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自然とともにニットをつくる|cucumuのニットができるまで 3/4

こんにちは、シフトブレイン広報の坂です。
前回に続き、“cucumuのニットができるまで” 第3回をお送りします。

本企画は、シフトブレインとクライアントの寺田ニットさんとで立ち上げたオリジナルのニットブランド『cucumu』を掘り下げる全4回のシリーズ記事です。

今回はクライアントである寺田ニットさんへインタビューを行いました!

▼寺田ニットさん 会社概要
1975年創業、山梨県市川三郷町の富士山の麓に本社がある国内有数のニットメーカーです。
創業時は手動式横編機(略して手横)から始めて、現在はホールガーメント(※1)製法を用いた『シームレスニット』の製造を主力としています。『cucumu』をはじめとするオリジナルブランドの製造販売のほか、OEM/ODM事業も行っています。

(※1)ホールガーメント
島精機製作所さんが独自に開発した世界初のホールガーメント横編機によって編成された、無縫製ニットウェアです。一着丸ごと立体的に編み上げる、縫い目のないホールガーメント製品には、カットロス(糸の無駄がない)など今までにない優れたメリットがたくさんあります。

島精機製作所 Webサイト

プランナーの浦川さんやアートディレクターの藤吉さんが「一緒にニットブランドを立ち上げたい!」と思うにいたった、寺田ニットさんのニットに対する熱い想いを読者のみなさんにもお届けできればと思います。


お話をうかがった寺田ニットのみなさん

——はじめに、みなさんの自己紹介をお願いします。

寺田 光彦さん(以下、寺田社長):私は父親兼代表取締役で、長男(寺田 公仁さん)の誕生とともに創業したのが寺田ニットです。
自動編み機のない頃から手編みで始めて、横編み、成型編み、ホールガーメント(シームレススニット)をやってきました。創業はもうすぐ50年ですが、職歴は60年になります。

寺田 公仁さん(以下、寺田専務):僕は主にニット製品を作るところ、糸から製品を作るまでの技術的な部分を担当しています。『cucumu』では主に編み地を作成し、サンプル制作から製品化までを行っています。

寺田 義久さん(以下、寺田常務):僕の役割はどちらかというと社内外に対しての接着剤のような、営業的な部分を担当しています。資材の発注や生産管理も行いますし、『cucumu』では取り組んでいきたいことも発信をしています。

写真中央: 寺田 光彦さん(社長)
写真右:寺田 公仁さん(専務)
写真左:寺田 義久さん(常務)

目指すのは、未来にもやさしいニット

——寺田ニットさんは、オリジナルブランド製造のほかにOEM事業も行われていますね。

寺田社長:OEMは長年やってきた事業です。ですが、事業を続けていく中でお客さんが手にする最終的な商品価格が高すぎること製造方法が自然を汚していること、この2つに疑問を感じていました。長年繊維業界を見てきましたが、創業当初に手横でものを作っていた時代には環境問題はなかったし......そういった違和感がずっと頭の中に残っていました。一方で経営者としては会社の発展のために事業に取り組むことは、止むを得ない部分でもありました。
そんな中、近年ではネット販売ができる時代になり、私たちもお客さんに直接販売できるようになりました。そこで、自分達が納得できる商品を製造・販売するために、オリジナルブランドの事業も始めることにしたんです。

工場には沢山のホールガーメント横編機が並んでいます

——商品価格について、具体的にどのような疑問があったのですか?

寺田社長:現在は下代と上代の価格の差が開きすぎていると感じます。昔はもう少し良心的な価格でした。ですが、1度価格をあげたものを下げることは不可能に近い。多くがそのまま今日まできてしまい、日本の同業者は30年前と比べて10分の1になってしまいました。残された企業は互いに仲良くして、新しい時代をどう生きていくかを考えなければいけないと思います。

山の木々が動物に花や木の実を与え、その動物たちが種子を運ぶ循環があるように、これからは利益の追求だけではなく継続していくことが必要です。周りのみなさんを幸せにすることで、新しい幸せが生まれる。それが本当の企業の姿であると考えています。

——環境問題を深く考えるようになったきっかけを教えてください。

寺田社長:私は趣味で山や海へよく行くんですが、海釣りで昔はアジ・サバ・マグロが釣れていたのに、今では同じ場所で熱帯魚が釣れます。地球は8割が海なので、海を汚すことはしちゃいけないですよね。山も同じで昔はたくさん小鳥がさえずっていたのに、今はカラスがうるさく鳴いています。これも人間が山を粗末に扱った結果ですね。

寺田ニットさんは自然に囲まれた土地にあります

寺田社長:今いちばんに考えているのは製造の過程でこれ以上海を汚さないことです。とにかくマイクロプラスチック(※2)は出さないようにしたい。繊維産業には海を汚す仕事が沢山あります。染色の過程で発生する汚水を流していますが、魚はその水で育ちますよね。人間はその魚を食べるので、結果的に被害を受けることになっています。このままでは地球がだめになってしまう。今後は環境負荷が少ない草木染めなども考えていきたいと思っています。

(※2)マイクロプラスチック
非常に細かいプラスチックのことで、マイクロプラスチックによる海洋汚染は深刻な環境問題になっています。マイクロプラスチックは、ペットボトルやビニール袋のプラスチック製品から排出されるほかに、合成繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリルなど)を洗濯することでも排出されてしまいます。また、環境だけではなく人体への影響も懸念されています。

寺田社長:そのほかにも、今の古い機械をCO2を出さない機械に入れ替えたり、石油系の糸は使わないなども考えることができます。天然素材を扱うにあたっても、動物に危害を加えないようにすることも大切ですね。バリカンで刈るくらいの素材で製造したいです。どれをとっても変えていくことは大変なので、もう5年はかかっています。でも絶対にやらなければ地球が壊れてしまうので、「やればできる!」という探求心で取り組んでいます。

将来的にはうちの商品を買ってくれるお客さんに、洗濯のアフターフォローができればと考えています。我々であればどんな洗剤を使えばいいかや洗い方についてもよく知っていますし、プロが洗えば綺麗になりますしね。今までのように服を大量消費するのではなく、いいもの1枚を大切にながく着てほしい。そんな洗濯サービスもこれからの地球を守るために必要だと思っています。

ものづくりで繋がる仲間として

——今回シフトブレインにご依頼いただいた経緯を教えていただけますか?

寺田専務:当初は以前からやっていたファクトリーブランドのECサイトリニューアルやテコ入れをお願いできる会社を探していました。僕たちは作ることに関してはプロですが、製品販売やイメージ戦略に関しては全くわからなかったためです。何社か話にあがっていた中の1社がシフトブレインさんで。正直、本当にどこにお願いすればいいかわからなかったので、1度お会いして話をしてみたいと思ったのがきっかけでした。

寺田常務:お話ししていく中で、我々の「消費者に直接いいものを、適正な価格で届けたい」という想いに一番共感してくれたのがシフトブレインさんでした。今では商売だけじゃない、一過性にならないものづくりに一緒に取り組んでくれている仲間のように感じています。

——初回提案では本来はECサイトの提案をするはずだったところ、シフトブレインが『cucumu』を立ち上げる提案をしたという経緯もありましたね。

寺田常務:でも、そういう関係性が大切ですよね。普通は「寺田ニットさんで決めてください」となりそうなところをすごく掘り下げて考えてくれて、想いをかたちにしてくれました。シフトブレインさんはそういった商売っ気の無い部分があって、信頼できると思いました。

寺田社長:お客さんに幸せになってもらうことが1番大事なことだと思います。不安もありますが、自分たちが信じたところと一緒に取り組みながら幸せな方向に歩んでいけたらと考えています。

※シフトブレインと寺田ニットさんの出会いから初回提案までは、連載1回目で詳しく書かれています。

『cucumu』を通じて“未来のだれか”を想う

——最後に『cucumu』にかける想いをお聞かせください。

寺田常務:オリジナルブランドの立ち上げは、ここまで社長が話してきた思想を形にしたものです。商品を売ってはいるんですけど、一緒に想いも伝えていきたいと思っています。そういった目的があって、その手段が『cucumu』であり、『KURUMIFACTORY(※3)』なんです。うちも本当に商売っ気がないと思うんですけど......その芯はぶらしたくなくて。だから、『cucumu』の商品も素材からこだわって自分たちが本当に納得できるものしか出しません。それが今までのやり方とは違うところです。
本来の資本主義的な考えからすると、お金のかかったものに関しては利益を上げて、会社として存続していくことが必要ですが......それが結果的に行き過ぎた資本主義になってしまい、自然も失われつつあります。

(※3)KURUMIFACTORY
寺田ニットさんが展開するもうひとつのファクトリーブランド。素材にこだわった日本製の上質な肌着を中心に、安心感を目指したニット製品を販売しています。

寺田常務:温暖化が進んで海の生態系がおかしくなってしまい、結果自分たちが住みにくくなって、子どもや孫の世代にはどうなってしまうんだと考えてしまいますよね。そこでまさに今、原点に立ち戻り、本当に資本主義が大事なのかを問いかけたいです。
『cucumu』の文字にある3つの『U(=You)』は、『作り手(You)』『消費者(You)』『未来のだれか(You)』これらの繋がりを意味しています。これからも『cucumu』を通じて、私たちの想いをみなさんに伝えていきたいと思っています。

——寺田ニットのみなさん、ありがとうございました!

▼ 寺田ニットさん note

寺田ニットさんは、2023年1月に発表された経済産業省次代を担う繊維産業企業100選新規性のある事業・サービスの展開(DtoC、産地企業による独自ブランド、異業種連携 等)の分野に選出されました。
シフトブレインも『cucumu』の取り組みを通じて、寺田ニットさんとともに繊維業界に貢献していきたいと考えています。

3回にわたってお送りしてきた連載企画“cucumuのニットができるまで” は、次回で最終回を迎えます。
最後は2回目の記事で触れたこだわりのコンセプトカードに使っている羊毛紙について、詳しくお届けします。お楽しみに!

▼ cucumu ECサイト

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