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【エッセイ】学童保育所で食べた焼きイモが最高だった話

いつものように、学校帰りに学童保育所に行くと、先生が
竹ぼうきをもって。みんなで出かけるよ
と言った。

着くと、そこは小学校の校庭の外側だった。

ザワワワ、カサカサ
ザワワワ、カサカサ

そこは落ち葉の枯れ葉が吹き溜まりに大量にある。先生はそこから葉っぱを2~3枚拾うと、両手でクシャクシャと潰した。

「うん、よく乾燥している」

そう言ったと思ったら、大型のゴミ袋を何枚もだしてきた。

「みんな、これに枯れ葉を入れてって」

わけがわかならなかったが、正直嫌ではなかった。それどころか、だんだんと楽しくなってきたのだ。

枯れ葉は踏むと、カサクシャパリパリと乾いた音を立てた。普段めったに聴かないその音が面白くて心地よくて、葉っぱを拾いつつ、わざとたくさん踏んでみた。それは、わたしだけでなかったようで、そこかしこでカサクシャパリパリという乾いた音が響いた。

「あんまり葉っぱを潰さないで」

先生に注意されたので、みんなは踏むのをやめた。

ちょっとすると、竹ぼうきで大量に集めた枯れ葉の中にダイブしたり、まくら投げならぬ枯れ葉投げをしたり、全身をすっぽり枯れ葉でおおってかくれんぼする男の子まで現れた。

ワイワイガヤガヤやりながらも、先生が用意したゴミ袋はすべて満杯になった。それをみんなで手分けして学童保育所に持ち帰った。

つぎの土曜日、学童保育所に行くと、先生は段ボールからサツマイモを取り出して、1人1本ずつ渡した。

つぎに、先生は適当な長さに切ったアルミホイルも1枚ずつ渡した。

先生は、アルミホイルでサツマイモを包んだ。

「こういうふうに、サツマイモが見えないようにアルミホイルで包んで」

みんな見よう見まねでやった。
「アルミホイル切れたー」
「はみ出したー」
「見てー、キレイにできたー」

みんなキャーキャー言いながらやり終えると、先生に、アルミホイルに包まれたサツマイモを渡していった。

「うまいねー」
「上手にできてるよ」
「キレイだよ」
先生はそれを1本1本チェックしていった。

外に出ると、学童保育所のグラウンドではーといっても小学校のグラウンドよりはかなり小さかったがー真ん中にあの枯れ葉が積まれていた。

アルミホイルに包まれたサツマイモを先生は、まるでひまわりの種のようにクルクルと丸く丸くおいていった。

一段目が終わると、さらに、その上に同じようにおいていき、全部で三段になった。

さらに、その上に大量の枯れ葉をかけた。アルミホイルで包んだサツマイモはすっかり見えなくなってしまった。

「みんなー、危ないから出来るだけグラウンドの端っこに行ってー」

先生は、子どもがみんな端っこに行ったのを確認すると、マッチを4,5本もち、それをマッチで擦った。

シュッシュッ、ジュボッ

いきなりマッチから炎があがった。先生はしゃがむと炎を枯れ葉につけた。枯れ葉から白い煙が上がり、それが黒くなり、パチパチと音が出はじめ、があがった。

先生は、またマッチを4,5本だして火をつけると、枯れ葉の別の場所につけた。その後、それを2回繰り返した。

パチパチパチ
パチパチパチ
バチッ
パチパチパチ
パチパチパチ

<落ち葉の枯れ葉って、好きだ>

枯れ葉の焚き火を見ている間、強くそう思った。

道の端っこにある茶色の葉っぱという認識しかなかったが、踏むと心地よい音がし、燃やすと、見ていても聴いてもなんだか心が落ち着いて、いつまでも見ていられると思った。普段はうるさく騒ぐ男子たちも、黙って焚き火を見つめていた。

先生はなんどか枯れ草を追加した。

枯れ葉を全部焚き火に入れ終わり、その焚き火も徐々に炎が小さくなり、しまいには煙もほとんどでなくなった。

「みんなー、まだ焚き火は熱いから近づかないでねー。ボール遊び以外はやっていいから」

そう言われたので、鬼ごっこをはじめる子、鉄棒やブランコに乗る子、焚き火に集まる子などに分かれ、グラウンドは一気に賑やかになった。

先生は焚き火のそばにずっと立っていた。

「みんなー、集まってー」

しばらくすると、先生はみんなを呼んだ。長いトングで燃え残った枯れ葉の中から、アルミホイルに包まれたサツマイモを1本取り出した。それを軍手でもつと、丁寧に丁寧にアルミホイルをはがした

ポン

そんな音が聴こえた気がした。先生がサツマイモを2つに折ると、サツマイモから湯気がたくさんでた。サツマイモは黄色に変わっていた。

「うん、火が通っている」

先生がトングでアルミホイルに包まれたサツマイモを出して、別の先生がアルミホイルをはがしていってはそのサツマイモ、つまり、焼きイモを新聞紙に乗せ、1人1本ずつ渡していった。

「熱いから、気をつけるのよー。よーく、フウフウしてねー」

新聞紙に包まれた焼きイモを、落とさないように大事にもち、グラウンドの隅の縁石に腰かけた。

両手の中の焼きイモはまだまだ熱く、焼きイモの皮から焦げたにおいがした。

フーフーフー
フーフーフー

もうそろそろいいかと思って、恐る恐る焼きイモに唇をつけた。

「アチッ」

まだまだ熱かった。

フーフーフー
フーフーフー

今度はもっと慎重に歯から焼きイモに触れた。皮は少し固くて焦げて苦かった。指で皮をむいた。黄色い焼きイモがでてきた。

パクッ

焼きイモは、甘くて甘くてホクホクしていて、こんな美味しい食べ物が世の中にあるなんて知らなかった。

フーフーフー
パクッ
フーフーフー
パクッ
フーフーフー
パクッ

食べることに夢中になっていた。

気づくと、新聞紙の中の焼きイモは小さくなっていた。

「もうこんなけか」

最後の二口は、ゆっくり、ゆっくり、丁寧に味わった。

「ごちそうさまでした」

それからしばらくは、頭の中は焼きイモだらけで、母に

「焼きイモ食べたーい。焼きイモ食べたーい」

せがんでは困らせたのだった。

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