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昔の話ばっかりしちゃう

年末年始を地元で過ごした。6日間も休める年末年始は初めてだったので友人とたくさん予定を入れた。

北海道に着いた初日に学生の頃に住んでいた街に2年ぶりに行った。

北国特有の乾いた冷たい空気が懐かしく感じる。学校がたくさんある地域にしては学生では入れなさそうな飲み屋が多いのは相変わらず。

お気に入りだった居酒屋は移店していて、それでもいつもの通り満席だった。

昔の情景を思い出したくなった時、その時住んでた場所によく足を運ぶ。当時この居酒屋で打ち明けた悩みは僕の芯になり、今でもそれを否定したくてコックを続けている。

もう社会人になってからずっとそうだ。
未来を見てるようでずっと過去を見てる。

大きな目標があったとしても結局それは過去の布石の賜物であって、それを回収するために今を走っているだけなのだ。それにしか興味がない。

何年かぶりに入ったその居酒屋で友人と昔の話をした。どうしようもないくらいのくだらない話がやはり面白い。

僕が上京する前の最後の飲み会で友人が酔っ払って信じられないくらい女の子とキスをしてた話、
ギャグ漫画を人間にしたような友人がゴリゴリのファーを付けたコートを着て僕の働いてた店のカウンターで飲んでた話、
SixTONESのジェシーが表紙の雑誌をネットで買ったつもりが全く違う表紙だった話、
カラオケ屋で突然友人が失踪したと思ったら隣のボックスで爆睡してた話。

何回もしてきた話。内輪でしかない。でも、どうしても昔の話が面白いのだ。



次の日は違う友人に会った。最近ビールにハマっているという噂を聞いていたので美味しいビールが飲める店に行った。

自社製クラフトビールが飲み放題で飲める店、素晴らしいお店だった。

飲み放題が1時間しかなかったので友人は全種類網羅したいと意気込み、隣でスイスイと水のようにビールを口に流し込んでいた。
そういえば、ビールを飲み始める前に酔いに効く薬を飲んでて「しんやくんも飲む?」とか聞かれた気がする、お酒に対しての脅威的な意識の高さ。僕は無視して隣でにんじんのピクルスばかり食べてた。

友人は徐に本を貸してくれた。実は僕も貸したい本があって家から持参していた。何も口裏を合わせてないのに本の交換をした。

借りた本のタイトルが「恋で君が死なない理由」だったので、前に僕がした話を覚えててくれたのかなと思った。誰といても自分は昔話ばっかりしてるんだな、と、また辟易とする。同時に優しさに救われる。



その次の日は少し多めの人数で集まって鍋をした。

家に三日間泊めてくれた友人へのお礼の意味も込めて鍋の準備は全部請け負った。

友人と買い出しに行く途中で無印良品に寄り道した時、ふと目に入った不揃いバウムを見てそういえば無印良品で整ってるバウムを見たことがないことに気がついた。果たして洗練と厳選を繰り返し勝ち残ったバウムは何処に?と思ってた矢先ぶらぶらしたらすぐに綺麗でおおきなバウムが見つかった。

東京での忙しない生活のせいで無印良品すらゆっくり見る時間が無かったんだな。と思う。

鍋パーティが落ち着いたら、ボードゲーム大会に変わった。負けた人は罰ゲームで一杯飲むもしくは身の上の暴露話、まぁこれも昔よくやっていたいつもの流れ。

僕は暴露話が苦手だ。

その手のネタは暴露する前に全て昔話として喋ってしまうのでストックが無い。

ゲームに負けたら自ずと全て飲んでいた。ちゃんと酔っている。それでも良い日だと思えた。


昔話が一番面白いのだ。未来の話なんてどうでもよくなるくらい。

今回の帰省で会ってくれた友人に「昔の話しか面白いと思えないのはなんでなのかな?」と聞いてみたが、みんな何も言わなかった。

2024年は未来の話をしたい。世の中で評価されている人達はみんな共通して未来の話をもっとしている気がする。責任のある未来の話だ。

反面、やっぱりあの時ファー付きのコートを着てカウンター席でビールを飲んでいたアイツをどうしようもなく誰かと面白がりたいと思ってしまう。

卑下したいわけではなくて、昔話を一緒に面白がりたいのだ。


予算、打算、
計画、あえての無策、
マーケティング、
新しい風、万人受け、
原価、売価、粗利、
成績、データ、実数、
パワハラ、モラハラ、
経費の削減、理論値、インセンティブ、
言葉選び、積み重ね、積み減らし、
価値上げ、価値下げ、
あえての停滞、
女性向け、
男性向け、
ジェンダーレス、
多様性。

仕事をしてると未来のことをいつも考えてる。

未来を考えると毎日がつまらない。
本当にもうずっと何もかもつまらない。

お気に入りのドラマを友人と語り合う以上に、通ってた居酒屋で当時の友人と馬鹿話する以上に、無印良品を友人と適当にフラフラ歩く以上に、面白いことは世の中にあるんだろうか。

結局綺麗なバウムは買わず、それぞれみんな違う味の不揃いバウムを買った。

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