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【遊戯王デュエルリンクス】2022年4月KCレポートと月光環境裏話

KCカップお疲れ様でした.結果はどうだったでしょうか?
自分の結果は

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4つ目の銀アイコンが取れました.
最終日朝の時点で6万3000DPでしたが,最後の金アイコン争いに負けて最終的に銀アイコンに落ち着きました.
今回はKC始まる前から金アイコン以上,あわよくば世界1位を狙っていたので最終結果は満足いくものではなかったですが,事前準備から通して充実したKCカップでした.今回は最後の最後で実力が及びませんでしたが,また次の機会に挑戦しようと思います.

ここからは使用デッキ紹介です.早速ですが使用デッキです.

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構築は環境見ながら変えていましたが使用デッキは月光1本です.
事前準備の段階で月光を評価していたプレイヤーはかなり少なかったと思います.自分も直前まではあまり評価していませんでしたが,結果から見ると月光で1人世界トップ10入り,トップ100まで含めると10人前後が月光を使用しており,月光が事前予想を裏切り環境の一角に登り詰めることになりました.実はこのような結果になった背景には,3月終わりからKC開始までの2週間の短期間でリンクスの環境は急速に変化しており,その環境の変化と密接な関係があります.大筋は理解しているプレイヤーは多いと思いますが,細かいところまで理解しているプレイヤーは少数と思います.この記事では,今回のKCカップのメタゲームと月光が環境に台頭するまでの流れを解説します.

KCレポート

1. KC開始前夜まで(事前準備と環境の変遷)

1.1 幻影騎士団1強環境

前回2月のKCカップが終わってからかなりリンクス熱は下がっていました.いろいろ理由はありますが,一番の理由はリンクスをやる目的を見失っていたことです.前回の自身3つ目の銀アイコンを取ってから,自分の実力に自信を持てるようになった一方で,やることやっていれば銀アイコンは取れるよねと考えるようになり,銀アイコンを実力者の証として目標にすることは意味があっても,銀アイコンを目標にKCカップを走ることに意味を感じなくなっていました.ビジネスで忙しいねんと言いながら前日までマスターデュエルをやっていても,KCカップのセオリーを分かっている強豪プレイヤーが一夜漬けすれば銀アイコンは取れてしまいます.自分より遥か上の実力者たちが,金アイコンを何個取っても世界大会代表権利が取れないと価値を感じなくなる感覚と似たような感覚で,銀アイコンに価値を感じなくなっていました.完全に次の目標を見失っていました.

もう1つリンクス熱が下がっていた理由があり,2月のKCカップ以降研究が進んだ幻影騎士団のあまりにも1強環境だったことです

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2月のKCカップでは,まだ研究が不十分だったため霊獣や魔界劇団などの対抗勢力が成長途中の幻影騎士団を倒して勝ち逃げする結果になりましたが,KCカップ後研究が進んだ結果,幻影騎士団に対抗できるデッキはリンクスのカードプール内に存在しないことが判明しました.後述しますが,今回のKCカップでは幻影騎士団以外のデッキも活躍しましたが,おそらく幻影騎士団と互角の勝負ができるデッキはあっても,明確に有利が取れているデッキは4月現在でも存在しないはずです.

幻影騎士団はなぜ1強環境になったのか?これは今回のKCカップのメタゲームの流れで最重要な点なので解説しておきます.
今回のKCカップを語る上で3つのキーワードがあります.「リソース」「プレイング」「自由度」です.カードゲームの基本要素を並べただけのように見えますが,今回のKCカップはこの3つの要素を高い水準で揃えたデッキが勝つ環境でした.
「リソース」についてですが,幻影騎士団は全てのモンスター効果が展開札であり墓地効果により後続を用意できるため,ただデッキを回しているだけでリソースが増えていきます.妨害である霧剣や盤面解決を行うブレイクソードすらリソースとして運用できるため,妨害の質と盤面解決力は1対1交換除去を基本としたリンクスにおいて,他デッキとは明らかにパワーが違いました.現代遊戯王のマスターデュエルでも幻影騎士団は現役であることからも分かるように,幻影騎士団というカード群が単純に強すぎますここまでリソースを貯め込み高い妨害の質があったデッキはリンクス内だと堕天使くらいな気がします.あまりにも幻影騎士団が強いため,自分はドライトロンをリンクスに実装しろと嘆いていました.

「プレイング」についてですが,幻影騎士団は前述したカードパワーの高さに反してプレイングはかなり繊細なデッキです.幻影騎士団のプレイングを難しくしている要因はいくつかありますが,一番はスキルと霧剣の存在です.

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ラギットグローブとダスティローブの墓地効果をスキルで起動しつつ霧剣を追加するだけのスキルに見えますが,幻影騎士団のプレイングを難しくしている要因です.霧剣が問題であり,サーチが効くデモンズチェーンくらいに見えないカードですが,使い方の幅はデモンズチェーンとは比較にならないほど広いです.妨害として使うだけでなく防御札やリソースとしても運用できるため,霧剣をうまく使えるかによってプレイングに差がつきます.おそらく運営としては霧剣が3枚使えると流石に強すぎるけど1枚くらいスキルで追加するならそこまで問題はないだろうと考えていたのかもしれませんが,問題は霧剣の枚数ではなく霧剣をきれいに処理する手段がリンクスのカードプール内にほとんど存在しなかったことです.霧剣をきれいに処理できるカードが存在しなかったためどうしてもプレイングで踏み越える必要がありプレイング要素が強くなりました.
しかし,ここでまた問題があり霧剣をきれい処理できるデッキがほとんど存在しなかったため,幻影騎士団とプレイングゲーの土俵に上がれるデッキが存在しませんでした例外として,1つだけ幻影騎士団とプレイングゲーができるデッキが存在しておりそれが幻影騎士団でした.幻影騎士団は単純にカードパワーが高いため,霧剣の妨害,防御,リソースの一連の流れをプレイングで踏み切れました.霧剣打たれたところで完全に機能停止しないので幻影騎士団ミラーは腕の差で大きく勝率が変わります.2月のKC後徐々に幻影騎士団1強環境が気づかれ始め「幻影騎士団1強環境終わらせますよ,幻影騎士団ワクチン開発してきます」と豪語していたプレイヤーたちも「幻影騎士団ミラー深いなあ」と次々と幻影騎士団堕ちしていきました.
しかし,またここに問題があり,霧剣まで展開が辿り着きリソースをお互いに貯め込める前提でミラーはプレイングゲーになるため,逆に言うと片方が手札事故を起こしてしまうとプレイングが絡まないワンサイドゲームになるとも言えます.リンクス歴代最強デッキの1つと評されるオノマトは限りなく運の要素が排除されたため腕の差=勝率に直結していました.幻影騎士団はプレイング要素がかなり強いデッキですが,多少の運要素を残しているため,完全なプレイングゲーに昇華できませんでした.幻影騎士団は単純なカードパワーではオノマトより高く,堕天使と比較してもカードパワーでは遜色ないデッキだとは思いますが,多少の運要素を残したため,オノマトと堕天使の中間的なデッキだと評価しています.
幻影騎士団が完全なプレイングゲーに昇華できなかったことは,ある意味カードゲームの運とプレイングの要素をバランスよく残したカードゲームらしいデッキですが,ここに1つ弊害があり,デッキパワーは劣っていても運さえあれば勝てるデッキの存在を許容してしまったことです.代表例は深海のディーヴァを引くことだけを前提にした鮫デッキです.

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デッキ内の初動札を深海のディーヴァのみにしてディーヴァが引けたことを前提に妨害札を詰め込んだデッキが大会で結果を残しました.当時は運だけのヤバいデッキの登場に人間やめてるとリンクス界では多少話題になったデッキですが,実はメタゲームの流れとしてはかなり自然です.幻影騎士団にカードパワーでも安定性でも対抗できるデッキが存在しなかったので,やれることは多少残ってる運要素に付けこむことくらいしかありません.カードゲーマーの中には勘違いしている人もいるかもしれませんが,プレイングはデッキパワーが高いデッキにだけ許された特権です.カードゲームはプレイングが大事だとよく言われますが,デッキパワーで劣るデッキはそれだけプレイングの幅は狭まるためプレイングの要素は小さくなります.いくらアックスレイダーデッキをうまくなっても残念ながら幻影騎士団には勝てません.ディーヴァだけの鮫デッキは,プレイング要素を限りなく排除し,運よく回ってしまったときの最大出力で幻影騎士団の下振れを拾うか,更なる上振れで轢き殺すかだけに対抗手段を絞っており,人間をやめたデッキに見えて戦略としては理にかなったデッキです
ディーヴァだけ鮫デッキの登場はある意味,幻影騎士団1強環境の終焉までのカウントダウンの始まりでした.というのも幻影騎士団がプレイングゲー要素が強い理由が,デッキの難易度の高さからプレイヤー間の理解度の差が大きかったことがあり,2月に登場して4月までのせいぜい3か月程度で全プレイヤーの理解度が均一化するのには時間が短すぎます.しかし,時間が経てばいつかは均一化されるため,プレイングゲーの要素は小さくなり多少残っている運ゲーの要素が強くなります.3か月ではなく半年たてば幻影騎士団ミラーも初手を見せ合って勝った負けたを決めるだけのゲームになるでしょう.ディーヴァだけ鮫は幻影騎士団ミラーが運ゲーになる段階の前に生まれてしまったため人間をやめてしまいましたが,半年後に生まれていれば天才デッキとして称賛されていたでしょう.生まれる時代が早すぎた海賊王デッキです.ディーヴァだけ鮫は今回のKCカップの環境を決定づけたターニングポイントの1つです.
半年後に起きるはずのメタゲームがたった2か月で起きてしまったため,幻影騎士団1強環境の終焉した不毛な世界の片鱗が見えてしまい,2月~3月はあまり幻影騎士団1強環境と向き合う気が起きず環境外デッキのブンボーグを研究するかマスターデュエルをやっていました.ブンボーグについては記事を書いているので興味ある人は読んでみて下さい.

「プレイング」について多少長くなりました.「自由度」について説明を移ります.カードゲームにおいて,自由度はプレイングと構築の幅を表す言葉として用いられますが,ここでは構築の自由度について注目します.幻影騎士団はデッキのカスタム性能が非常に高いです.グローブ,ローブ,ブーツの幻影騎士団モンスター3種類と幻影剣の1枚は固定枠ですが,デッキ20枚中約半分は自由枠です.この構築の自由度の高さで環境を見ながらデッキを組み替えることであらゆるメタカードを貫通してしまいました.
ただデッキ構築の自由度の高さだけで見たら,前述のディーヴァだけの鮫デッキもデッキ内の固定枠は3枚のみなので負けてませんが,幻影騎士団の不純物は前述のリソースの観点から他デッキの不純物より1ランク上のパワーがあります.これはブンボーグをポイバで回しているときに感じたことですが,ブンボーグは月の書やコズミックサイクロンなどのメタ札に耐性があり幻影騎士団以外の多くのデッキに有利が取れます.しかし,幻影騎士団の月の書やコズサイに限っては事情が変わり,月の書やコズサイをケアして動くと霧剣がきつく,月の書コズサイ霧剣を踏み越えたとしても蓄えられたリソースを使ってそのまま押し切られてしまいます.幻影騎士団がコズサイや月の書を底なし月の書対策の単にバック干渉札として運用している場合は攻め入る隙がありますが,Pデッキをはじめ攻め札として使えるデッキや,対応力の低いデッキは幻影騎士団の不純物がかなり重いです.不純物のパワーが他のデッキの不純物に比べてワンランク高いため,対抗勢力が対策札を採用しても,幻影騎士団対策用に採用したコズサイより幻影騎士団が使うコズサイのほうが強いので,パワーで上から潰されてしまうため,幻影騎士団を対策するのは不可能でした.幻影騎士団の不純物のパワーの高さは今回のKCではメタルフォーゼを握ったプレイヤーは感じたかもしれません.

幻影騎士団は「リソース」「プレイング」「自由度」の3要素が全て高い水準で備わっていたため,2月のKCカップ終了後から3月の終わりまでの2か月間は幻影騎士団1強環境でした.

2月から3月の間の幻影騎士団1強環境は,幻影騎士団組んでないプレイヤーや幻影騎士団ミラーがあまり上手ではないプレイヤーにとっては全く勝てないので,あまり楽しい環境とは言えない環境でした.
自分は幻影騎士団をそもそも組んでいなかったので,幻影騎士団1強環境参加権を持っておらず,全くリンクスをやっていなかった...わけではなく割とリンクスはやっていました.

リンクスもやっていましたが,同時にマスターデュエルも楽しかったのでマスターデュエルもかなりやっていました.特にイベントのNRカード限定構築戦が面白かったのでかなり本気でやっていました.KCカップの話から脱線してしまうのであまり深堀りはしないですが,NR限定構築戦は高価なUR,SRカードが禁止の特殊レギュレーション戦です.謂わば無課金勢含め全プレイヤーが同じデッキを構築可能であるため,純粋にプレイングとデッキ構築だけで誰でも最強デッキを完成させることができるフォーマットです.高価なカードを持ってないからデッキが組めずに負けたが言い訳ができない分,負けが自分のデッキ構築かプレイングのどちらかに問題があることになるため,ある意味一番厳しい現実を叩きつけてくるイベントですが,デッキ構築とプレイングを純粋に煮詰めるプロセスが楽しく,かなりガチでやっていました.その結果イベント100連勝達成してしまい,少々波紋を呼ぶことになりましたが...

マスターデュエルのNR限定構築戦100連勝はかなり達成感があり,デッキ構築とプレイングの自信には繋がりましたが,同時に虚しさも残りました.現状のマスターデュエルは,当初の公式見解ではマスターデュエルはガチ勢向け,リンクスは原作ファン向けのキャラゲー路線でしたが,99%のカジュアル層と1%のガチ勢が共存する空間になっています.マスターデュエルのリリースと同時にリンクスの人口は減ってしまい,競技志向のガチ勢が多くリンクスに留まっているため,ガチ勢とカジュアル勢の棲み分け場所が逆転しています.KCカップや選考会のようなガチ勢が本気で競う場がマスターデュエル内には現状存在しないため,ガチ勢とカジュアル勢が同じ土俵で殴り合うゲームになっています.どうしてもセオリーをしっかり理解して競技として向き合っているガチ勢が,遊戯王を楽しむことに重きを置いているカジュアル勢から勝ち星を吸い上げるゲームになってしまい,ガチとカジュアル両方があまりいい体験をしない状態になっています.ましてや定期開催のゲーム内イベントの1つでしかないNR限定戦に本気になっているのはガチ,カジュアル含めてほぼいません.世界で1人だけ本気になって誰とも競わず勝負していても虚しさが残るだけでした.
公式戦がまだ存在しないマスターデュエルでいくら勝っても,その勝利に何も価値を見出せずにいました.

マスターデュエルに物足りなさを感じていたとき,自分の気持ちを一変させてくれる出来事がありました.3月中旬から3月終わりにかけて,マスターデュエルでは得られない勝った時の達成感と負けたとき全てを失う感覚を感じたかったため,連日連夜開催されている有志開催のリンクスのポイントバトルに参加していました.使用デッキは当時のポイバ環境最強のブンボーグをずっと使っていました.幻影騎士団1強環境ではありましたが,制限時間があるポイバでは1戦が非常に短いワンキルデッキのブンボーグは圧倒的回転率からポイバで何度も1位を取ることができました.ポイバ参加したら毎回1位取れるので当時はかなり気持ちがよく,ブンボーグを回すのが楽しかったのもあり,次回のKCカップはブンボーグで走るつもりでいました.
毎回ポイバ勝てるので調子に乗り始めた時期に参加したポイバが自分の気持ちを180度変えてくれました.

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上の画像はそのときのポイバの最終結果ですが,1位のプレイヤーは今回のKCカップで世界1位になったACTさんです.このポイバは90分間のレート戦形式だったので制限時間的に大体1万ptあれば1位になれます.しかし,このときは1位~3位が1万ptを越えて1位に至っては1万3000ptまで到達するハイレベルな対戦になりました.
ポイバの戦略的な話になりますが,ポイバは順位が自身より上の格上に勝つほど多くのptが貰え,格下に勝っても貰えるptは少ないですが,格下に負けると多くのptが奪われます.順位が上になるほど負けた時のリスクが高くなりますが,逆に言うと早い段階でptを上げ切ってから1位が走るのをやめてステイしてしまうと,後から追いかける2位以降は格上から多くのptを貰えるチャンスがなくなり,低い順位同士でちょっとずつptを増やすしかなくなるので対戦数をこなしてptを盛るしかなくなります.これは3日間の長丁場で行われるKCカップではあまり有効な戦略ではありませんが,制限時間が短いポイバでは有効な戦略であり,90分間走り続けるより60分間1戦が短いデッキを使ってptを上げ切ってステイした方が1位は取りやすいです.
当時のポイバのブンボーグ使って序盤にpt盛って他のプレイヤーのptの推移を見ながら走ってました.しかし,ずっとどんなにpt差をつけても突き放しても追いかけてくるプレイヤーがいてそれがACTさんでした.pt差ついていたので慌てることはなかったのですが,走ったら自分は溶かして最終抜かれて負けました.KCカップ上位帯で後ろから何回DP差をつけても追いかけてくるプレイヤーの恐怖を分かった気がします.
それ以降も何度かポイバで対戦しましたが最終結果で勝てたことは1度もないです.マスターデュエルに虚しさを感じていた時期のことだったので,本気で勝負できる場がリンクスのポイバにはあり楽しかったです.こんなに強いプレイヤーが同じ時代にいることに感謝しました.世界最強のプレイヤーがそこにいる.このプレイヤーより強くなれば自分が世界一になれる.越えたい壁が具体化した瞬間でした.

3月も終盤になったころ,幻影騎士団1強環境から少しずつ環境に変化していました.いくつか細かい変化もありますが,今回のKCカップの環境にも大きく影響を与えた2つの変化があります.
1つは,既存スキルの上方修正です.いくつか修正されましたが1番大きかった修正は,死偉王の統率の上方修正です.

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元のスキルはヘルアーマゲドンをコストにPスケールを揃えるところは同じですが,貼ったスケールは次のターンにデッキに戻るデメリットありましたが,スケールが戻らないように上方修正され,スキルの使用条件である構築の縛りもDDDペンデュラムモンスター6体から3体に緩和されました.あまりにの上方修正に元のスキルとはもはや別物です.
スキルの上方修正によってDDDが幻影騎士団1強環境終わらせ一気に環境トップに...とはなりませんでした.この時期に考案されたアーキタイプの構築は配信者さんが動画にしているのでそちらを参考にしてください.

当時考案されたDDDは,スキルの上方修正によってPスケールが維持できるようになったこと及びデッキの構築の自由度が上がったことを利用した罠コントロールデッキとして組まれていました.コントロール色が強く中速ビートダウンが基本戦術だったため,構築によってはゼロラプラスも採用されていました.

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幻影騎士団対策札である底なしやカナディアをふんだんに採用できるようになったため,幻影騎士団より強いとも言われていました.ただ当時の構築は問題点を抱えており,幻影騎士団より強いは若干の環境操作だった気がします
今回のKCカップの3つのポイントである「リソース」「プレイング」「自由度」の観点で考えてみると,スキルの上方修正によってPスケールが維持できるようになったためPモンスターをリソースとして貯め込めるようになりました.プレイングに関しては,Pスケールが維持されるためP効果を活用できるようになっただけなくケプラーによる回収効果と組み合わせることで実質スキルをサーチ札のように運用できるようになり,格段にプレイングの幅が広がりました.自由度に関しては,構築の縛りが緩和した分,デッキのカスタム性能は高くなりました.
しかし,当時考案された中速ビートダウンを軸とした構築は,幻影騎士団にリソース勝負を挑むことになるため,圧倒的なリソース量を獲得してくる幻影騎士団とリソース勝負しても短期的には勝ち越せても長期的に見て勝ち切るのは難しくなります.カードゲームにおいて,デッキコンセプトが類似しているときは各要素の水準が高い方が有利です.この時点でのDDDは幻影騎士団と近いデッキコンセプトとデッキパワーはあっても,差別化要素に欠けており,具体的には押し切るためのフィニッシャーが欠けていたという問題を抱えていたため幻影騎士団より劣っていたと考えています.

今回のKCカップの環境とは直接は関係ありませんが,スキル統率の上方修正と同時に上方修正されたスキルレッドアイズルーレットについても触れておきます.

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レッドアイズルーレットは修正前はスキル発動ターン数に制約があり,初ターンに発動ができず,スキルによるサーチもランダムだったため,あまりにも使いにくかったので上方修正されました.他のサーチ系スキルとは異なる特徴を持つスキルであり,サーチにランダム要素がある数少ないスキルです.ランダム要素があるため,運ゲーに見えるため他のスキルと比較して一見見劣りをしますが,実はかなり強力なスキルです.サーチに運要素はありますが,デッキ枚数やデッキ構築によって多少の揺らぎはあっても,デッキ構築に関係なく初動率が一定の確率に収まる他のスキルにはない特徴です.この特徴を利用して環境メタカードを多く詰め込んだメタビ色の強いレッドアイズデッキが考案されました.実はメタビと初動率が一定に収まるスキルは非常によく噛み合っています.これはマスターデュエルのエルドリッチなどの罠ビデッキを想像してもらうと分かりやすいですが,罠ビは妨害用の罠と攻める用のアタッカーがカード単位で役割が分かれています.妨害札のスキルドレインを貼っても相手のライフは一切削ることはできず,アタッカーのエルドリッチで殴っていても妨害にはなりません.逆に展開系はアタッカーに妨害効果もセットになっているので初動さえ通せば妨害と攻撃のバランスが取れます.鉄獣などが該当します.したがって,罠ビは攻め札と妨害札をバランスよく引けないと動きが悪くなり,片方だけ引いても機能しない札がどうしてもデッキ内に多くなるため,基本的には展開系より罠ビのほうが初動の要求値は高いです.罠ビの初動率の最低限担保させることが難しい問題を,レッドアイズはスキルによって最低レベルが保証されているからメタビとして構築が可能になっていると理解しています.今回のKCカップでは,自分が見た範囲では2名ほど上位まで食い込んできていたのでスキルの上方修正の影響は大きかったようです.しかし,問題点もあり,ランダム性だけでなくメタビというデッキコンセプトから環境デッキがバラけると対策が絞りづらくなるため勝ち切るのは困難になります.今回のKCカップでレッドアイズがシェアを伸ばし切れなかった理由の1つに環境デッキの多様化があったように思えます.今後も環境を見て活躍すると読んでいます.

スキルの上方修正に加えて,もう1つ今回のKCカップの環境に大きく影響を与えた重要な変化がありました.それが持ち時間の増加です.

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幻影騎士団をはじめ,現代リンクスでは操作量の多い展開系デッキが環境の中心になってきています.展開系以外にも今回自分が使った月光のように,複雑な操作はない代わりに,複数の選択肢から適確にプレイと展開ルートを選択することが要求されるデッキは思考時間が足りなくなることがあります.持ち時間の増加によって,以前より展開系デッキや複数の展開の分岐があるデッキに追い風になったため,しっかり考えてプレイを選べるプレイヤーがより順当に勝ちやすくりました持ち時間の増加は今回のKCカップでも大きく影響しており,KCカップ中に急増したメタルフォーゼがちょうど操作量が多く複数の展開の分岐があるデッキだったため,KC期間中に急遽メタルフォーゼに握り替えても練習しながら走る余裕がありました.メタルフォーゼのような敬遠されがちな展開系デッキが流行した要因の1つに持ち時間の増加の影響は大きかったはずです.

長くなりましたがここまでが2月KCカップ終了後から3月終わりまでの環境の変化の説明でした.多少環境の変化はありましたが,幻影騎士団1強環境が大きく崩れることはありませんでした.

1.2 幻影騎士団1強環境の終焉,ガンドラ登場

4月1日,KCカップ前最後の新弾が発売しました.

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「全てを無に帰せ!」というキャッチコピーの新弾でしたが,この新弾は文字通りこれまでの環境をリセットして無に帰しました.
クリフォートや魂を削る死霊などの往年のOCGを代表する強力なカードたちが,リンクスの環境を激変させました...とはならず,この弾に収録された2枚のカードが環境を大きく変えました
1枚はワイトプリンセスです.

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ワイトプリンセスは発売前のカードリストが公開された時点から注目されていました.リンクモンスターが存在しないリンクスでは一部の耐性持ちモンスターを除くと全てのモンスターに刺さるコンバットトリック札として使えます.手札誘発という性質から安全に通すことができるため,展開系が増加傾向にある現代リンクスにおいて速度感に合った手札誘発が登場しました.特に,ライフポイントの減少をトリガーにするライフトリガースキルとの相性は抜群であり,ライフ調整が容易になったため既存のライフトリガースキルを全体的に底上げしました.ステータスも優秀であり,クリボールやDDクロウがアタッカーとして運用が難しい低ステータスなのに対して,1600打点かつステータス変更効果はフィールドからも発動可能であるため非常に優秀なアタッカーでもあります.
発売前から注目されていたカードであったため,自分は発売と同時に即行で揃えてポイバに持ち込みました.結果,発売当日だったこともあり,自分以外はワイトプリンセスを使っていなかったため,他のデッキに一方的なワンサイドゲームを繰り返していきなり1位を取りました.

非常に強力な手札誘発の登場にクリボールが最強の手札誘発と言われるリンクスは終わったとこのときは思っていました.
注目されていたカードであったため,霊獣やクリフォートなど多種多様なデッキに採用が検討されました.その結果,今回のKCカップはワイトプリンセスが大流行しました...とは結果的にはなりませんでした.後述しますが,今回のKCカップで環境の中心となった幻影騎士団,DDD,ガンドラ,メタルフォーゼ,月光をはじめとするデッキはいずれもワイトプリンセスに耐性がある,もしくはワイトプリンセスを貫通する展開ルートがありました.ワイトプリンセスが刺さりにくい環境だったため,リンクス界最強の手札誘発の地位はクリボールが継続することになり,クリボールのほうが採用率は高くなりました.しかし,ここで勘違いしてはいけないことは,ワイトプリンセスが弱かったから採用率を下げたわけではないことです.実際,幻影騎士団以前は環境デッキだったハーピィは,ワイトプリンセスには耐性がなく,今回のKCカップではほとんど使われていません.ワイトプリンセスに耐性があるデッキが環境の中心となり,ワイトプリンセスに耐性がないデッキは環境外もしくは常にワイトプリンセスをケアすることを意識する必要が出てきましたワイトプリンセスの登場は,リンクスのゲーム性を大きく変化させ,環境デッキの強弱を評価する新たな基準が生まれたと言えます.個人的には,ワイトプリンセスはゲーム性を歪める力が非常に高いため,早い段階でリミットをかけておくべきだと考えていますが,運営の裁量に任せます.

もう1枚今回のKCカップの環境を大きく変化させたカードが新弾で登場しました.こちらはワイトプリンセスとは異なり実際に使われて大活躍した大本命です.それが破壊竜ガンドラーギガレイズです.

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ガンドラXは使ったことあるがギガレイズは知らないというOCG勢もいるかもしれません.OCGの禁止カードであるガンドラXと匹敵する強力な効果があるのではと思うかもしれませんが,その効果は手札・場のモンスター2体を召喚コストに特殊召喚可能,ライフコストを犠牲にする代わりに墓地のガンドラモンスターの種類を参照して自信以外の場と墓地を破壊および除外する強力な効果を持っています.強力な効果と書きましたが,召喚コストは2枚消費と重く,召喚したところで墓地が肥えていなければ打点が貧弱なバニラです.ゴミカードもいいところですが,なんとここはデュエルリンクス,発売と同時に要介護ゴミカードを介護すべく強力なスキルが登場しました.

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スキルのテキスト長すぎるだろ...ツイッターの短文文化の時代とは思えないテキスト量にツイ廃は拒絶反応を示しそうなテキスト量です.実装当時はサイレントマジシャン云々の効果も活用方法が研究されていましたが,最終的には使われたとはガジェットとガンドラの効果の部分のみが使われました.要約すると1ターンに1度手札1枚をデッキ内のガンドラモンスターと入れ替ながら墓地にガンドラモンスターを1枚追加し,追加召喚権を得ることができます.スキル1回の発動で1回サーチ+1回墓地肥やし+追加召喚権のアドバンテージを得られ,このスキルがデュエル中に3回使い発動可能です.流石に強すぎでは?現代リンクスは大丈夫なのか?と思ったかもしれません.安心してください!このスキルは当然のようにぶっ壊れていました.
発売直後に考案されたアーキタイプの構築は配信者さんが動画にしているのでそちらを参考にしてください.

デッキレシピを見ただけでは大昔のOCGで使われたガジェットやシナジーがなさそうなカードの詰め合わせに見えて紙束にしか見えないので追加の説明をします.紙束に見えるガンドラデッキをデッキとして成立させている全ての元凶はスキルです.ギガレイズがスキルでサーチ可能になり墓地肥やしもできるようになったので,召喚コスト用のモンスター2体さえ確保できればギガレイズの効果を使うことができることに注目し,サーチ効果を持ったモンスターを多く詰め込むだけでもデッキとして成立しました.アーキタイプでは,手札を増やすことができるサンダードラゴンや黒き森のウィッチを採用し,スキルの墓地肥やしをカオス要素と組み合わせるためレヴィオニアが採用されました.この時点でのガンドラはあくまでも準フィニッシャーという扱いがされており,どちらかというとスキルで獲得できるアドバンテージを利用した手札誘発コントロールカオスデッキの色が強かったです.

しかし,ガンドラはここからどんどん進化していきます.スキルの制約が緩すぎるためデッキ構築が無限に考えられ,アドバンテージを取れるカードとなら何とでも混ぜることが可能でした.ガンドラはデッキ構築の「自由度」が高過ぎることがデッキ構築の難易度を上げ,デッキの研究に時間がかかりました.KCカップ前から環境上位デッキの評価をされながら,KCカップが始まるまでデッキのテンプレが完成しなかった非常に珍しいデッキです.
ガンドラデッキを進化させた1番の要因は,デッキ名となっているガンドラとスキルの制約上採用するしかなかったガジェットの評価が上がったことです.ガンドラ自体がスキルの介護があるとは言え,非常に重たい召喚コストが要求され,環境には強力な制圧盤面を作ってくる幻影騎士団の1強環境が続いていたため,ガンドラモンスター自体の評価が微妙でした.ガジェットのついては,ガジェットは元OCG環境デッキだったから強いだろと声を大にする古豪YPもいるかもしれませんが,ガジェットが強いと言われたのはもう古事記の時代です.現代リンクスではパワー不足であり長らくハズレカード扱いでした.
しかし,幻影騎士団1強環境とは言え,幻影騎士団はミラーを意識してバック干渉札を採用した構築が主流だったため,ほぼフルモン構築の全く正反対のガンドラデッキが登場によって,幻影騎士団の強力な制圧盤面がガンドラにも有効とは言えない状況になりました.さらに,ガジェット自体がアドバンテージを取る効果を持っているため,ガンドラの召喚コストを確保したい要求と噛み合っていました.極端な話,手札にガジェット×4みたいな一見大事故ハンでも,なんとサーチ先のガジェットをデッキに戻しつつガンドラは立つので,アド損を最小限に抑えつつガンドラが着地します.ガジェットの評価が上がったことで,往年のエクシーズガジェットのメインエンジンであるギアギガントXが現代リンクスの環境に異世界転生して再び環境に返り咲きました.

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ガジェットを素材にギアギガントXを召喚し更にギアギガントXの効果でアドバンテージを稼ぐため,ガンドラの召喚コストが一気に稼げます.先攻ギアギガントXで圧倒的アドバンテージを取られ,返しのターンで相手がギアギガントXを処理できなければ更にアドバンテージを取られ,そこに更にガンドラが着地します.こんなことされたら流石に強すぎます.先攻ギアギガントXがあまりにも強すぎて頭を抱える鎌倉時代のOCG環境が,令和の時代になんと帰ってきました.往年の遊戯王のまさかの復活とガンドラの派手な効果が古豪YPとリンクス引退勢の琴線に触れたようで,ガンドラ発売から1週間くらいはリンクスに復帰してくるプレイヤーもいました.
デッキ構築の話に戻ると,ギアギガントXが採用されたことで,カオスを軸としたビートダウンから機械族を中心にアドバンテージを稼ぎつつビートダウンする方針に大きく変化しました.しかし,デッキ構築に機械族縛りは追加されましたが,機械族なら何とでも混ぜれるため,あいかわらずデッキ構築の自由度は高いままです.さらに様々な採用候補が試行錯誤されましたが,その中でも特に注されたカードがスターシップ・スパイ・プレーンです.

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また懐かしいカードですが,そうこのカードはOCG環境でも暗黒期と名高いEM,彼岸環境で実際に使われていたカードです.強力なエクシーズを使って戦う幻影騎士団が環境にいるため,バック除去札兼展開札であるスパイプレーンは注目され,実際に大会でも採用したガンドラが結果を残しその強さが再認識されました.

更にガジェットをサポートする展開札として無限起動が注目されました.

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無限起動ロックアンカーは,マスターデュエルのNR限定構築戦でもガジェットとのシナジーから組み合わせられ【無限起動ガジェット】として使われています.現代遊戯王のマスターデュエルでも組まれているデッキが,まさかリンクス環境の同時期に登場する事になりました.無限起動自体はリンクスでも発売当初から使われており,代表例としてはブンボーグと組み合わせた【無限起動ブンボーグ】が組まれていました.無限起動の展開補助能力の高さとアドバンテージを取れる機械族を組み合わせたデッキはガンドラ以前から存在はしましたが,取ったアドバンテージをビッグアクションに変換する方法が存在しなかったため,展開力とアドバンテージ獲得力はあってもフィニッシャーに欠けていました.しかし,ガンドラの登場で状況は一変,獲得したアドバンテージは全部ガンドラに変換できるようになりました.手札誘発とカオスを軸としたカオス軸ガンドラと対比して圧倒的リソース差で戦う無限起動ガンドラが誕生しました.概ねガンドラ登場から1週間後からKC開始直前までの出来事です.しかし,無限起動軸とカオス軸のガンドラは,前者がアドバンテージ獲得力に優れている一方で後者は手札誘発コントロール色が強く,どちらのデッキタイプも優劣がつけられないまま,2つのデッキタイプとその中間の混在型の3つのデッキタイプに分かれることになり,無限起動型の登場はガンドラデッキの構築の自由度の高さを保ったまま,対策を分散させることになりました
ここまでが,登場からKCカップ開幕直前までの2週間のガンドラデッキの変化の概要です.KCカップも様々なタイプのガンドラデッキが使われると予想されていました.しかし,ガンドラデッキはKCカップ開始直前のたった数日で,ここから更なる進化を遂げ,ここまでのガンドラデッキとは全く別タイプのデッキに生まれ変わります.これについては後述します.

ガンドラデッキの登場によって,幻影騎士団1強環境が揺らぎました
幻影騎士団は「リソース」「プレイング」「自由度」が非常に高い水準でまとまっており既存デッキを蹂躙し1強環境を形成していましたが,そこにスキルの手厚い介護を受けたガンドラが食い込んできました.ガンドラも「リソース」「プレイング」「自由度」に関して,ガジェットや無限起動を駆使した「リソース」と自由過ぎるスキルによって圧倒的構築の「自由度」は幻影騎士団に負けず劣らずの高い水準があります.「プレイング」に関しては,幻影騎士団と比較すると複雑な操作が絡むプレイングはありませんが,サーチカードを多用するデッキの特性上,複数の選択肢からプレイングを選ぶ必要あり,幻影騎士団とは種類の異なる高度なプレイング要素がありました.複数のテーマカードの混成デッキであったこともプレイング難易度を引き上げました.2か月間続いた幻影騎士団1強環境がまさかKCカップ目前に崩れました.
ガンドラの登場の影響は大きく,ここまで圧倒的パワーで他のデッキを潰し,ミラーばかりが意識されていた幻影騎士団もガンドラは無視できませんでした.魔法罠による妨害とモンスターの盤面解決力とリソース性能の高さを駆使して戦う幻影騎士団に対して,ガンドラはほぼフルモンスターのデッキ構成からリソースを貯め込みながらビートダウンを仕掛けつつガンドラの一撃必殺で勝負を終わらせる全く正反対のデッキコンセプトをしていました.ガンドラの自由度の高さからデッキタイプが複数存在しテンプレと言われる構築が存在しなかったことも追い風となりガンドラは一気に環境デッキにまで駆け上がりました.
幻影騎士団・ガンドラ環境は両方が正反対のデッキコンセプトをしていたため,一方を対策したデッキを組むと片方に全く勝てないデッキとなってしまい,2つのデッキはお互いの弱点を補完し合っていました.ガンドラは幻影騎士団1強環境を終わらせて環境に新しい空気を吹き込んでくれましたが,より一層パワーで劣る他のデッキが環境に入り込む余地を奪っていきました.幻影騎士団とガンドラの2強環境と言ってもいいのですが,前評判では幻影騎士団側の厚い妨害を踏み越えるのはガンドラには厳しいと見られており,幻影騎士団が環境トップを継続し環境次点という立ち位置にガンドラは収まると考えられていました

1.3 幻影騎士団,ガンドラ,DDDの三つ巴環境,そして月光の台頭

ガンドラの登場によって,幻影騎士団がただでさえきついデッキが多い中,ガンドラにも不利なデッキは完全に環境から退くだろうと多くのプレイヤーは予想していました.その中でも幻影騎士団にもしかしたら有利かもしれないと考えられていたDDDは一度評価を下げました.DDDはP召喚デッキであるため,Pスケールが維持することでリソースを蓄えて戦う性質上,Pスケールも巻き込んで盤面を更地に変えるガンドラデッキと相性は最悪と考えられていました.ガンドラモンスターがきついだけでなく,ワイトプリンセスをはじめとする手札誘発が中速ビートダウンデッキにぶっ刺さっており,特に上級Pモンスターで戦うDDDはワイトプリンセスの登場で強みである高打点をピンポイントで対策されるようになってしまいました.DDDもまさか幻影騎士団に有利と環境操作までして持ち上げられていたのに,KC直前に急に現れたデッキに不利というだけで評価を下げるとは思ってもいなかったでしょう.

しかし,DDDも黙っておらず,急激に構築を変化させて環境の変化に適応してきました.いくつか変化した点はありますが,一番大きかった変更点はDDD制覇王カイゼルの採用です.

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誰やねんこいつみたいなDDDカードですが,今一度効果を見直してみましょう.P召喚成功時に相手フィールドの表側のカードを無効にし,魔法罠カードをコストにしコストにした分攻撃回数を増やします.流石にゴミカード過ぎないか?と思った人もいるかもしれません.その通りです,このカードは普通に使ってもゴミカードです.効果全体無効は悪い効果ではありませんが,P召喚はスケールを揃える時点で2枚のカードを消費しており,追加攻撃には更にカードを要求されるため4,5枚のカードを消費してやっと効果が使えるので,とんでもないアド損をするゴミカードです.しかし,ここはリンクス,手厚いスキルの介護によりスケールは揃います.P召喚用の手札消費が抑えられたことで,連続攻撃でワンキルができる凶悪なカードへと変貌しました.
特に凶悪だったコンボがスキルのために採用するただの3000バニラと思われていたヘルアーマゲンドンとの組み合わせです.

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ヘルアーマゲンドンも当然ですがスキルによって自由にスケールに貼ることができます.ヘルアーマゲンドンのP効果はDDモンスターの打点を800上昇させるため,カイゼルと組み合わせることで3600の最大3回攻撃できる化け物が完成します.LP4000しかないリンクスでこんなことされたら流石に人は死にます.カイゼル自身がPモンスターではないことも強化ポイントであり,ヘルアーマゲドンのモンスター効果に破壊されたモンスターの分打点をアップする効果があり,この効果は墓地の打点を参照するため,墓地に行かないPモンスターでは使うことができませんでした.しかし,カイゼルの採用によりメインにPモンスター以外のモンスターが採用されたことによりほぼ全ての高打点モンスターは打点で突破できるようになりました.ワイトプリンセスが苦手だったはずのDDDデッキがワイトプリンセスの打点減少効果を更なる高打点で克服するという脳筋の最高到達点のような回答を見つけました.まさかカイゼルもゴミカードからスキルの手厚い介護により一線級のカードになる日が来るとは思ってもいなかったでしょう.しかし,環境にはスキルの手厚い介護を受けているガンドラもいます.お互い様です.
カイゼルを採用したことにより,統率DDは中速ビートダウンデッキから速攻から中期戦まで対応した超高火力かつ対応力の高いビートダウンデッキへと進化を遂げました.カードゲームにおいてゲーム展開を見て速攻と中低速ビートの戦術を使い分けられることはものすごいアドバンテージです.想像してほしいですが,もつれ込んだ中長期戦で相手のトップ解決で負けたことあると思います.その一方で,下振れたときに相手の上振れハンドを叩きつけられてそのまま負けた経験もあるはずです.トップ解決されて負けるくらいならその前に勝ってしまえばよく,前のめりに突っ込むと危険な対面ではゆっくりとリソース差を広げる中長期戦を使い分けるのがベストです.簡単に戦術を使い分けると書いても実際にそれを体現できるデッキが多数派ではありません.DDDはガンドラの登場により構築の変化を強いられた結果,中速ビートダウンデッキから速攻と中速を使い分けられるバランス型の強力なビートダウンデッキにチューンアップされ,デッキパワーはワンランクアップしました

幻影騎士団もガンドラの登場により,ミラーを意識した構築からガンドラも意識した構築も現れました.いくつか変化した点はありますが,一番大きかったのはEXにインヴェルズローチが採用されたことです.

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ガンドラの特殊召喚を1枚で完全に封じることが可能なカードです.ミラーを意識してバック干渉札を多く採用していた幻影騎士団でしたが,ほぼフルモンスターのガンドラにバック干渉札が腐るため,モンスターの展開を妨害することを意識した構築も使われ始めました.インヴェルズローチを採用する代わりにEXからは氷獄龍トリシューラが抜けました.

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トリシューラは効果は全く使いませんが,幻影騎士団対策の月の書や底なしの落とし穴による盤面ロックを突破するために採用されていましたが,ガンドラには月の書などのカードは採用されていないため,対面ガンドラに対しては不要札であり採用率を下げました.
しかし,幻影騎士団がガンドラを意識した構築に変化はしましたが,相変わらず幻影騎士団が環境トップシェアであることは変わらず,バック干渉札がないときついゲーム展開を強いられるDDDも存在するため,ガンドラ対策に特化した構築の幻影騎士団が多数派構築になることはなく,幻影騎士団はガンドラを意識して構築が多様化する結果になりました

ここまでが,KCカップ直前までの環境の変化です.幻影騎士団,ガンドラ,DDDの3強が誰が世界一の座を取るか争っていました.KC直前までの評価は,幻影騎士団は以前ほど圧倒的1強という評価からは下げましたが,それでもデッキパワーと対応力の高さから最も評価が高くガンドラは構築が定まってないこともあり未知数な点が多く幻影騎士団よりは低い評価をされており,DDDは幻影騎士とガンドラの両方にそれなりに勝てるという評価をされていました.
KCカップも3強が争う環境に予想されていました.実際はあと2つのデッキがこの環境に食い込んできますが,それについては後述します.

ここまでかなり長く概ねのKC直前までの環境変化を説明しました.
ここからやっと記事タイトルの月光についてです.
月光は,3月までの幻影騎士団1強環境から幻影騎士団にそこそこ勝てるデッキという評価がされており,環境デッキとまでは行きませんが,それなりに使われていました.自分も2月のKCカップは月光使って銀アイコンを取っています.詳しい解説を下の記事に書いています.

月光はサーベルダンサーの高打点かつ対象を取る効果耐性が,対象を取る除去に頼っている幻影騎士団の対策になっていると見られていました.

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しかし,実際にはサーベルダンサーを打点で上から幻影騎士団は抜いてくる上に,そもそも安定感が全く違うため,不安定な初動率でサーベルダンサーを立てた上で,幻影騎士団の厚い妨害を踏み越えながら追加の融合召喚を通してビートダウンすることが要求されました.月光は幻影騎士団に有利と思われてましたが,実際には幻影騎士団側がプレイングの最適解を取ると幻影騎士団のほうが有利です.ただ全く幻影騎士団が無理というわけでもないので,それなりに幻影騎士団1強環境でも月光使用者はいました.

しかし,ガンドラの登場によって月光の一般的な評価は一気に下がりました.高打点と対象取る効果耐性が強みの月光に対して,ガンドラは対象を取らない除去効果と月光を遥かに凌駕する高打点で上から潰してきます.さらに,月光は戦闘に特化したテーマであるため,ガンドラの手札誘発が刺さります.あまりにも相性の悪いガンドラの登場により,月光は完全に環境外に叩き落され,今回のKCカップは厳しいと考えられていました...のはずでした

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上の画像は対面ガンドラのときによくやる先攻展開です.通常はエメラルドバードとイエローマーテンで月光融合サーチしてから融合召喚しますが,イエローマーテン守備表示のままターンを返します.元々はガンドラに対して融合召喚してもガンドラに除去されてしまうので,それなら融合しないままターン返して手札誘発込みで耐えるつもりでしたが,想定外にガンドラが守備表示イエローマーテンが突破できないことに気づきました.実は守備表示イエローマーテンは月光融合を意識するとガンドラ側にとって少々厄介な盤面です.

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月光融合はEXから召喚したモンスターが存在する場合デッキ融合されるため,なるべくEXからはモンスターを出したくはありません.しかし,ガンドラの基本はガジェットビートです.ガジェットのステータスでは守備表示イエローマーテンを突破できないのでEXのエクシーズモンスターを使うかガンドラを着地させるしかありません.エクシーズ召喚を避けてガンドラを着地させれば一応守備表示イエローマーテンを突破できますが,早い段階でギガレイズを着地させても除外枚数が稼げないためワンキルには届かず,ガンドラの強みである「リソース」を十分に活かせません.それなら一旦イエローマーテンを処理するのは諦めてリソースを伸ばすと壁モンスターだけ展開してターンを返す展開を取った場合,残ったイエローマーテンを使って融合やエクシーズに繋げることができます.
ここから,月光の対面ガンドラの勝ち筋が見えてきました.付け入る隙は2つあります1つ目はガンドラの立ち上がりの遅さを狙ったリソースを貯め込むタイミング2つ目はフィニッシュの段階でリソースを吐き出すタイミングです.1つ目のリソースを貯め込むタイミングは,前述のように守備表示イエローマーテンや月光融合を相手が意識すると展開が鈍るのでそこを攻めます.守備表示イエローマーテンができなくても最悪モンスター1体+手札誘発で耐えられます.2つ目のリソースを吐き出すタイミングは,ガンドラはスキルの介護があるとは言え召喚コストは重く,フィニッシュのタイミングではリソースを捨てて攻めてきます.フィニッシュを手札誘発や防御系スキルで耐えさえすれば返しで盤面を崩して勝てます.フィニッシュはガンドラの効果でお互いの盤面は更地になるので月光側も手札にリソースを抱えておく必要はありますが,ガンドラ側も盤面が空になるため多面展開で手札誘発をケアした上でのワンキルは難しいです.手札にリソースを抱える条件はあえて先攻では融合しないプレイングが自然にクリアしてくれます.
これで月光側の作戦は決まりました.ガンドラと真っ向勝負しても相性的に勝てません.そこで真っ向勝負は避けて,ガンドラ側の立ち上がりの遅さとフィニッシュにカウンターを当てることだけに勝ち筋を絞りました.まさかガンドラも環境から消えたと思われていた月光に弱点とも言えない所を弱点認定されて攻めてこられるとは思ってもなかったでしょう.「勝負から逃げるな卑怯者!!」とガンドラの声が聞こえてきそうです.鬼殺隊だったらここで真っ向勝負を挑むかもしれませんが,残念ながらそこはKCカップ.心を鬼にしているプレイヤーしかいないので卑怯と言われようが勝つためなら真っ向勝負から逃げます.

不利と思われていたガンドラに勝ち筋を見つけました.勝ち筋が見つかればそれに合わせてデッキ構築とプレイングを見直します.フィニッシュに対してカウンターを当てる勝ち筋については,お互いにリソースを吐き合って最後の勝負をするので手札誘発はある程度割り切ります.リソースを抱えることを意識してプレイングすれば,あとは防御札と防御スキルで耐えることだけ考えればクリアできます.あえて何もしないというプレイングがその分をリソースに変換できるためリソースを抱えることは達成できます.何もしないこともプレイングだと言うことは月光に限らず大事なプレイングです.これらのアイディアを基に完成した構築が次の画像の構築です.

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LP増強αによって初期ライフが5000になるので,ガンドラのフィニッシャーであるフランケンの攻撃をスキルで耐えられます.

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DDクロウは月光に採用される手札誘発としてはあまり採用されませんが,スキルを防御札として使える分相手の展開を妨害できる手札誘発を採用できるので,ガンドラの墓地のガンドラの種類を削りながら幻影騎士団の対策にもなるDDクロウを採用しました.LP増強αがあまりKCカップで使われないスキルなのでふざけた構築に見えますが,KCカップ2日目までは実際に使っており,本当にこの構築が強いと思っていました.いくつかこの構築には問題があったのですが,それについては後述します.

フィニッシュを攻める勝ち筋についてはプランが固まりました.残るは立ち上がりを攻める勝ち筋についてですが,ここが一番難しかったです.ガンドラは立ち上がりが比較的遅いですがリソースは潤沢に蓄えてきた上で手札誘発による防御も堅いです.フィニッシュのリソースを吐き出すタイミングと異なり手札誘発の存在は無視できません.手札誘発を踏み越えてワンキルすることが必須です.月光は手札誘発を踏み越えてワンキルを取りに行くのは特別得意なデッキではありません.
まずはガンドラに採用されている手札誘発の採用候補を大会結果などから探りました.その結果,ワイトプリンセス,クリボール,カイトロイド,DDクロウ,スカルマイスターが採用率が高いことが分かりました.基本的に月光はこれらの手札誘発が刺さるタイミングがあるので苦手意識はあります.しかし,この中でDDクロウとスカルマイスターは展開を妨害する手札誘発であるため,長丁場のやり取りをする場合は無視できませんが,対面ガンドラは立ち上がりのタイミングでワンキルのワンキル狙いなのである程度割り切りができます.採用率も他の手札誘発と比較すると高いわけではないので割り切っていいと考えました.
対策はワンキルを妨害してくるワイトプリンセス,クリボール,カイトロイドに絞りました.この中でカイトロイドに関しては直接攻撃のみを止める手札誘発なので,キャットダンサーによる壁モンスターを殴ってワンキルを取りに行く月光では無視できます仮に相手がノーガードでターンを返してカイトロイドで耐えるプランを取ってきたとしても,この場合は前述のフィニッシュタイミングのカウンター狙いに切り替えるのでカイトロイドが勝敗に関わることはありません
これで対策必須の手札誘発は,クリボールとワイトプリンセスの2つまで絞れました.ここでもう1度注目したのが,クリボールとワイトプリンセスの採用率どちらが高いのかです.KCカップ開始以前は,ガンドラの構築が固まっておらず,カオス軸ガンドラが光属性を供給したい関係からワイトプリンセスのほうが採用率は高かったです
ワイトプリンセスにまで対策を絞ったわけですが,ワイトプリンセスはかなり厄介でした.元々発売した瞬間に月光にワイトプリンセスを採用してポイバで勝ちましたが,月光とワイトプリンセスの互いのシナジーは微妙です.月光の融合モンスターは高打点かつ高レベルモンスターである以上ワイトプリンセスはワイトプリンセスの影響をもろに受けます.ワイトプリンセスと月光が直接シナジーしていたわけではなく,実際はライフトリガースキルとワイトプリンセスの相性の良さが仲介することでシナジーを生んでいました.手札に融合が揃わずに耐える試合展開や手札にワンキルパーツが揃っており一気に攻めれる場合は月光のワイトプリンセスは強力ですが,融合体を構えて中長期戦をする場合は融合体を守る試合展開ではワイトプリンセスは使いにくさが目立ちます.シナジーが微妙なカードを自分ではなく相手に使われるわけですから,それは刺さります.いくつか札でワイトプリンセスを対策する方法は考えましたが,有力候補に挙がったのは天岩戸です.

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天岩戸はガンドラの手札誘発全てを1枚で対策できるカードとして,ガンドラと相性最悪な魔界劇団などのデッキが採用していました.ガンドラもミラーが手札誘発で耐えて相手のリソースを吐かせたほうが勝ちという苦しいゲーム展開から逃げるために採用してる構築もありました.ガンドラ戦は天岩戸を引けば勝てる,天岩戸を1回でも多く引いたほうが勝ちというKCカップになりかけていました.しかし,天岩戸は多くのプレイヤーが採用候補に挙げただけで最後は抜けていきました.召喚権を必ず消費し,サーチ手段が乏しいことから採用できるデッキが少なく,引いた方が勝つというゲーム性があまりにも不毛でした.月光の天岩戸も例外ではなく,月光は融合デッキですが,召喚権を融合素材集めや相手の盤面解決に消費するため,天岩戸に召喚権を割く余裕がありませんでした手札消費の激しい融合デッキにおいて,特定の場面でしか役に立たない不純物カードを採用しにくい点も天岩戸の採用を難しくしました
札単位でワイントプリンセスを対策する方法は結局思いつかなかったのでプレイングに回答を求めました.ここでヒントになったのは幻影騎士団です.幻影騎士団はランク3を軸にしたテーマであるため,ワイトプリンセスがほとんど刺さりません.更に打点補助カードが豊富に積まれているため,低ランクモンスターを高打点することでワイトプリンセスを貫通してワンキルできました.幻影騎士団からヒントを得てダークリベリオンエクシーズドラゴンが採用候補に挙がりました.

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ダリベは現環境最強のランク4モンスターです.ガンドラがライフコスト払い,DDDが契約書カードの効果でライフを失うため,ダリベのワンパンを通せばゲームが終わります.ガンドラ戦ではワイトプリンセスを貫通できるだけでなく,フィニッシュに対するカウンターでダリベを通せば勝ちなので,2つの勝ち筋を太くする強力なカードに見えました.ただ,フィニッシュに対するカウンター時はガンドラによって墓地リソースは失っているのでランク4を立てに行くのは困難であり,仮にランク4が立てれてもソウコでガンドラを無効にして殴ればワンキルは成立するので,ダリベとソウコの役割が被っていました

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実はソウコは幻影騎士団1強環境のときは評価を下げていたカードですが,幻影騎士団,ガンドラ,DDDの3つ巴環境以降は必須カードにまで評価を上げました.これについては後述します.
ダリベがワイトプリンセス対策採用候補から外れたことで,また白紙になりましたが,幻影騎士団の打点補助札によるワイトプリンセスの貫通方法にもう1度着想を得ます.

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ラギッドグローブは打点を1000アップする効果は,月光のサーベルダンサーを何度も上から抜いてきて何度も泣かされましたが,ワイトプリンセス貫通にはワイトプリンセスの打点減少分打点を上げてしまえば貫通できることを気づかせてくれました.都合よく月光にも打点上昇札が存在しました.

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パープルバタフライは,幻影騎士団1強環境を境にずっと評価を上げ続けていたカードです.幻影騎士団対策に底なしの落とし穴が流行ったため,融合する前に相手のバックを剥し切る必要があり,白兎を1ターンに複数回展開できるパープルバタフライは必須カードになりました.

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パープルバタフライで打点を上げて殴ればワイトプリンセスを貫通できることにやっと気づきました.パープルバタフライ1枚のみでは,ワイトプリンセスを貫通するのは難しいですが,パープルバタフライを複数回発動したり,パープルバタフライで多面展開すればクリボールも対策しつつワンキル打点を生成できます.パープルバタフライ複数回発動は難しそうに見えますが,イエローマーテンや白兎で回収することで複数回発動は割と簡単に達成できます.更にパープルバタフライのワンキルを強力に補助したカードがフォトンバタフライアサシンです.

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フォトンバタフライアサシンも幻影騎士団1強環境以降,パープルバタフライと一緒に評価を爆発的に上げていたカードです底なしの落とし穴に埋められた自分のモンスターを起こすことができるため,元々ワンキル補助カード札でしかなかったフォトンバタフライアサシンが月光の対応力を引き上げていました.
対面ガンドラのフォトンバタフライアサシンは強力で,月光を意識して守備表示で壁モンスターを用意してきますが,壁モンスターを起こしてワンキルを狙えます.ガンドラは基本的にガジェットビートであるため,打点が貧弱なガジェットに対してフォトンバタフライアサシンの打点600ダウンが刺さります.紅が絡まなくても手札次第ではフォトンバタフライアサシンの打点ダウンだけでもワンキルが狙えます.守備イエローマーテンを処理せずにガンドラがターンを返してきたら,場に残ったイエローマーテンを素材にフォトンバタフライアサシンを作りそのままワンキルを狙えます.ガンドラが守備表示イエローマーテンをきれいに処理できないことが,フォトンバタフライアサシンのパワーを引き上げました.

幻影騎士団とガンドラの全く正反対のデッキタイプが両方をメタったデッキの登場を抑えつけていた環境でしたが,ここに来て幻影騎士団環境で評価を上げられたパープルバタフライとフォトンバタフライアサシンが,ガンドラの手札誘発を貫通できる新たな強みが見つかったことで,ガンドラに不利と思われていた月光が幻影騎士団とガンドラの両方の対面を見ることができるデッキに評価が変わりました.しかし,勘違いしてはいけないのが,ガンドラに抗える勝ち筋が見つかっただけで,不利対面であることには変わりありません.全てのデッキに有利なデッキを作れるのがベストであり,それができれば世界1位です.ベストな手段ではありませんが,全てのデッキに大きく負け越さないようにして,どこかで上振れて勝ち越せば世界1位運任せですがDPは伸びます.上振れお祈り狙いの場合,試行回数は稼がないといけないので対戦数は増えます.月光は幻影騎士団とガンドラの両方に抗えるだけで圧倒的な勝率を叩き出せるわけではないことは分かっていたので,大きく負け越さないように抗える手段だけ用意して,試行回数で勝負することを決めていました

ここまでが対面ガンドラに対して月光が準備していたプランです.ガンドラのおかげで月光は消えたと思われていたのでミラーが少ないだろうと読んだ上でガンドラに対抗できる策を用意していました
...となるはずでしたが,KCカップ本当に直前の3日前に事件が起き,ここからガンドラは全く別デッキに進化し,ここまでの話を全て無にしますが,これについては後述します.

ガンドラへの対抗策はできました.あとはDDDと幻影騎士団さえ対策できれば月光で十分今回のKCカップは戦えるはずです.幻影騎士団対策は前環境からの引継ぎになるので特別に用意しておかなくてもよかったですが,ガンドラの台頭によって幻影騎士団の構築が変化したことが,予想外に月光の追い風になりました
一番大きかった影響は,ナイトメアシャークが幻影騎士団から完全に抜けたことです.

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ナイトメアシャークは月光の耐性と高打点を無視して,ライフ4000のリンクスでは2回攻撃が通れば勝ちです.ナイトメアシャークを霧剣や幻影剣で守って2回攻撃を通してくる幻影騎士団がガンドラ以前は少数派ながら存在したため,紅の墓地効果によるライフ回復をイエローマーテンやパープルバタフライで故意に使って無理やり対策していました.しかし,ガンドラの登場により,手札誘発でナイトメアシャークを簡単に対策できてしまい,ガンドラの効果がまともに通れば幻影騎士団も負けてしまうため,幻影騎士団側もガンドラ対策を無視できなかったことによりナイトメアシャークを採用してる構築は完全に消えました.ガンドラのおかげで月光が悩んでいたナイトメアシャークが環境から消えてくれました.
さらに予想外の追い風が,幻影騎士団がガンドラを意識してEXからトリシューラを抜いてローチを積んだ構築が現れたことです.ローチが融合デッキの月光に刺さらないのもありますが,トリシューラが抜けたおかげで幻影騎士団が意識せずに適当に展開してしまい盤面を埋めてしまうと,追加の展開ができなくなるところに注目しました.この微妙な構築の変化に注目して新たな月光のプレイングを思いつきました.

上の動画は何をしてるのかよく分からないと思うので解説します.
元々幻影騎士団に対して月光がデッキアウトを狙うプランは存在しました.サーベルダンサーの耐性を幻影騎士団は打点でしか突破できないので,サーベルダンサーの打点を上げ切るか手札誘発で守り切ればデッキアウトが狙えます.しかし,サーベルダンサーを守り切るのは実はかなり難しく,サーベルダンサーの打点を軽々上から幻影騎士団は越えてくるのでかなりの要求値が求められます.このサーベルダンサーを守り切れない問題に対して月光側は回答を見つけました.それが紅狐による幻影騎士団の打点キャンセルです.

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幻影騎士団はラギッドグローブの打点上昇で高打点エクシーズを作りサーベルダンサーを越えてきますが,紅狐の効果で打点が0になったエクシーズモンスターの打点上昇はキャンセルされ元の打点に戻ります.これを利用してサーベルダンサーを突破しようと相手が前のめりに展開してきた返しに紅狐の効果で打点キャンセルさせると,打点で越えられず突破手段がなくなり,あとは幻影騎士団の圧倒的デッキ圧縮速度で何もしなくてもデッキアウト勝ちできます.本来はサーベルダンサーの高打点と耐性の両方があるからこそ成立したプランです.
幻影騎士団の構築からガンドラを意識してトリシューラが抜けたことで,相手に展開させた後追加の展開が難しくなったということは,サーベルダンサーでロックしなくてもキャットダンサーに紅狐で耐性をつけてもロックできるのでは?と思いつきました

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このアイディアから完成したのが上の動画のキャットダンサーロックによるデッキアウトプランです.キャットダンサーは対象を取る効果耐性を失った代わりに戦闘破壊耐性があるので,サーベルダンサーとは異なり打点で抜かれる心配はありません.ブレイクソードやデッドリーシンに除去されてしまいますが,展開をさせて盤面を埋めてもらい追加の展開ができない状況で出してあげれば狡猾の落とし穴かエネミーコントローラーくらいでしか処理できなくなります.狡猾とエネコンはリミットの関係上合計2枚しか採用できないので紅狐2枚で耐性2回分つけてしまえば幻影騎士団は突破手段を失います.キャットダンサーロックは除去が乏しい月光ミラーでよく発生する展開ですが,除去に優れた幻影騎士団に予想外に応用ができました.幻影騎士団も,まさかガンドラと争ってるのに意識外から月光とか言う環境落ちデッキに殴られるなんて予想もしてなかったでしょう.当然ですが,このキャットダンサーロックプランはトリシューラ採用したガンドラ台頭以前の幻影騎士団にはあまり有効なプランではありません.キャットダンサーロックはあくまでも勝ち筋が増えただけです.トリシューラ採用型の幻影騎士団の勝率はそのままで,新たに生まれた一部の幻影騎士団に対して有利になるプランを用意することでトータルの勝率を上げることを狙いました

これで苦手なガンドラに勝ち筋を作りながら,予想外にも幻影騎士団の勝率を改善した月光が完成しました.あとは残る3強のうちDDDに勝ち越せれば月光で上位を十分狙えます.次はDDDの対策を...とはなりませんでした.というのもDDDの個人的評価が低かったためKCカップ前は特別意識してませんでした.幻影騎士団にもガンドラにもそれなりに戦えるだろうなとは評価していたので,数はそれなりにいても環境3番手だろうと見てました.実際はこの3強に相性差はあってもパワー差はないことにKC始まってから気づきますが,これは後述します.月光が特別DDDに苦手意識がなかったこともあり,DDクロウ入りの月光で幻影騎士団とガンドラを厚く見ながらDDDはそのついでに勝ち星を拾えるだろうと考えていました.

月光で幻影騎士団,ガンドラ,DDDに勝ち越せるビジョンが固まったので月光で金アイコンを本気で狙いに行くつもりでした.KC事前準備もやり尽くしたのであとはKCカップが始まるのを待つだけです.
しかし,KC直前の3日前に大事件が起きます.

KCカップ直前に開かれた大会G1Xにて,これまで長ったらしく書いてきた環境考察を全てなかったことにする新型ガンドラが優勝しました.一見既存のガンドラの構築とほとんど変わらないように見えますがたった1枚のカードが世界を変えました.それがカラクリ参謀ニシパチです.

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ニシパチ採用型ガンドラが世に出た瞬間でした.おそらくですが,ニシパチ採用型ガンドラがG1Xで優勝した瞬間に,ニシパチのやばさに気づいたプレイヤーはガンドラと月光使いのうち僅かな人数しかいなかったと思います.

ニシパチ型採用ガンドラの登場によって,これまでいくつか型があったガンドラの構築全てにおいて上位互換構築が見つかりました.ニシパチ型ガンドラが環境に及ぼした影響については配信者さんが詳細に解説しているのでそちらを参考にしてください.

月光視点で見たときニシパチ型ガンドラの登場は,ここまでガンドラに対して見つけてきた付け入る隙を潰しにきていたため,絶望的でした
まずニシパチそのものが表示形式変更効果を持っています.ガンドラに対しては守備表示イエローマーテンを壁にしながらリソースを蓄えて立ち上がりを攻める勝ち筋を練っていました.これは守備表示イエローマーテンをガンドラ側がきれいに処理する方法がないことが前提になっています.しかし,イエローマーテンの表示形式を変更してガジェットの貧弱な打点でもイエローマーテンを処理できるニシパチが登場しました月光視点ニシパチでイエローマーテンを攻撃表示にして安全処理されるだけでもまあまあきついです.イエローマーテンがきれいに処理できない前提条件が崩れました.
そして本当に月光を絶望させたのは,ニシパチの採用によりオッドアイズメテオバーストドラゴンがガンドラに加わったことです.

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ガンドラミラーはお互いに手札誘発を抱え込んだ状態でリソースを伸ばしながら中長期戦をするのが,ニシパチ以前の常識でした.そこにニシパチ採用型ガンドラの登場によりサーチが効く手札誘発封殺ギミックをガンドラが手に入れてしまいました.ニシパチ採用型と不採用型が対戦したら必ずニシパチ採用型のほうが勝ち越します.ニシパチ採用型の登場は,これまでいろいろな型があることで採用札を読まれなくしていたガンドラの強みをなくしはしましたが,あまりにも全ての型の上位互換だったため,これ以外の構築はありえないことが分かりました.
月光視点,メテオバーストの採用は絶望的で,これまで練ってきた立ち上がりの遅さを狙ったワンキルプランとフィニッシュタイミングにカウンターを狙うプランの2つのうち,フィニッシュにカウンターを当てるプランは不可能になったことを意味していました.フィニッシュのタイミングに手札誘発を封殺するメテオバーストが確実にワンキルしてくるため,LP増強αのような防御系スキルを使っても耐えることはできません.
ニシパチ採用型のよって月光対ガンドラは月光側が序盤にワンキルパーツを揃えてワンキルするか,ガンドラが手札誘発を何枚引くかだけのほぼ初手の見せ合いで終わるゲームになってしまいました

まさかKC開始3日前にこれまで積み上げられてきた環境が全て無に帰す大事件が起きたことで,月光でKCカップ3日間を走りきるには不安材料が残りました.もう準備期間はほとんど残っていないので,ここから構築やプランの大幅な変更はできません.そこで,僅かな可能性に賭けてKCカップ3日間を走り方で乗り切ること道を探しました
ニシパチ採用型のガンドラはまだ強さを全プレイヤーが認知しているわけではありません.おそらくKCカップ3日目までには全プレイヤーがニシパチ採用型ガンドラに気づくはずです.そこからは3強環境の均衡が崩れ雑多な環境になると予想されます.ニシパチ採用型ガンドラが認知され雑多環境から再び環境が固まる環境移行期間までが月光の消費期限と考えました.そこで初日から2日目までの序盤から中盤戦までに一気にDPを盛って逃げ切る作戦を立てました.

以上が,かなり長くなりましたが,KCカップ前の環境把握から事前準備の全てです.不安材料は残りましたが,やれることはやりました.あとは結果がついてくることを祈るだけです.

2. KC開幕(初日,ガンドラの進撃から没落)

KCカップが遂に始まりました.事前準備の段階から月光で序盤にDPを盛って逃げ切る作戦は立てているので開始直後から月光を握りました.

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改めて画像を貼りますが,初日は手札誘発の枠はDDクロウに固定してLP増強α月光を使っていました
KCカップ開始直後すぐに異変に気付きました.DPが全く伸びません.KCカップはお互いのDPを賭けたレート戦です.基本は勝って+1000DP,負けて-1000DPが増減し,格上に勝つと1000以上の貰え,格下に負けるとその分多くのDPを失います.最初の手持ちDPは全員0DPの賭け合うDPを持ってない状態からスタートするので,奪い合うDPを発生させるために,最初の1万DP以下では,勝ったときは1000以上の高いDPが貰え,負けてもDPがほとんど減らないようになっています.しかし,今回のKCは1万DP以下で勝っても+1000DPしか貰えませんでした.大会参加者が減少したため発生する全体DPが大幅に減少した,もしくはDPの増減方式が変わったと予想されますが,真相は分かりません.何か想定外の異常事態が起きていることはすぐに察したので,今回のKCは少ない全体のDPを奪い合う形になり,全体のボーダーが下がることが予想できました.ボーダーが下がれば,3日間フルで走ってDPを稼ぐ必要はなくなりましたが,序盤にDPを盛って逃げ切る作戦はいきなり破綻しました.ボーダーが下がりプレイヤー間のDP差が縮まると格上に勝って多くのDPを奪い一気にDPを盛れるタイミングを失うからです.DPを盛るためには,試行回数を稼いで上振れたタイミングで一気にDPを盛るか,環境を見ながらタイミングよくDPを盛るか2つの走り方から選ぶ必要がありました.そこで月光が環境デッキと認識されてないアドバンテージを活かしつつ,イージーウィンもある月光なら試行回数を稼げるので試行回数で攻めることにしました
序盤は事前準備通り3強を倒してDPを盛りました...となるはずでしたが事前予想とは環境が違いました.一番大きかった事前予想との違いは,幻影騎士団がほとんどいなかったことです.初日多かったデッキはガンドラです.幻影騎士団を意識して準備してきていたのに幻影騎士団をほとんど見ないせいか,数はガンドラが多いですかいろいろなデッキと対戦するかなり雑多な環境をしていました.雑多な環境で幻影騎士団が減る傾向は事前準備で参加していたポイバから見られた傾向です.いくつか理由は考えられますが,速度が速いデッキで下位DP帯から早く抜け出そうとする序盤の戦いで1戦が時間かかる幻影騎士団がDPを伸ばせない,高いプレイング要求値を求められる幻影騎士団を雑多な環境で全対面を意識して回し切れるプレイヤーが多くはないと考えられます.
予想外に幻影騎士団が少ないスタートでしたが,ガンドラと幻影騎士団を意識して調整してきたのに無駄になった...とはならず,やたらDDクロウ入り月光が雑多環境に刺さりDPは伸ばせました.想定してなかったハーピィ,ネクロス,バスブレ,TG,呪眼にDDクロウに刺さりまくってました.特にバスブレに刺さったことがよく,バスブレを月光は苦手ですが苦手対面に強く出られたのがよかったです.

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初日からDPを伸ばせたおかげで瞬間順位でトップ10にランクインできました.初日とはいえ今まで何度もKCを走ってきてトップ10にランクインできたことは1度もなかったので,今回のKCカップが楽しくなっていました.初日は10~30位あたりをキープして上位集団についていってました.

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順位が上に行くほど雑多環境は終わり,ガンドラとの連戦が続いてました.幻影騎士団が少ない環境では,次にデッキパワーの高いガンドラが増えるのは自然な流れです.事前準備で警戒していたニシパチ採用型のガンドラではなく,カオス軸やニシパチを採用してない無限起動型ガンドラしかいなかったので,事前に用意した対ガンドラのプランでガンドラから勝ち星を拾ってました.

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ガンドラからDPを吸い上げつつ,初日から150戦もこなす速度と試行回数のごり押しで上位帯の住人に仲間入りできました.キャラが闇遊戯なのはディスドロに見せかけてLP増強αです.深夜帯は疲れているプレイヤーが多く闇遊戯をディスドロだと勘違いして勝手に自滅していくプレイヤーもちらほらいました.紅狐のLP回復が月光にはあるせいで疲れていたら増強αを見逃すようです.対戦相手が疲れているのを逆手に取る卑怯な手も使ってDPを稼いでいましたが,心を鬼にしているプレイヤーしかいないKCではこれも戦略です.

上のランキングのスクショから見て気づくかもしれませんが,幻影騎士団,ガンドラ,DDDと事前予想通りのデッキもいますが,事前予想では全く想定されていなかったデッキが急に現れました.今回のKCカップ一番の勝ち組デッキメタルフォーゼです.

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メタルフォーゼ自体は3月1日に主要パーツのバニラメタル,ミスリエル,アルカエスト,オリハルク,錬装融合が既に実装済みでしたが,3月終わりに召喚師のスキル,ガンドラと同時期に重錬装融合が追加実装されていました.重錬装融合実装前のメタルは愛好家をたまに見かける程度でファンデッキでした.先攻で融合してアルカエスト立てるくらいしかやることなく月の書1枚で壊滅する盤面です.重錬装融合が実装されたことで月の書への耐性ができたので強くはなるだろうなと思ってはいましたが,まさかここに来てKCカップ上位帯で急に暴れ始めました.
メタルフォーゼが急に暴れ始めた理由を探りました.メタルフォーゼを使っているプレイヤーをツイッターや配信を探してデッキリストと何が強いのかを調べました.その結果,圧倒的安定感と対面ガンドラに対する高勝率だということが分かりました.ガンドラ視点,ガンドラの召喚コストをオリハルクやミスリエルで削られ,手札誘発を貫通してくるワンキルがお手上げだったようです.
今回上位帯で流行したメタルフォーゼはメタルフォーゼ融合モンスターを駆使して戦う【純メタルフォーゼ】です.

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メタルフォーゼはバニラPのP効果がコピペ共通効果テーマなので基本的にステータスとカードパワーが比例します.一番ステータスが高いヴォルフレイムが召喚師のスキルの追加で強化され,重錬装融合によりワンキルと妨害が安定して作れるようになったデッキが弱いわけありませんでした.しかし,メタルフォーゼは明らかにパワーは高いのにKCカップ開始まで環境デッキと認識されていませんでした.環境が噛み合って急に強くなったデッキの前例はありますが,元々強かったデッキが環境デッキと認識されていなかった前例はセプスロくらいしかなかった気がします.メタルフォーゼが環境デッキとして認識されていなかった理由はいくつか考えられますが,展開ルートが複雑なため展開ルートの開拓が遅れたこと,先入観から純メタルフォーゼがそもそも強いとは思っていなかったプレイヤーが多かったからと考えています.純メタルフォーゼが環境入りしたことは,OCG含めて初めてのことで,メタルフォーゼ=混ぜ物デッキという先入観が自分はありました.純メタルフォーゼだけでどこまでのパワーがあるのか正しく理解できていたプレイヤーは,実際に純メタルフォーゼを組んで回したプレイヤーしかいなかったと思います.

ガンドラでスタートダッシュを決めたプレイヤーが多かった中,初日からいきなり環境が変わる事件が起きました.メタルフォーゼの登場で3強のパワーバランスが揺らぎましたが,それ以上に環境の立ち位置が大きく変わったのはなんと月光でした.実は事前準備の段階で参加したポイバで今回メタルフォーゼで銀アイコンを取ったプレイヤーと調整していました.その結果,月光はサーベルダンサーを立てればメタルフォーゼは耐性と高打点を超える手段がないことを事前に知ることができました.メタルフォーゼに月光が勝てるだけでなく,メタルフォーゼの登場でガンドラの環境の立ち位置が悪くなったおかげでニシパチ採用型ガンドラが広まる以前にガンドラが環境上位から退くという予想外の展開が起きました.

3. KC2日目(メタルフォーゼの進撃,DDDの増加,同業者の出現)

KC2日目は初日のガンドラ祭りを終わらせたメタルフォーゼの進撃が続いてました.ランキングのトップ10のうち4人がメタルフォーゼ,その下にもメタルフォーゼを使ってるプレイヤーがいたのでマッチングの4割くらいはメタルフォーゼでした.初日にランキングに浮上してからも10~30位をキープして上位グループについて行ってました.
ここで,また環境が変化しました.DDDの増加です.ガンドラがメタルフォーゼに狩られたことにより,ガンドラに不利と思われていたDDDが増えたようです.DDDは事前準備の段階で,月光でそこまで不利ではないと考えていました.しかし,対戦数を重ねるとそこまで勝率が出ませんでした.月光はDDDに特別苦手意識はない割に勝率が出せず,その理由が分からなかったです.おそらく今回のKCカップで月光握ったプレイヤーに共通してると思いますが,月光は対面幻影騎士団,ガンドラ,DDDの中で一番勝率が低かったのはDDDのはずです.
DDDとのマッチングが増えましたが,大きく負け越すことはなくても,その一方で勝ち越しもしないので,ここに来てDPを伸び悩みました.DDDに対して無策で突っ込んでもDPが伸びないので,試行錯誤してDDDに勝ち越せる構築とプレイングを探りました.ガンドラが減少しているのでDDクロウが刺さる対面が幻影騎士団くらいしかいないのでDDクロウをクリボールと入れ替えました.スキルのLP増強αがDDDに意味がないので変えたいですが,特に他のスキルのアイディアもなかったのでスキルは変えずに走ってました.クリボールを入れたことで腐り札が抜けたので流石に勝率は改善しましたが,それでも大きく勝ち越すはなかったです.

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それでもなんとかDP伸ばして4万DPに乗りました.
月光は戦闘で攻める関係上ゼロマクスウェルの戦闘ダメージ0になる効果が刺さります.

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上位に行くほどDDDは月光だと分かったら月光融合を警戒してEXからはP召喚せずにゼロマクスウェルを軸に攻めてきます.ただこれは全くきつくないわけではないですが,DDD側も契約書のセルフダメージのデメリットのせいでどこかで攻めてくるので攻め急がなければ月光側もチャンスがあります.カイゼルの手札誘発貫通してワンキルはきつかったですが,他のDDDのギミックにあまり苦手意識がなかったせいで,勝ち越せない理由が分からずDPが伸び悩みました.

これは今回のKC通して言えることですが,ガンドラとDDDが共通してライフコストとセルフダメージのせいで,ダメージを2000捻じ込まれるとライフトリガースキルの恩恵もないので痛手にしかならず,2000ダメージを通すことが重要な環境だったと思います.2000ダメージを捻じ込むことが重要だったこともあり,ダリベを一番強く使える幻影騎士団が最終的には勝ち切り,2000ダメージを与えることに関しては得意な月光が環境と噛み合ってたと考えられます.

DDDと勝ったり負けたりを繰り返して徐々にDPを伸ばしていましたが,ここでまた緊急事態が起きました.実は月光がメタルフォーゼに特別有利ではなかったことに気づいたことです.上位帯でメタルフォーゼと対戦数を重ねて,サーベルダンサーを出したら即サレンダーしてもらいイージーウィンできても,サーベルダンサーを初手で出せないと逆にほぼ負けが確定していました.

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ミスリエルが月光視点本当にきつかったです.メタルフォーゼで一番強い融合モンスターはミスリエルです.ミスリエルを絡めた展開が複雑で見たこともないいろいろなパターンでワンキルされて勉強にはなりました.ミスリエルの展開を妨害なしで眺めると,最終的には除去+貫通+5回攻撃が飛んできます.こんなことされて耐えられる手札誘発どころかデッキはリンクスにありません.ミスリエルの展開が上振れだったら割り切ればよかったのですが,この展開は通常運転です.手札誘発で耐えるくらいしか相手の展開に抗う手段がない月光は,ミスリエルの展開を眺めるしかないせいで,月光対メタルフォーゼは月光側の初手で勝負が決まるだけの対戦になっていました.月光側はサーベルダンサーを立てるために1枚でも初手を増やしたいのと,メタルフォーゼ側が月光と知らずに展開してくれたら月光融合素引きでデッキ融合が狙えるので後攻がほしい.一方,メタルフォーゼ側は月光が事故ることに賭けて後攻ワンキルをしたいので後攻がほしい.お互いが後攻を取りたいゲームになってしまいほぼほぼコイントスゲーでした.

コイントスと初手だけで勝負が決まるゲームをメタルフォーゼと繰り返していると更に追い打ちをかける環境変化がありました.それは月光ミラーの増加です.これが今回のKCカップ最大の予想外であり敗因です.月光自体のプレイヤー全体の評価が低かったのと環境的にも立ち位置がよくないのは分かっていたので,月光のプレイングに自信があり事前準備をしっかりしてきた一部のプレイヤーが握ったとしても全体から見たら少数だと考えていました.ミラーが少ない環境外のアドバンテージを活かせるはずでした.しかし,メタルフォーゼの増加で月光がメタルフォーゼに勝てることが徐々に認知されました.自分が初日から上位集団に混じって月光を使い続けていたことも多少は月光増加に貢献した気がします.上位帯は1戦1戦の対戦だけが勝負ではなく,何も考えずに動き回っていたら手の内をバラすことになるので,対戦相手に学習されていきます.試行回数でゴリ押して金アイコンを狙うプランがここに来て裏目に出ました.早い段階でランキングに載ると環境外のアドバンテージを失うことは今回のKCでよく分かりました.メタルフォーゼに叩き潰されたガンドラが上位集団から叩き落されたところに追い討ちをかけるように月光でガンドラを狩っていましたが,次に対戦した時は月光を握っていました.ガンドラからしたらメタルフォーゼに叩き潰されて握るデッキがなくなったときに,まさかの助け船が降ってきた上に対面ガンドラのプランまで教えてくれる.メタルフォーゼによって叩き潰されたガンドラ使いを月光で走れば走るほど月光使いに改宗してしまい,さらに月光が増えると月光狩りにガンドラが再び復活してしまいます.急に現れたメタルフォーゼに「そんなに強いん?先に言っといてや」とキレ散らかしてましたが,月光にそのままブーメランが突き刺さってることにようやく気付きました.3強環境から月光とメタルフォーゼを追加した合計5つのデッキが争う環境になってしまいました.ここで,試行回数でゴリ押してもDPは盛れず,メタルフォーゼが減って運ゲーとミラーのマッチアップが減るしかDPが盛れないことを察して一旦ステイしました.2日目はメタルフォーゼが減ることを祈ってここで終わりました.

4. KC最終日(金アイコン争い,そして敗北者)

ステイを決めてから日曜日の昼までステイしていました.その結果,メタルフォーゼは減りませんでした.正確には数は減りましたが,本当にメタルフォーゼを極めた4人くらいのプレイヤーが上位帯に一生居座っていました.もうステイしていても金アイコンは手に入りません.再び走ることを決めました.メタルフォーゼの増加によって,環境に変化もあり,ここに来てやっと幻影騎士団が暴れ始めました.ガンドラはメタルフォーゼに潰されたので,ガンドラを厚く見る必要がなくなった幻影騎士団はトリシューラも採用しフルパワーです.事前に用意してきた幻影騎士団のデッキアウトプランは使えなくなりましたが,それでも若干勝率は落としても戦えなくはありません.
ここで,再び月光の構築を見直しました.上位帯でLP増強αの月光を使ってるのは自分だけだったのでマッチングした瞬間月光だとバレて月光読みで動かれていました.LP増やしたところでワンキルしてくるDDDとメタルフォーゼもいます.増強αである意味が完全になくなり,むしろデメリットになっていました.
特に今回のKCは顕著だったですが,スキルだけでとんでもないアドバンテージ量を取るデッキが多すぎたせいで,スキルでアドを取れないデッキは不利でした.ガンドラのスキルが悪目立ちしましたが,墓地効果を起動し霧剣をサーチできる幻影騎士団,スキルでスケールが揃うDDD,実質初期手札が1枚増えるメタルフォーゼ.どれもスキルでありえないアドバンテージ量を取っています.それらに対して,他のスキルはスキルのアドバンテージなしで対抗しないといけないので無理があります.
LP増強αの代わりになるスキルを探しました.他の月光握ってるプレイヤーが融合の使い手の月光を使ってることが分かりました.都合がいいことにDDDとキャラが被っているのでランキングに載ったとしても目立たない情報アドもあります.ついにここで融合の使い手月光が完成しました.

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最終的には融合の使い手月光で金アイコンは出ませんでしたが,今回のKCカップで一番強い構築の月光です.
スキルのアドバンテージ量は他のスキルとは劣りますが,スキルで融合が加わるので早い段階で融合につなげられます.月光融合は同名ターン1の発動制限がありますが,スキルのおかげで1ターンに2回融合召喚ができるようになることが非常に強く,底なしの落とし穴を貫通できたり,ガンドラのクリボールに対して多面展開で貫通できたり,プレイングの幅が格段に広がりました

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遂に金アイコン射程圏内まで来ました.スキルを変えてからDDDの勝率が多少は改善したこともあり,良いペースでDPを盛れるようになりました.6万5000DPあれば金アイコンワンチャンあるだろうと見積もりました.あと約10ゲーム差です.まだ時間的にも十分間に合います.ここまで来たらあとは気持ちの勝負です.

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最終日の3時ころに6万DPに到達しました.ここからはボーダーの推移を見ながら最後の勝負です.ここから6万3000DPまで盛ってからランキングの更新を待つため一旦ステイしました.

最終日の朝ランキングが更新されました.スクショが残ってませんがトップ10にランクインしていました.しかし,それ以上に絶望的な光景がそこにはありました.なんと自分含めてトップ10のうち3人が月光使っていたプレイヤーでした.さらに当時のアフリカの1位と日本人プレイヤーの数人が月光を使っていることは分かっていました.最終日のラスト数時間になって上位帯の約半分が月光を握っているという最悪の事態になりました.月光ミラーでお互いに潰し合ったら半分以上は叩き落されます.ミラーを避けてここまで走ってきたのにもうステイしている時間もありません.今更ミラーを避けて握り替えられるデッキもありません.自分が最後に生き残る1人になることを祈ってデュエル開始ボタンを押しました.

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1時間ちょっとで一気に1万3000DP溶けました.月光ミラーに敗れ,有利なはずのハーピィには手札事故を起こし何もできずに連敗,なぜか徘徊している消えたはずのバスブレに負け.月光だらけになたことで再び息を吹き返すガンドラに負け.月光警戒でDDDはP召喚せず,メタルフォーゼは融合しないで魂のモンスターセットでターンを返してきます.月光じゃなかったらどうするんだよ??とキレ散らかしながら事故った手札を見るだけで負け.時間も残されていないので連敗を上振れで取り返すしかないと落ち着く時間もなく連戦.そんな状態でやっても勝てるわけもなく一瞬で溶けました.さっきまであと一歩まで見えてたはずの金アイコンがもう届かないところまで遠のいてしまいました.もうこの負けを取り返す時間はありません.さっきまで見えていた金アイコンが不可能になったという現実を受け入れることができずに最後までデュエル開始ボタンを押していました.

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最後のランキング更新.2度と金アイコン圏内に戻ることはありませんでした.金アイコンボーダーが最終6万6000だったので,金アイコン圏内いたときあと3勝さえできていたら金アイコンでした.あとたった3勝.金アイコン狙ってるプレイヤーは本当の強豪しかいません.最後のあと3勝は数字にしたらたった3勝です.しかし,強豪たちからあと3勝をもぎ取ることは,実際の数字以上に大きいものがありました.

これで金アイコンを本気で目指した自分のKCカップは終わりました.

あとがき

ここまでKCレポート読んでいただきありがとうございました.
今回のKCカップは,最後は負けてしまいましたが,最終日まで上位帯で強豪たちと連戦してる時間はとても楽しく,全体通して満足できるKCカップでした.環境外と思われていた月光デッキを環境デッキにまで引き上げる一躍を担えたのは月光使いとしては満足です.
マスターデュエルの物足りなさの反動と事前調整で出会った強豪たちと本気で戦いたいという思いが,金アイコンをを取りたいというモチベーションになりました.事前調整からKCカップ中全力で挑んでいる時間が,リンクスと競技としての遊戯王の面白さを再認識させてくれました.
今回は最終結果だけは満足いくものではありませんでしたが,また実力をつけて再挑戦したいと思います.

ここまで長い文章でしたが,最後まで読んでいただいた方の役に立つ情報が少しでも提供できていたのなら幸いです.

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