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いきなり一級建築士を受験するべき理由〜飛び級を狙え〜

建築業界における最高峰の資格とも言われる一級建築士。
資格取得を目指す方から「一級建築士を受験する前に、まずは二級建築士を取った方がいいですか?」と聞かれることがあります。

私の答えはただひとつ、
一級建築士を目指していて受験資格があるなら、いきなり一級建築士を受けるべきです。

この記事ではいきなり一級建築士を受験するべき理由について、お話しします。

将来的に建築士取得を目指す建築学生や就活生、若手設計者にとって、キャリアプランの参考になればと思います。


【一級と二級の差は大きい】

建築士の資格には一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があります。
これらは「設計・工事監理できる建物の規模(業務範囲)」が違っており、木造<二級<一級の順で規模が大きくなります。

おおまかな規模感は下記の通りです。
木造建築士:戸建て住宅規模の木造建築物
二級建築士:戸建て住宅規模の建築物
一級建築士:全ての建築物

見ての通り、一級建築士と二級建築士では業務範囲に大きな差があります。

そのため、小規模な建物を専門に扱う会社でもない限り、二級建築士を取得しても資格を活かせる機会はほとんどありません。
また、そのような会社では二級建築士・木造建築士を取得してもアドバンテージにならないことが多いです。

戸建て住宅規模よりも大きな建築物を設計したいのなら、一級建築士が必須になります。

実際、私が在籍する会社も一級建築士の有資格者であることを重視しています。
一級建築士を取得していない設計部の社員には、試験対策講習や模試を受けることを勧めたり、学習進捗状況の報告を求めたりしています。

このように、一級建築士を取得するよう会社からプレッシャーがかかるのですが、たとえ二級建築士であっても無資格者と同じように扱われます。

このプレッシャーから解放されるには、一級建築士を取得するしかありません。
それほどまでに一級と二級の業務範囲の差は大きいのです。


【段階を踏むことのデメリット】

「いきなり一級建築士を受ける」と言ったときに聞くのが「いきなり最難関にチャレンジするより、二級から一級へと段階を踏んでステップアップした方が良い。」という意見。

建築について網羅的に勉強することが目的ならそれでもいいでしょう。
ですが試験を受ける目的は勉強することではなく、資格を取ることです。
建築の勉強をするなら、合格した後にゆっくりやりましょう。

そしてなにより、二級・一級を順番に受験することは時間的・金銭的なデメリットが大きいです。

二級建築士は一級建築士に比べて業務範囲が狭いものの、試験の難易度は決して低くありません。
合格するためには相当な時間をかけて勉強する必要があるうえ、製図試験は資格学校を利用しなければ対策が難しい試験です。

将来的に一級建築士を取得するのなら、二級建築士の勉強に時間とお金をかけるのは得策ではありません。
その分の時間とお金は、仕事を早く覚えたり、趣味に没頭したり、人と交流することに使った方が有意義な使い方だと思います。

つまり、二級建築士を受験することで得られらるメリットよりも、機会損失によるデメリットの方が大きいのです。


【一級建築士の上位資格が存在する】

世間一般の知名度は低いものの、一級建築士の上位資格と言われる資格が存在します。
それは「構造設計一級建築士」、「設備設計一級建築士」、「建築基準適合判定資格者」、「構造計算適合判定資格者」などの資格です。

※構造設計一級建築士
一定規模以上の建築物の構造設計を行うための資格

※設備設計一級建築士
一定規模以上の建築物の設備設計を行うための資格

※建築基準適合判定資格者
確認申請の審査を行うための資格

※構造計算適合判定資格者
構造計算適合判定の審査を行うための資格

詳しい説明は省きますが、上記の資格は「一級建築士試験の合格」や「一級建築士として5年以上の実務経験」が受験するための条件となっています。

そのため一級建築士の取得が遅れるほど、これらの資格取得も遅れることになるのです。

どれも各分野のスペシャリストであることを証明する資格なので、構造設計・設備設計・確認審査・構造適判を仕事にする人にとっては避けて通れない資格です。


【集中して勉強することは年々難しくなる】

私は建築士の試験に関わらず資格試験全般について、可能な限り早く取得した方がいいと考えています。
それは歳を重ねるごとに、集中して勉強することが難しくなるからです。

その理由は人によって様々です。

キャリアを重ねるにつれ仕事の責任が大きくなり、残業や休日出勤が増えた…

結婚して一人暮らしではなくなり、自宅で過ごす時間を自分のためだけに使えなくなった…

子どもができて家族が増え、子どものためにやらなければいけないことが増えた…

親の介護が必要になり、親のためにやらなければいけないことが増えた…

歳を重ねるにつれ体力が落ち、長時間の勉強ができなくなった…

例を挙げればキリがありませんが、どんな人でも時間が経てば必ずライフステージの変化は訪れます。
そしてほとんどの場合、勉強することに対しては不利な変化です。

今この瞬間が人生で最も若いとき。
歳を重ねて不利な状況になってから勉強するのではなく、若く身軽なうちに本気で取り組みましょう。


【実務経験が登録要件になった】

令和2年度の一級建築士試験以降、それまでは受験資格だった実務経験が、登録要件に変更されました。
これにより学校卒業後すぐに受験が可能となりました。

令和元年度以前は「2年以上の建築実務経験」がないと試験を受けることができませんでした。
そのため建築業界で2年の実務経験を積み、社会人3年目になって初めて受験できる試験でした。

それが令和2年度以降は「2年以上の建築実務経験」が登録要件になったため、学校卒業後の1年目に受験できます。
一度合格できれば、2年の実務経験を積んだ時点で一級建築士として免許登録できるようになりました。

これは一級建築士の早期取得を目指すうえで、追い風となる変更でした。

令和元年度以前は社会人3年目で初受験し、その年に合格できなければ最短取得とはなりませんでした。
ところが令和2年度以降は社会1人年目で初受験し、その年は不合格でも翌年合格できれば最短取得となります。

どういうことかと言うと、社会人1年目で合格した場合、免許登録のために2年の実務経験が必要なので、一級建築士となれるのは最短で社会人3年目の4月です。

社会人2年目で合格した場合、こちらもまた免許登録のために2年の実務経験が必要ですが、「合格後2年」ではなく「合計2年」なので、社会人3年目の4月に一級建築士となれるのです。

このように最短取得のためのチャンスが増えたため、社会人1年目から一級建築士にチャレンジする方は増えています。


【まとめ】

いきなり一級建築士を受験するべき理由についてお話ししました。

決して二級建築士の資格や受験することを否定しているわけではありません。

最短で管理建築士になることを目指す場合や、学歴要件を満たさない場合など、先に二級建築士を取得するという選択も当然あると思います。

また試験勉強に慣れていない方にとって、いきなり一級建築士を受験するハードルは高いかもしれません。

それでも、一級建築士・上位資格を目指す方にとって、早期取得のメリットは大きいと考えています。

人それぞれ状況は違うので絶対的な正解はありません。
建築業界で働く一個人の意見として、参考にして頂ければと思います。

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