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「給食」の思い出を記憶から取り出して、大切に撫でてみる

子どもの頃の思い出を、
あなたはどれくらい覚えているだろうか。


私は断片的ではあるが、
早くて2歳の頃の記憶がある。


3つ上の兄の七五三に合わせて、
早いけど同時にってことで2歳のときに撮影をした。


家の近くの公民館みたいなところでの撮影会。

カメラの向こうで、母や近所のママが
「shiiimo~~~!!!こっちこっち~~~~!!!」
と両手をおおげさに振って、注意をひこうとしている様子。

そしてそれを見て、

「みんな何をしているんだろう……」
と思いながらぼーっとしていた記憶だ。

今も実家のガラス棚の中には
紺色のワンピースにおしゃれな靴を履いて
なにもわかっていないポカーンとしたshiiimoが
明後日の方向を見ている写真が大切に保管されている。
(母たちの必死の努力、散る)



記憶に残るものはキラキラしているとは限らない。
そして自分は覚えていても、
一緒にいた人の記憶には残っていないこともある。

そう考えると

「記憶」「思い出」ってとても揺れ動きやすくなんとも曖昧だ。

でも、時折

その記憶を引き出して
なんだかあの頃の気持ちを大切に撫でたくなることがある。


あなたにはそんなことがあるだろうか。


ありますよね?もちろん?(圧かけんな)


今日は、2歳より少し時を経て。
小学生の頃の給食にまつわる記憶を少し取り出して、
少し静かに浸ってみようかと思う。

なんてことのない
けれどふとした瞬間に思い出される
大切な記憶。



大食漢のつぶくんの記憶


クラスにひとりはいなかっただろうか。

よく食べよく遊ぶ、
体格のいい(素直にいえば、ふくよかな…)男の子。

その大食漢の彼は、大きな体につぶらなお目目をしていたので
ここではつぶ君とする。(GAPってやつさ)


その日は、みんなも好きなカレーだった。
当然ながら、みんな一目散に食べておかわりを求める。

たっぷりと入っているカレーも、
油断しているとあっという間に売り切れだ。


私はおかわりに並ぶのが、なんとなく気恥ずかしくて。
あまりその列に加わることはなかった。


その日もカレーの匂いに食欲をそそられつつも、
そのまま食べ終わり、おかわりはせず。
みんなまた並んでいるなあ~と、
ぼーっとその行列を眺めていた。


1人。列が落ち着いたのを見計らったように
背の高い女子が並んだ。
彼女はCちゃん。
笑うと目が垂れ下がってかわいいし、色が白くて足が長かった。


けれど、癇癪はすごかった。

普通に会話をしていても気づいたら怒っていたり。
感情をおさえきれず泣き出すことも多く、
そのことを男子から弄られていたように思う。

普通級でいっしょに学んでいたけれど。
今思えば、彼女自身もなにかを抱えていたんだろう。

今の自分の感覚でいうと、
軽度のASD・ADHDだったのかな。

本当に毎日大変だったろうに。
そう思う。

「おい、C!おかわりすんのかよ~」
「入れすぎんなよ!って多すぎ~!!みんなも食べるんだぞ!」

小学生の言葉って、なかなか強いこともある。
今、こうして普通に聞いていても心がぎゅっとすることもあるほど。
そのときのCちゃんの心には、
たびたび受けるその言葉がどう刺さったのだろう。

Cちゃんのおかわりをするその手が、ぴたっと止まったのがわかった。


「やめなよ。そういうこと言うのは」
shiiimoはたしかそう言ったと思う。


自分の正義を誇張するわけではないのだけれど。
私はそういう発言はほっとけないタチだった。


父は養護学校の教員をしていて
いつも何かを抱えながら頑張っている子の話をしてくれたからだ。


それでも、じゃあ周りが言葉をすぐ受け入れてくれるかというと
そうもいかない。

それは入れすぎ~だのなんだのケチをつける男子。

そこで、Cちゃんの怒りと悲しみが頂点に達してしまったのだろう。


バチャ!!!!



Cちゃんはそのまま、お椀に入れたおかわりのカレーを、
カレー鍋の中にひっくり返して、戻してしまったのだ。


「「「あああ~~~~~!!!!!」」」


クラス中に声が響き渡った。

Cちゃんが食べたあとのお椀に一度入ったカレーが、
入ってしまった。

…………当時は、「ばい菌」だとか「〇〇菌」だとか。

そういう言葉をつかって、
ばっちい扱いをすることがなんとなくはやっていた風潮もあり、
このカレーはみんなにとってその瞬間、
「ばっちい」ものとなってしまったのだ。


Cちゃんはパニックになって泣いていたと思う。
そのあと、どうしていたかまでは記憶にない。
先生といっしょに教室の外にいったん出たんだったか。


なぜ、記憶がないのかというと。


その騒然とした教室の空気をまったく気にもせず。


ここでつぶ君が立ち上がり、
平然とカレーをおかわりしたのだ。


私は、そのつぶ君の行動を驚いて見つめていたのである。


「おい、つぶ!Cの菌が入ってんぞ!!!やめろよ!!!」

クラスの誰かが言った。

当時の言葉。
小学生の戯言ではあるが
ここで書いていても気分が悪い。(shiiimo、おこ)



「え?なんで?べつに気にしねえ。食べたいし」



周りの言葉は気にせずに、
彼はそう言って何杯目かわからないカレーをお椀に注いだ。


「あはは、つぶはやっぱり、食いしん坊だな~」
「よく食えるよなあ!」
「おまえ、すごーーー!!」


周りのクラスメイトはそれを見て、
ただの大食いだと笑っていたっけ。


私には。

笑い飛ばすなんてできなかった。


この中で。一番かっけえじゃん。
そう思った。


彼自身は本当に食べたかっただけなのかもしれない。
けれど、小学生って、
周りの声や空気みたいなものが
肌で感じられるようになる時期にさしかかってくる。

周りに同調しておくことで、
うまく馴染んでいこうという努力をみんなが始める頃。

だからこそ、このときの彼の、
周りをまったく気にしない行動に。
私はひどく感動して、
けして忘れられない思い出になっているのだ。

きっと、本人はもう忘れているだろう。

それでも私は忘れない。
小学生の私が、なにか大切なものを見つけた
給食の思い出のひとつとして。


私が忘れていた給食の記憶


当時の給食の思い出。
私の記憶の中では、このつぶ君のカックイー食べっぷりがほぼ占めていたのだが。

私が忘れていた大切な給食の記憶もあったことを、
親友のイチゴが教えてくれた。

(親友はイチゴが好きというかイチゴ狂である)



10年前。
私の結婚式で、
彼女は友人代表のスピーチをしてくれた。
涙ながらに手紙を広げて、
必死に読み上げてくれたその話。

私はまったく覚えていなかったのだ。


***

とある日の給食の時間。

イチゴは、好きなものはたくさん食べるが
基本的に偏食で、
給食はなかなか食べきることができなかった。

そんな彼女が大好きなメニューがその日の給食に並んだ。
たしか、揚げジャガイモのそぼろ煮。
私も大好きなメニューだった。

このメニューはみんなが大好き。
大食漢のつぶ君はじめ、みんなが列に並び、
男子は何度もおかわりをする。

珍しく給食を食べきれたイチゴも列に加わろうとしたが、
普段並ばないので、勇気が出ない。
長い列に並んだとして、すでに並んでいる男子たちで終わりそうだ。

そう諦めていたらしい。

そんなときに、
頼んだわけでもないのに、その列の先頭に歩み寄った人物がひとり。

「ちょっと男子~。
普段食べれない子も、今日はおかわりをしたいんだから。
もう、おかわり一回してるんだから、ゆずってあげなよね」


それがshiiimoだった、というのだ。

***

涙の親友をスピーチを見つめて、
私も涙を流しながら、内心驚いていた。

そんな私、
「ちょっと男子イーー!!」
っていうキャラだったっけ。って。(そっちかい)

いや、うん、でもそうだった。
つぶ君の件で私。
勇気が出たのだ。

そう振り返った。


「きっと、shiiimoは覚えていないよね。
でもあの時私は、なんてかっこいい人なんだろうって思ったんだよ」


イチゴはそう言ってくれた。

私は、自分の記憶には残っていなかったから、
きっと当時は深くは考えないで行ったことだったんだろう。

でも、当時の自分。
つぶ君の姿に感銘を受けた私が、
彼女を救ってくれたのだと思うと、
なんだか誇らしくもあった。



今、娘たちは給食の時間に、
どんな人間模様を描きながら食べているんだろう。

いつも繰り返しの同じ時間のようで、
でもそこに並ぶ給食は毎日違って。

記憶の中に薄れてしまうものもあれば、
こうしてたまに取り出して、
それぞれが大事に撫でる思い出も生まれているのだろう。


今日の給食は、おいしかった?
給食当番、がんばれた?
おかわり、たくさんした?


帰ったら次女に聞いてみよう。

時には、そこで起きた面白いドラマも聞けるかもしれない。
そう期待して。




今回、課題として本記事を書いてみました。
プライベートもnoteもふらふら迷走しがちなので
テーマがあるとやりやすいことがわかりました。(発見)
まさかnoteで、つぶ君の話をすることになるとは。
わからないものです。

大切な思い出を呼び起こすことができました。
ありがとうございます。


shiiimoの記事をご紹介いただきました。
ありがたき幸せすぎて昇天するところでした。
いつもありがとうございます。

おふたりを紹介しているのは以下の記事。
マイトンさん、アンサー(?)タイトルになっているの、粋ですーー!



さて。5月もあっという間に後半ですね。
ぼちぼちで今日もまいりましょう🍀

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