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文章を最後まで読ませるカギは「つかみ」にあった!すべての“書き手”の指南書『文章は「つかみ」で9割決まる』

(敬称は省略させていただきます)

あなたは、最近読んだ記事の中で、最後まで読み切った文章はあるだろうか。

記事を最後まで読んでもらえるかどうかは、文章の冒頭にある「つかみ」、いわゆるリード文で決まるという。記事を書くライターに限らず、SNSやメルマガ、広報誌、就活のESなどすべての文章において、読者が読み進めるかどうかは書き出し次第だ。

「書き出しが重要なんて当たり前でしょ? そんなのとっくに知っているよ」と思ってはいるものの、どんな意図で書き出したのか言語化できない。気づけば、どこかで見たことのあるようなつまらない書き出しになっている..…。

そんな風に、「何がいい書き出しなのかが分からない」と悩む人も多いのではないだろうか。

何を隠そう、私もその一人だ。

そこで私が最近手にとった書籍『文章は「つかみ」で9割決まる』では、なぜ「良いつかみ」が書けないのか、どんな「つかみ」で読者は最後まで読み進めるのかが、すべて言語化されていた。

名作には必ず「良いつかみ」がある

著者の杉山直隆は25年以上、書籍やWebメディアなどで文章を書いてきた超ベテランライターだ。杉山自身が試行錯誤を繰り返し、数えきれないほどの文章を分析して見えた「良いつかみ」が惜しみなく書かれている。

さて、「良いつかみ」とはなんなのか。

書籍の中では具体例として、時代もジャンルをも超えた名作の「良いつかみ」が紹介されている。
川端康成の『雪国』や太宰治の『走れメロス』の文豪らの小説から、片づけコンサルタントの近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』、エッセイスト岸田奈美のnote『弟が大金を稼いだので、何に使うかと思ったら』など最近のものまで、約100本もの書き出しについて解説されているのだ。

紹介された名作のつかみを改めて読んでみると、確かにそれぞれに続きが読みたくなる仕掛けがあったのだ。
名作と呼ばれる作品には、それぞれ「良いつかみ」が存在していて、もちろんつかみとのギャップが無い内容になっている。本書で改めて見なければ、気づくことすらできなかっただろう。


私はなぜ、その文章を読んだのか

では、「良いつかみ」ではない文章はどうなってしまうのだろうか。

本書では「いくら書いたコンテンツの中身がよくても、読んでもらえなければ、存在しないのと同じ」と思わず耳を塞ぎたくなるようなことが書いてある。

せっかく何時間も頭をひねって書いた渾身の文章が、たった数行で存在しないものになってしまうなんて......! しかし事実、自身を振り返ってみても「つかまれ」て読み終えた文章は、最近でいうと1つくらいしか思い出せない。

それは、ロックバンドGEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーがInstagramの投稿で「WISH」という曲に込められた想いを綴った、ライナーノーツ的な文章だ。

「クリスマスが今年もやってくる〜。」
街にはそんな軽快なメロディが溢れ、例年と同じく神宮前の通りにはイルミネーションが煌々と木々を埋め尽くし、恋人たちは束の間手を離しi phone を向ける。
両手にはチキンとケーキを買い家族がいる食卓へと急足で帰るサラリーマン、パーティーをめがけ跳ねる若者のグループ、いつものコンビニで缶ビールを買い一人でテレビをつける人、サンタクロースの訪問を待ち望み眠れない子ども。
日本という国であらゆる人が当たり前にやってきたクリスマスと向き合ったり、またかわしたりしながら生きている。

引用元:GEZAN マヒトゥ・ザ・ピーポーのInstagramより

いつも通りのクリスマスが今年もやってきたという描写からはじまり、この後にはパレスチナで起きている悲惨な現状が綴られている。いつもと変わらぬ日常が続く日本と、「死」が隣り合わせのガザ地区。その対比から、ガザ地区への祈りや私たちへの問いかけが込められた文章で締め括られる。私は、間違いなくこの「つかみ」から一気に最後まで読み進めた。

彼はミュージシャンだが、書籍の執筆もしている。だからだろうか、2,000字ほどの文章の中にまるで一冊のエッセイを読み終えたかのような、彼の生き様の深さが見えた気がした。

もちろん、単純に今の私がこの問題について意識が向いていたことが、すべての文章を一気に読み終えられた要因であるかもしれない。しかし、果たしてそれだけだったのだろうか。

そこにはどんな「良いつかみ」があったのか、本書を使ってみていこう。

本書を使って、つかみを紐解く

まず冒頭に、日本では定番のクリスマスソングの歌詞が書かれている。本書でいうところの「セリフからはじめる」手法に近い。きっとこの一文がなくても、日本ではいつも通りのクリスマスがやってきたことは伝わる。しかし、誰もが知っている歌詞を最初に持ってくることで、頭には自然とメロディが流れ、読み手それぞれのクリスマスのイメージが湧いてくる。

本書では「セリフからはじめる」例のひとつとして、以下の日本経済新聞の記事を紹介している。

「ふざけんな味の素」。
SNS(交流サイト)で味の素を避難する書き込みが広がった。ソニーグループの最新ゲーム機「プレイステーション5」の一向に解消しない品薄問題の背景に、味の素がうま味調味料の副産物を使って開発した絶縁材料「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」の不足が影響しているとの見方からだ。

引用元:『日本経済新聞』「味の素、半導体の『隠し味』で成長 データ拠点で需要増より

マヒトゥ・ザ・ピーポーと同じく、二行目から始まってもなんら違和感はない。しかし、冒頭でインパクトのあるセリフをつかみに持ってくることで読者の興味を惹き、読み進めてもらえる。
ほかにも、

  • オノマトペを使う

  • サスペンス風にしてみる

  • イベント仕立てにする

など14のテクニックとそれぞれの具体例を3〜5個ずつ取り上げ、解説されている。

つかみの「手法」のほかに、文章のつかみには「3つの期待」があるという。

  1. 問題を解決したい

  2. 知的好奇心を満たしたい

  3. 心の栄養を得たい

マヒトゥ・ザ・ピーポーの文章は、「2. 知的好奇心を満たしたい」に当てはまると考える。ずっと疑問に思っていたことや怖くて近づけないけどのぞき見したいこと、もっと知りたいと思えるつかみはこれに該当するという。読み終えたあとに「感動」「悲しみ」「共感」などがあったことで、「3. 心の栄養を得たい 」にも当てはまるかもしれない。
3つの期待についてももちろん具体例をふんだんに使って解説している。


難しい書き出しも楽しんで考えられるように

そろそろ、「手法や目的はわかった、でもどうやって書くのよ」と思う人もいるでしょう。安心してください。こちらの思考を先回りして、「つかみ」を書くための方法が5ステップで記されています。
本書を使えば、「つかみ」を引き出す構成から、最後まで読ませるための文章が書ける。(とはいいつつ、この文章もここまで読んでくれた人がいますように......!)

もしも、せっかく書いた文章をなかなか読んでもらえないと悩んでいる人がいたら、ぜひこの本を手元に置いてみてほしい。「どんな風に書けば読者に響くのだろう」「こんな書き方をしてみようか」「言葉を入れ替えてみようか」など、ワクワクしながらページを開くことになるはずだ。


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