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【利益が出た!】それでもやってはいけない節税


はじめに

こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

事業が順調に伸びてきたら思い浮かぶのは節税。

利益が出るのは喜ばしいことなのですが、税金はなるべく払いたくないというのは世の常です。

今回この記事で注意喚起したいのは、利益が出そうだからといって焦って節税に走る危うさです。

というのも、節税を意図して何かしらの策を講じたけれども、期待した節税効果が得られないリスクがあるからです。

ここからは、じゃあ具体的にどういう節税策に気をつければいいのか、という点をお伝えしていきます。

その①:とりあえずお金を使って節税

▼とりあえず物を買う

利益が出そうだからとりあえず物を買おう、と衝動買いに走る方もいらっしゃるかと思います。

問題は、それが経費なればいいのですが、買ったときに経費にならない可能性に注意しなければいけません。

というのも、会計には資産の購入金額を購入したタイミングでいっきに経費にするのではなく、使用期間にならして経費計上していくというルールがあるからです。

これを会計用語で減価償却といいます。

たとえば、500万円の車を買ったら、その買ったタイミングで500万円全額が経費になるのではなく、毎年100万円ずつ経費になるイメージです。

(あくまでイメージです。厳密な減価償却費の計算は個々に検討する必要があります。)


ですので、仮に1年目で500万円を経費にしようとしても、全額ではなくその一部しか節税効果を発揮しないということになります。

ただし、購入金額が30万円未満のものなど、少額な資産は購入のタイミングでいっきに経費にできるという特例はあります。

これは個人事業主や一定の中小企業等が対象で、青色申告をしていることが要件となっています。

この要件を満たすためには青色申告承認申請書を事前に提出している必要があります。

ちなみに、車を経費にする場合は、そもそも事業のために使っている客観的な事実がなければいけません。

プライベートでしか使っていないのに経費することは、経費の否認などのリスクに繋がりますので注意していただければと思います。

▼とりあえずサービス契約をする

じゃあ、資産がすぐに経費化できないなら、無形のサービスを買ったらいいのはないか、という思考が働くかもしれません。

たとえば、3月決算の会社が、3月に多額の利益が出そうだということで、期末ぎりぎりに人材採用コンサルティング契約だったらどうでしょう。

契約期間は3月から翌2月の1年間、契約金額は500万円とします。

結論をいうと、この場合、税務上は原則3月の1か月分である500万円÷12=416,666円しか経費になりません。

なぜかというと、税務上はサービスの提供が完了している期間分の費用しか経費として認められないからです。

つまり、残りの4,583,334円は節税しようと思った事業年度ではなく、その翌期の経費になります。

お金が出ていくタイミングと経費になるタイミングが別々なのでこういった現象が起こります

なお、いま説明したような支払が先で経費になるタイミングがあとの費用は会計用語で前払費用といいます。

その②:わざと業績を悪くする

いっぽうで経費を調整するのではなく、売上を調整しようとする方もいます。

これも結果的にトクをしないので注意していただければと。

これを理解するにあたって、まず税金の計算過程を復習しておくと、所得税(事業所得や不動産所得や雑所得等)も法人税も、おおまかにこのような流れになっています。

▶売上ー経費=利益
▶利益×税率=税額

です。

なので、売上を減らすと税額は減ります。

でも、これでいいのかを、考えるのが非常に重要です。

たとえば100万円の売上を減らしたとしましょう。

この場合、税率が30%だとすると、100万円×30%=30万円の税額が減ります。

でも、もともと100万円の売上を手放しているので、残りの70万円分のお金は失っている、ということになります。

つまり、100万円の売上を手放しても、減る税金はそのうち税率分だけです。

売上の減少額以上に税金が減少するなんてことは、計算の構造上ありえないわけです。

何度かお伝えしていますが、節税は目的ではなく単なる手段であって、本当の目的はなるべく手元に残るお金を増やすこと、ですよね。

節税のために売上を意図的に減らす行為は、節税が手段ではなく目的になり、本当の目的を見失ってしまっています

その③:役員報酬を払う

これは法人に限った話ですが、利益が出そうだから役員報酬を臨時的に支給しよう、というのは慎重になるべきです。

なぜなら原則、そういった臨時的な支給は経費にならないからです。

ただし、経費として認めてもらえる特例的な規定もあります。

これを事前確定届出給与といいます。

事前確定届出給与は、役員に臨時的にボーナスを支給する金額と日付を株主総会等で決議して、その後一定期間内に税務署に届出すると、経費になるというものです。

注意点はその届出どおりの金額と日付で支給しなければいけない、ということです。

また、臨時的に一括で支給するのではなく、期の途中から毎月の役員報酬の金額を増額した場合も、その増額分は経費になりません

同じ事業年度内は原則毎月同じ月額報酬なら経費として認められますが、上乗せされた金額があるとその金額は経費にならないので注意が必要です。

そのため、なるべく早く事業年度を跨ぐために、決算期変更をすることもひとつ手段として考えらえます。

まとめ:結果、資金繰り難に陥らないために

ここまでで、3つのやってはいけない節税をお話してきましたが、その本当のデメリットは節税できないことではなく、お金を失ってしまうことです。

たとえば、1,000万円の利益を消すために1,000万円の支払いをしたけど、まったく当期の経費にならない場合は、納税が発生するうえに手元にお金は残らないことになります

そうすると、お金を残すために節税したのに結果的に納税資金に困る、ということが起こってしまいます。

そんな本末転倒な結果にならないように、支払が経費になるタイミングや、その支払の中身を確認していただければと思います。

そして、支払いを実行した後だと手遅れになる可能性が高いので、よく事前に調べたり、税理士に相談したりしたうえで節税策を実行をしましょう。

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