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「金」

「値段を上げてお客が来ないように周辺相場の2倍にしたんだ」

そう80歳の爺さんは言った。しかしこの値上げの直後コロナ騒ぎが起き、全国の飲食店はその犠牲となってしまう。

約3年が経過しコロナ騒ぎ収まり、じゃあこのお店は実際はどうなったかといえば「値上げのおかげで生き残った」のだそう。

加えて飲食店から嫌われがちな「食べログ」のおかげで店を見つけてもらい全国からお客さんが来て、これにも救われたのだという。

時には海外からも来てもらえたから店内がキャリーバッグで一杯になることもあったそうだ。空港からのアクセスの良さも要因にあるのだと齢80にして分析力も凄いと思った。

同業態のお店は区域内に120店舗あったがコロナ後は20店舗になってしまったらしい。みんな辞めてしまったのだそうだ。この業態はお年寄りが多いから気力がなくなってしまったというのもあるかもしれない。

創業50年近いが、残るお店は残る様に経営している事が良くわかるエピソードだと思った。

「セブンイレブンに潰された」

近隣店舗の閉店に関してそうとも語った。その言葉には怒りは全くなく爺さんは話す。自然に吹く風の様に思っているのだろう。実際に「美味いからよく食べた」とも言った。

妬み嫉妬怒りみたいな感情は皆無の様で「どこ吹く風」なんだな。美味いもんは美味い。心の透明度が圧倒的に高い。

じゃあなぜ「よく食べた」と過去形なのかといえば、味が落ちてしまったからだそう。天丼やカツ丼は本当に美味かったが値段が上がってから美味しくなくなったのだという。胡麻油など素材のクオリティーを落としたのが原因だろうと話した。それを聞いてビジネスライクに寄った大企業的な経営手法だなとすぐわかった。

コレは一つのノウハウで、急激に店舗数を伸ばすスーパーだと開店当初「コスパ」が圧倒的に良かったりする。「シンプルに安くて美味い」生鮮食品を置いている。この「分かりやすさ」に顧客は殺到する。また惣菜は「安くてデカイ」という一目で分かる「分かりやすさ」がある。そしてこれら年々値段は同じでサイズを小さくする。ほとんど分からないくらいゆっくりと進む。要は見込み客を集め定着させ、固定客にして回収するフェーズに移るというノウハウ。

別に悪い事とも思わないがテクニック上手い事使ってるなぁという印象。そもそも古典的な手法でもある。しかし気が付く人は気が付くっていう話。

同業態でも同じように値段上げて味を落とした店があったが大体ダメになって潰れていくと店主。素材落としても工夫で味を落とさない様にしないといけない。

因みにこのお店。ある商品の仕込みに大体の店が1時間くらいで仕上げるところ1週間かけて仕込むのだそう。だからどこにもない深い味わいに仕上がっている。

「お客に○ろされちゃうよ」

近くにあった超行列の大人気店が閉店した。その理由は店主の病死であったという。後継を育てていたわけでもないのでそのまま閉店の流れになった。

「家に帰らずずっとお店にいたよ。だから心臓悪くしちゃった。」

過ぎたるは猶及ばざるが如し

「お客に○ろされちゃうよ」と爺さんそう言った。

日本の多くの飲食店は値段以上のクオリティで提供している。(それ以外選択肢がない場所に出店してる店のクオリティは酷いって事も結構あるが)

「食べさせていただいている」そういう思いがあるお客は「ごちそうさま」と言うが、それが頭に無い人は何も言わない。ほんの少しでも想像力使えばコスパ悪いとかいう言葉も簡単には吐けない。

色んな批評が半ば勝手に目に入る現代。

お店に求める事があるのなら、お客としてもその基準を満たさないといけない。そういう事がある料理人の本に書いてあった。

正に。










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