N⚫️Kのヨーロッパ紀行の番組を観る子どもたちは夢をみる
代々、お城をもつような名家に生まれたら、
お姫様や王子様気分を味わえたのだろうか?
名画や骨董品に囲まれ、
ヴィンテージの高級食器を普段使いし、
食事や言葉のマナーを
当たり前のように身につける。
複数の言語を話し、
文学に精通し、
理数科目もスポーツも得意で
一流の名門校に通う。
ピアノやバイオリンの演奏に親しみ、
バレエやオペラを鑑賞して、
大人になったら、
ドレスや燕尾服を着て
社交界デビュー。
どの社会に出ても恥ずかしくない。
それどころか、
人の上に立つ人間として尊敬されている、
そんな一生涯を送れる人生。
―――――――
少年少女は肩を寄せあい
クラシック音楽が流れる中で
古城や石畳の街を空撮した映像が流れる
N⚫️Kのテレビ番組を観続けた。
声を挙げずに
いや、声を挙げられずに
涙を流し続ける子どもや
泣き方さえ忘れたり、
はじめから泣くことさえ許されなかった子どもも。
(生まれた場所が違っていれば)
(生まれた家が違っていれば)
(生まれた親が違っていれば)
声にならない感情が
まとまらない考えが
テレビ室の薄汚れた天井や壁を
さらに濃くしていった。
今日も
少年少女は肩を寄せあい、
N⚫️Kのヨーロッパの紀行番組を観る。
そのとき、テレビの画面が突然消えた。
肩を寄せあっていた少年少女が、
プチプチってシャボン玉のように一つ一つ消えて、
電気が消えた真っ暗なボロアパートの一室に
独りでいることに少女は気づいた。
親が帰ってくるのは、次はいつだろう?
食べ物が食べられるのは、次はいつだろう?
古城や石畳の街に、今すぐ飛んで行きたい。
目を瞑って
ヨーロッパの裕福なお城や街で暮らす人生を想像した。
涙は今日も出ない。
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