姉
唐橋佐内……目付役
成田鉄之進

◆用語集
嬰兒……やや、あかご、えじ
私淑……シシュク・尊敬する人に直接には教えが受けられないが、その人を模範として慕い、学ぶこと。
友誼……ユウギ・親友のよしみ。友情。
明琴……ミンキン
舶載……ハクサイ・外国から船で運んで来ること。運んで来た物。舶来。


三、夕顔の門
1938年昭和十三年六月 婦人倶楽部臨時増刊掲載作品。
 将来を約束しあったお市と格之進。二人の仲は、親たちに引き裂かれ、お市は望まぬ結婚を強いられてしまうが、数年後、格之進は瀕死の重傷でお市の前にあらわれ……文豪吉川英治の名作短編。


■登場人物紹介
お市……田丸家の娘、曾我家へ嫁ぐ前日になって、格之進と駆け落ちする。
曽我部兵庫……お市の夫。藩の鷹匠
吉松……曽我部家の仲間
田丸惣七……お市の父。小笠原家八万石につかえる。
深見格之進……小笠原家の若者で、お市と駆け落ちをする。
楠平……若党。お嬢様を連れ戻そうとして、格之進に斬られて、重傷を負う
尾形周蔵……楠平の義兄
太左衛門……楠平の叔父
中根倉八……楠平の従兄弟
沢井又兵衛……楠平の友人


◆用語集
一抹……イチマツ・ほんの少しのこと。 わずかばかり。
筆架……ヒッカ・筆をもたせかけておく台。
曲者……しれもの
さなきだに……そうでなくてさえ
然諾……ゼンダク・引き受けること。承諾
片口……カタクチ・口縁の一部に注ぎ口のついたうつわ
金創薬……キンソウ・刃物傷につける薬。
九つ……十二時
忍苦……ニンク・苦しみを耐えしのぶこと。 苦痛に耐えること。
一諾……イチダク・人から頼まれ、承知して引き受けること。


四、御鷹
■あらすじ
 お悦に懸想する弁馬は、父親や親戚筋から、家を追われかけていた。お悦には、角三郎という婚約者がいたためである。お悦に固執する弁馬は二人の仲を裂こうと画策する。
 昭和11年発表の短編小説です。

■登場人物
黄瀬川弁馬……将軍家の御鷹飼のあとつぎ
お悦……角三郎の婚約者
小柴角三郎……御鳥見組。御鷹飼の天才。
新五左衛門……弁馬の父親
阿部白翁……中里御鳥見組頭。お悦の父親。


◆用語集
懸想……ケソウ・異性に思いをかけること。
愍然……ビンゼン・哀れむべきさま。かわいそうなさま。
媚態……ビタイ・こびる様子。なまめかしい様子。人に取り入ろうとする態度。

五、夏虫行燈
■あらすじ
一途な恋心と、ストーカーの狭間を文豪が描きます。

■登場人物
高安平四郎……甲府城の番衆。軽輩の士。小夜に惚れている。
お小夜……萩井の娘
海野甚三郎……長崎遊学から戻り、小夜と婚約する。
雑賀丹治……平四郎の同僚
岩瀬志摩……御倉奉行
頼母木与四郎兵衛……奥役
宮崎市之丞……御勤番加役の伜
菅馬之助……江戸の浪人
服部太蔵……菅の相棒

◆用語集
五刻……イツツ・八時
垂涎……スイゼン・非常に強くその物をほしがること。
挙止……キョシ・たちいふるまい。動作。
怨嘆……エイタン
九つ刻……午前零時
茅屋……ボウオク・かやぶきの屋根の家。あばらや。
凡痴……ボンチ・凡庸、凡愚の恥知らず
侫物……ネイブツ・侫人、奸物。ずるがしこい人

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