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ワークショップデザイナーへの道Ⅳ

ワークショップとはいち手法に過ぎないことを常に念頭に置いておきたいと思います。今回は、研修にワークショップを取り入れることについて整理・省察します。

研修にワークショップを取り入れるときの留意事項

研修にワークショップを用いる際、「参加者主体と組織満足のバランスをとる」ことがキーポイントの1つです。楽しいワークショップであると同時に、研修としての機能を果たしていることが求められます。

発注側が「楽しいワーク=ただ遊んでいるだけではないか」という懸念をもつ場合もあると思います。懸念を排除するためにも、きっちりと発注者の目的に到達することが大事で、「組織」の視点を入れた問いやフィードバックを組み込むことが重要です。事前打合せの段階で、研修担当者と明確な目標(確認できる具体的な状態や数字など)を握っておくことで、到達可否を判断できます。

研修の場合は、参加者が受け身(ともすれば受けたくないくらいの気持ち)で参加する前提がままあります。その点でも、誰でもできることから始める「参加の保証」と、そこから没頭していく「参加の増幅」のデザインをいかにつくれるかが肝です。研修参加者の中には、ワークショップそのものと心理的距離がある人も少なくないように思うので、「参加の保証」の丁寧さも問われるように思います。

[実践例]教員研修

NPOだっぴでは、岡山県の「職場の健康づくり研修会支援事業」の一環で、職場のコミュニケーション活性化研修を希望する学校園等に対して実施しています。本事例では、県内某学校の教職員同士のつながりづくりを行い、 日常的にコミュニケーションを取れるよう同僚性を高めることを目的としました。

アイスブレイク
会場をウロウロと歩いて、お互いの好きなことを聞き合ってビンゴカードをつくるワーク。ビンゴカード作成後は、グループで共有して1つでも共通のキーワードが書かれていれば○をつけて、ビンゴラインを引きます。

出会った人とお互いの好きなことを共有して3×3マスの空白を埋めます

フリップトーク
私のルーティン
わたしが思う(学校名)って○○!
の2つのテーマについて、グループで共有します。①は個人の行動特性を共有することでの自己開示・関係構築をねらいとし、②は組織の特徴等に対する個々人の捉え方を共有することをねらいとします。

(学校名)のスクール・ロゴを体で表そう
②の回答について、グループ以外のメンバーの意見も集めるべく、アイスブレイクで行ったビンゴカード作成と同じ要領で、ウロウロ動き回ってコミュニケーションします。
集まったカード(意見)を見せ合いながら、各グループでスクール・ロゴを体で表現します。

ベ●ッセさんをモデリングとするなら、画像の左側の人?たちです。
各グループで頭を悩ませながらアイデアを出します

スクール・ロゴを共有
2チームでお互いに考えた案を発表します。見る側のグループは「そのポーズが何を表しているのか」を考えて話し合い、グループで出た意見を発表チームに伝えます。その後、発表チームから表現の意味や意図を教えてもらいます。

日常との接続点を考える
振り返りとして、「(研修中で印象に残ったキーワード)って(日常の行動や思考)だな」という構文を埋めます。

[実践例]ワークショップ型研修の省察

脳内の思考を文字だけでなく、身体を使って表現することで、「文字では表しにくいけど、こんな感じだろう」を伝え合うことができ、そこに面白さや創造的混沌もあったように思います。
「楽しくコミュニケーションできた」「クラスの活動としても取り入れることができそう」という感想が多かった一方で、「楽しいワーク=ただ遊んでいるだけではないか」を乗り越えることはできなかった面も感じました。

組織に対する各自の見方・捉え方あるいは愛着性などを共有し、多角的に組織を捉え直すことで、同僚性を高めようとするコミュニケーションワークでしたが、最後の日常との接続点を考えるリフレクションの部分で、落としどころがややズレてしまいました。①組織の多角的理解につながる問い、もしくは②個人が同僚性について考える問いを設定した方がよかったように思います。
明確な目標(確認できる具体的な状態や数字など)を握っておくことができておらず、到達目標の粒度が粗かったのです。目標を因数分解していく力がまだまだ足りていませんでした。精進あるのみです。

ワークショップは、日常の変化・進化への足場かけとしての非日常空間でもあるので、研修の最後のリフレクションパートはやはり重要です。日常との隣接点を探ることを通して、通常業務等への活用につなげられるデザインを考える。この点において、アナロジー思考を探究するとよいのではないかと思い、アナロジー思考について次回まとめます!

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