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市役所から国に派遣される皆さんに、知っておいてほしいこと


新しい内閣が始動し、デジタル庁の準備室が開設されて各省庁や民間から人がかき集められたり、行革担当の某大臣はTwitterで自治体からの派遣職員を求めてそれに応じる首長が現れたり。
私の友人でも、地元から国の機関に派遣となったという報告をSNSで見かけました。

春ほど大規模ではありませんが、この10月も人の動きはあるようです。


そんなタイミングで、これまた偶然ですが、昨日、職場で私が内閣官房/内閣府に派遣されることになったときのことをお話ししました。
どんな流れだったかよく憶えていませんが、残業を終えて帰ろうとしていたときのことでした。忘れかけていた記憶を呼び起こしながら、懐かしさとともに、ところどころ思い出せないことがあることに一抹の寂しさも覚えながら。

もうあれから5年経つんですね。


ちょうどいいので昨夜の話をきっかけに思い出したことなどを、特に国に派遣される皆さんに知っておいてほしいことを中心にお伝えします。


いつもの記事と同様、基本的に私が経験して感じたことをベースにした『サンプル数 N=1』のお話ですが、所属する組織の外に出て新しい環境に飛び込む皆さんにお贈りします。



1.限られた人だけができる経験です

まずは地元の役所から国へと派遣される皆さん、
おめでとうございます!

国などに派遣される人(あなた)は、組織から「あなたにこの経験をしてもらいたい」と選ばれた人です。様々な条件があったかもしれません。他に希望する人がいたかもしれません。
でも、「あなた」に経験してもらうことが望ましいと組織は判断しました。

それは誇っていいことです。

あなたのことを羨望や嫉妬のまなざしで見ている職員が必ずどこかにいます。でも、今回はあなたなのです。
外の組織に派遣される経験は、自分が「したい!」と思ってできることではありません。

その経験ができるという幸運を真正面から受け止めてください。


2.周りには優秀な人たちがいます

派遣された先の国の職員もそうですし、あなたと同じように自治体や民間企業から派遣されている人たちもそうですが、デキる人が多いことに驚くかもしれません。

それは捉え方によってはプレッシャーですが、見方を変えればあなたのミスをカバーしてくれたり、あなたに出来ないことがあっても組織として致命傷になることはないということです。

地元ではあなたが職場全体を引っ張っていたかもしれません。あなたが手を止めると事業が止まる、それをプレッシャーに感じることもあったかもしれません。

でも、派遣先では「自分がやらなくちゃダメなんだ!」と全てを背負い込む必要はありません。極端なことを言えば、あなたが仕事をしなくたって、この国は回ります


3.出来ないことは出来ないと言いましょう

上司にも恐らく優秀な国の官僚さんがいます。
彼らの多くは、それが頼む相手に出来るタスクか理解して出向者や研修員などに仕事を頼んできます。できもしないことを頼むような時間の無駄を嫌います。
だから、「絶対打てない球」は飛んできません。(たまに「高めの球」も飛んできますが……)

それでも、自分には出来ないと思ったら迷惑をかけないためにも素直に「できません」「やり方が分かりません」と言いましょう
一瞬軽蔑されるかもしれませんが、次からは飛んでくる球がキチンと補正されるはずです。
そして、周りにゼロからやり方を教わりましょう。依頼主は教えてくれなくても、周りには同じ依頼を受けて同じような作業を経験した人がいます。

国に派遣された地方公務員は、専門家として招かれるのでなければ、ほぼ総てのケースで下っ端としてチームに合流します。
年齢も関係ありません。その状況を利用しましょう。30代でも40代でも堂々と小僧のふりをして、指導を受けて成長の機会として利用しましょう。
身に付けたものは、地元に持ち帰れるのですから、あなたの成長はそのまま地元の利益になります。


4.派遣中は本番ではありません

賛否両論あるかもしれませんが、私は、派遣中は本番ではないと考えています。

誤解してほしくないのは、派遣中は手を抜いていいとか、国の仕事を優先しなくていいとか、そういう意味ではないということ。自分にできる範囲で、全力を尽くすことは、もちろん大切。

そのうえで知っておいていただきたいのは、派遣の目的が自らの能力を高め人脈を築くことだということ。

確かに、国の事業に携わることで利益を誘導したり、そこでこそ得られる情報を提供することも地元への貢献かもしれません。
派遣先のミッションを達成するために深夜まで働いて、仮眠のためにタクシーで帰宅するような日々が続くかもしれません。

でも、あまりに消耗しすぎて、知見も得られず人付き合いもままならなかったら本末転倒です。

本当に成果を出すべきは、地元に帰ってから。
得た能力と人脈で地元に貢献しましょう。


5.健康なままで帰りましょう

国に派遣される地方公務員の中には、病気になってしまったり、燃え尽きてしまったりして、残念ながら任期途中で地元に帰る人もいます。

その結果、地元でも元気に働くことができなくなってしまったら、何のために派遣してもらったのか分かりません。

最も大切なことは健康なままで任期を終えることです。

そのためにどうしても必要であれば、派遣先の仕事は犠牲になっても止む無しと考えてください。

私が内閣府/内閣官房に派遣されていたときは、定期的に「東京事務所に行ってきま~す」と抜け出して、東京事務所で地元の情報をもらったり庁内のトピックスに触れたりしていました。東京事務所の職員の方たちも温かく接してくれて「いつでも来なさい」と言ってくれたので、それだけで心の体力を回復できました

自分自身に合った方法を見つけてリフレッシュすることは、地元で働いているとき以上に大切にしてください。


最後に

いかがでしょうか。

経験者が読むと「え~!?」と思う内容かもしれません。
少し守備重視な考え方かもしれません。

もう少し攻撃面の「何をどうやって手に入れるか」という点もお伝えしたい気持ちもあります。

でも、最初は環境に慣れるだけでも大変なはず。

まずは嵐の海を嵐と思わず自然に航行できるようになることです。
自然体で過ごせるようになれば、そこから経験も能力も人脈も、いくらでも手に入れることはできます。

ぜひ任期終了後に健康で地元に帰って貢献できるように、まずは足元を整えてください。特に、心の面で。


地元で皆さんの帰りをたくさんの職員と市民が待っていますよ。


頑張ってください!
応援してます!



おまけ

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写真は私が内閣府/内閣官房で勤めていたときのデスク周り。
書類が本当に多くてウンザリしましたが、市役所とは異なり、両袖机だったこと、専用の電話機があったことは便利でした。

地元さいたまを思い出せるように、市のキャラクター「ヌゥ」の木目込み人形を飾っていました。(前任者から引き継ぎました)


この記事は2015年3月に書いた下の記事(アメブロ)をベースに、今の私の考えや社会情勢などを踏まえてリライトしたものです。


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