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「読まれる本を作りたい!」歯科医師のための初級講座

こんにちは。日本歯科新聞社です!

25年以上、歯科書籍を出版してきた経験をもとに、「読まれる本づくり」を実現するための、大切なポイントを公開します。

読まれる本づくりの最も大事なポイント

まず、「自分の作りたい本のイメージを明らかにする」ということが第一歩になるのですが、
その前に伝えておきたい大事なことは、人は、活字を読むのが面倒…ということです。

「本さえ出せば、自分の熱い思い・治療テクニックを広く知ってもらえるだろう!」と考えている方、甘いです!!
羊羹10本、一気食いくらい甘いですっ!!!

人は活字を読むのが面倒なのに、それでも「読みたい!」」と思ってもらえる本を作りたい!という覚悟が必要です。

ここでは、全くの初心者でもわかる流れで、本の内容をイメージ化する方法をお伝えします。

本の内容をイメージ化する9つの流れ

この講座では、あなたに9つの質問に答えていただきます。その質問と答えを周囲に見せれば、

  • どんな本を作りたいのか

  • どれくらい価値がありそうか

  • どこの出版社に向いているか

などのイメージが明確になり、周りからのアドバイスが受けやすくなります。
書き始める順番はランダムでOKです。項目ごとの注意ポイントも参考にしながら、手元に置き、思いついたときに埋めてみてください。

どのような本を作りたいか、その本にどの程度のニーズがあるかなどが、次第に見えてくるはずです。

1. 想定読者は?

あなたの本の読者は、どのような方でしょう。できるだけ具体的なイメージを書いてみてください。もちろん複数でもかまいません。

例えば…

  • 開業前の歯科医師

  • 技工所経営者

  • 経営に行き詰っている経営者

  • 医院の患者さん

  • 矯正治療を検討している患者さん

  • 家族や親戚

「歯科医師すべて…」などでもよいのですが、特にニーズがあると思われるターゲットも書き添えておきましょう。

2. 販売・配布などのイメージは?

あなたの本は、
「配る本」ですか? 「売る本」ですか?
お金もからんでくるので、ここは身を引き締めて考えましょう。

売る場合、「歯科向け」ですか? 「一般向け」ですか?

どちらかによって宣伝先も販売ルートも異なるため、相談すべき出版社が異なりますので、ここは明確にイメージしましょう。

例えば…
 A. 配る(医院で/勉強会で/イベントで など)
 B. 歯科医療者向けに売る
 C. 一般向けに売る(書店など)
 D. その他(        )

大まかに、AからCまでの順に、難易度が高くなっていきます。

A. 配る
著者がお金を負担するのが明らかで、宣伝費も販売ルートの確保もいらないので、幅広い制作会社にお願いすることができます。出入りの印刷屋さんが頼りになることも。

B. 歯科向けに売る場合
歯科医療従事者などが対象になる場合、出版社を探す際には、以下のサイトが参考になります。

日本歯学図書出版協会

出版にかかわる費用(制作費、宣伝費など)を誰が負担するのかは、ケースによってマチマチ。
以下のようなものが一般的でしょうか。

 ① 出版社が費用を負担し、売れたら著者に印税(7~10%)を払う
 ② 出版社が費用を負担し、謝礼代わりにまとまった冊数を著者に渡す
 ③ 出版社が費用を負担し、著者がまとまった冊数を買い取る
 ④ 著者が費用を負担し、出版社がまとまった冊数を買い取って販売する
 ⑤ その他

本が売れそうであれば①②のケースもありますが、実際には③のケースが少なくないようです。費用については、制作に入る前に、必ず出版社に条件を確認しましょう。

C. 一般向けに売る場合
一般向けに販売する場合、当然、莫大な宣伝費がかかり、書店に並べてもらうだけでも大変な手間と冊数が必要なので、出版にこぎつけるのは容易ではありません。

「門前払いは当然」との覚悟が必要です。まして、印税がもらえるなどというのは本当に稀なケースです。

「著者が費用を負担して、出版社に販売してもらう」という場合、その出版社が書店に本を並べる力があるかどうかが大事な確認ポイントです。

患者さん向けに情報発信したいということであれば、本を作るより、ホームページをうまく活用するほうが早道なこともありますよ。

WEBで情報を発信してフォロワーを増やすと、それが実績になります。フォロワー数が多くなったところで、出版社から声がかかるというケースも増えています。

3. 著者の特長・強みは?

あなたの特長や強みをあらわすキーワードを、できるだけたくさん書いてみてください。

例えば…
【歯科向け】
 ◎ 開業歴30年
 ◎ 分院を10持つ開業医
 ◎ 総義歯を2000個作った歯科医師
 ◎ ボクシング好き
 ◎ 倒産を2度経験した開業医

【一般向け】
 ◎ ○○学会指導医
 ◎ ○○大学教授
 ◎ 歯を守ることを第一に考える
 ◎ 身体全体の健康を考える
 ◎ 短期間で治せる

【家族向け】
 ◎ 19○○年生まれの(※後々の子孫が読むことを見越して)
 ◎ 30年間、つりに人生をささげた

これらの要素は、売る本であれば、「本のタイトルやデザインを考えるとき」「宣伝文句を考えるとき」に役立ちます。
また、配る本でも、手に取ってもらいやすい本づくりの工夫として、表紙に入れる文字を考える際に役立つことがあります。

4. テーマは?

書籍を通して、何を読者に伝えたいかをなるべく短くまとめてみてください。

例えば…
【歯科向け】
 ◎ 誤嚥性肺炎を予防できる口腔ケア法
 ◎ 患者さんに信頼される立ち居振る舞い
 ◎ 初心者でもわかる摂食嚥下の知識

【一般向け】
 ◎ 歯周病を防げるブラッシング法
 ◎ むし歯にならない食習慣

【家族向け】
 ◎ 自分の人生のトピック(還暦を区切りに…など) 
 ◎ 孫や子どもの成長記録

「読み手」に意識をフォーカスすることは、手に取って読んでもらうための大事なポイントです。

5. 内容の裏づけは?

本に書きたい内容は、主に何を裏づけとしたものかを書いてみましょう。

例えば…

【歯科向け】
 ◎ 1000人の入れ歯を作った長期症例を基に
 ◎ ○○理論を診療現場に合うようにアレンジした
 ◎ 歯科専門のコンサルタントを○年間務めた経験から
 ◎ ふと日常で感じたことを

【一般向け】
 
◎ 20年以上、入れ歯をつくり続けてきてわかったこと
 ◎ 患者さん300人を治療した経験から

【家族向け】
 ◎ 今までの過去を、日記を元に振り返って
 ◎ 今まで取りためた写真を基に

特に売る本の場合、読者への説得力として問われる部分です。
出版社も注目しますから、力を注いで考えてみましょう。

6. 読者にとって、この本を読む利点は?

本を作るときに最も大事なのは、「読みたいな」と思ってもらえることです。特に売る本であれば、読者がお金の対価として、何を得られるかは大事です。

配る本であっても、「読むのが面倒だな…」と思わせたら押し付けとなってしまうので、「読んでみたいな…」と思われるようなメリットを考えましょう。

例えば…

【歯科向け】
この本を読むことで、経営が上向く
・スタッフを集めやすい医院になる
・患者さんが長く通ってくれる仕組みがつくれる
・高齢者の総義歯治療のコツがわかる

【一般向け】
・子どものむし歯を防ぐ方法がわかる
・本当に効果のあるケア法がわかる
・高齢者の食事のサポートがラクになる

【家族向け】
・家族のルーツを知ることができる
・故人の思い出を共有できる

書こうと思っている内容の価値を見直す大切なステップです。

7. どんな形式で?

「どんな形式が書きやすいかな…」「どんな形式が読みやすいかな…」と、さまざまな本を手にとって、自分に合った形を探してみましょう。

「あ、これは読みやすい!」と感じた形式は、不思議とその人が書きやすい形式でもあるのです。

例えば…

■ Q&A形式

『事例に学ぶ・歯科法律トラブルの傾向と対策』(日本歯科新聞社)

お悩みに応える形は、読者の心に届きやすいメリットがあります。一般書籍に参考になるものがたくさんありそうです。

■ エッセイ形式

『歯が愛しくなる歯の話』(日本歯科新聞社)

「本」と聞くと、多くの人がイメージするのがエッセイ形式かもしれません。明確な答えがあるのではなく、読者の心に問いかけるような内容には特に向くと感じます。

ストーリー形式

『倒れる歯科医院』(日本歯科新聞社)

読者にも、ハラハラドキドキを追体験して学んでもらえる形です。読者の共感を得やすい利点があります。

写真を中心に手技を紹介

『チームワーク総義歯臨床』(日本歯科新聞社)

臨床で多い形式です。お料理の本なども参考になるかもしれません。動画との組み合わせもお勧めです。

■ ○×形式で、失敗事例と対比

『医療スタッフのための美しいしぐさと言葉』(日本歯科新聞社)

失敗事例も交えると、読者の学びが深くなります。

■ 事例(写真)中心

医院デザインなど、「読む」のではなく、「見て」感じてもらいたい場合に向いています。

■ カレンダーなど

日めくりカレンダーなども楽しいですね。ただし、コストは高くなります。

第1章はQ&A、第2章はエッセイ、第3章は座談会など、組み合わせも自由です。

形式が決まると、原稿を書きやすくなりますよ。

8. タイトルは?

今までお書きいただいた文字の中から、より価値があると思われるキーワードに下線を引いてみましょう。それらを使って、仮のイメージタイトルを考えてみてください。

大事なのは、ウェブ検索を意識し、特に以下の2点に気をつけることです。NG例も挙げておきます。

◎必要としている読者の検索に引っかかる言葉を選ぶ
中身を見なくても、歯科医師向けか、患者さん向けか、テーマは?
などがわかりやすいように心掛けましょう。

【NG例】
患者さんのことを考えた歯科治療
・最新の歯科治療

どちらも漠然としすぎていますよね。

◎ 患者さんに不快に思われない表現を使う

今やインターネットで簡単に検索できる時代です。
著者の名前を検索したときに、患者さんが不快に感じるキーワードを使わないように心掛けましょう。

【NG例】
かならず儲かる歯科医院経営
・患者さんに自費を選ばせるテクニック

9. 目次は?

読者にわかりやすい形での項目分けを考えてみましょう。
目次はチラシなどで一人歩きするので、それだけ見てもイメージがつかめるものがベストです。

ここで注意するのは、自分の得意分野に絞り込むこと。高齢者向けの口腔ケアが得意なのに、口腔ケア全体について書こうとすると、どこかで聞いたような硬い文章を引用することになりがちです。

【NG例】
・そもそも口腔ケアとは
・小児期に求められる口腔ケア
・成人期に求められる口腔ケア
・高齢期に求められる口腔ケア

【推奨例】
・口腔ケアでの高齢者の悩みベスト5
・5つの悩みの解決法
・訪問診療・家族が悩まない口腔ケア指導
・高齢者施設の悩みにどう応える?

最後に

さて、1~9への答えが出来たら、ご自分の書きたい本のイメージが、だいぶ明確になってきたのではないでしょうか。

ここまで揃ったら、あとは、周囲や出版社に相談してみましょう!

きっと具体的な評価やアドバイスがもらえるはずです。

◎類似本のチェックもお忘れなく!
歯学専門書店「シエン社」(水道橋)のサイトで、歯科出版社の本を一度に見ることができます。
https://www.shien.co.jp/

◎経営関連の本なら…
日本歯科新聞社の書籍オンラインサイトも、ぜひチェックして、タイトルなど参考にしてみてくださいね!
https://dentalnews.shop/?category_id=61e8fa7be859267041aa8895


この記事を書いた人
水野麻由子【日本歯科新聞社制作局】
制作局ディレクター、歯科出版アドバイザー。歯科医院経営・総合情報誌『アポロニア21』の企画・編集に25年以上携わり、経営書を中心に50冊以上の書籍を企画・取材・編集。
ヒトの「肩書」と「顔」がなかなか覚えられないが、才能は忘れない。ヒト、モノ、会社などの「ここがすごい!」という光っているところを見出すのが得意かも。

〔主な担当書籍〕
『歯科医院デザインCatalog』シリーズ
『「歯科プロサポーター」24人に聞いた・よくある経営の悩みと解決法』
『歯科医院のラクわかり経営学』
『100円グッズから始める 歯科医院の整理・収納アイデア集』
『事例に学ぶ・歯科法律トラブルの傾向と対策』
『歯科医院のためのTHE指導・監査』
『食べる・飲むメカニズム』


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