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「リアル×同期の会議」至上主義の地方議会に未来はない。

先日の木下斉さんのvoicyで、リアル・リモート×同期・非同期をうまく組み合わせるべし、という放送がありました。

それぞれのフェーズ、場面、タイミング、相手との関係性などに応じて使い分けることで、効率性の最大化を図るべし。そのために最も有益なのは、リモート×非同期での積み上げであるとの趣旨です。
この放送から、リアル会議の開催にこだわり続けると地方議会はもたないと感じたので、思うところを綴ってみます。


非合理的な議会運営の仕組み

地方自治体では、行政側が提案する議案などを審議し議決する場として、議会を開催します。
議会は毎年、条例で定める回数を開催すると定められており、以前は開催回数に年4回以内という制限がありました。現在では撤廃されていますが、依然として年4回開催する自治体が多いようです。

さて。
ここで問題になるのは、この年4回の議会おける行政側と議員のやりとりです。

議会が招集されると、行政側から提出された議案などに対して、会議の開催に先立って議員から質問が通告されます。
「この議案に対してこんな質問をするから当日までに答えを用意しておいてね」ということですね。
ここから行政側は回答を用意するわけですが、この「当日までに」という期間が異常に短い。土日も含めて一週間もあればマシなほうです。
この数日の内に、資料を集め、論理を整理し、口述に落とし込み、首長と擦り合わせをして回答を完成させなければなりません。
議案質疑であれば、ある程度質問を想定して資料や情報を整理できる場合もありますが、特に一般質問では通告されるまでどんな質問が来るかわかりません。
こんな状態ですので、色んな可能性を想定しながら準備をするわけですが、心配性な上司にあたると大変なことになります。
ひどい場合は、通告の半月~一か月前くらいから、あれを訊かれるかも、いやこっちかも、やっぱりそっちかも・・・よし!これら全ての資料を用意しとけ!細かいことまで網羅しとくように!となるわけです。

落ちてくるか分からない爆弾に対して、空に向かって千本の竹槍を構える愚。

当然、通常業務にプラスして(場合によっては通常業務を止めて)対応するわけですから、事前準備から回答作成までにおける人的・時間的リソースは膨大なものになります。

そして、それらが全て役に立てば労力も報われますが、想定が1ミリもかすらなかったり、議会当日に議員が時間切れで質問をしない場合も往々にしてあるのです。
しかし、心配性な上司は、竹槍を構えていたこと自体に満足してしまっているため、闇に葬られた時間と労力に何の罪悪感もありません。

このように膨大なリソースの無駄遣いが3か月に1回やってくるわけですが、ここで思うわけです。

普段から質問があるたびに議員と質疑応答ができる仕組みにすればいいんじゃね?と。

非同期のメールやチャットで普段から疑問点や認識違いを整理し、考えの確度を高めたうえで、議会当日は最終調整と意思決定に注力する。

こうすれば、竹槍を構える必要も、ググれば分かるような質問に答える必要もなくなり、リアルで会議を開催することの価値がグッと高まるのではと思うところです。

時間と労力を削減しなければ、なり手がいなくなってしまう。

一方で、議員はどうかというと、年に4回の議会のたびに、役所に出向いて書類を提出し、出した質問に対するヒアリングを受け、議会に出席しなければなりません。
そのほかにも、なんちゃら委員会など分科会的な会議がちょくちょくあり、とにかくリアル×同期が大好きな業界です。

しかし、このような体制を続けていく地方議会に未来はあるでしょうか。
私にはそう思えません。
他の業界もそうですが、かつてない供給制約社会が到来している現在において、今後、若い世代や優秀な人材の流入を促していくためには、効率性の向上が急務であると思います。
高齢化きわまる地方においては、都市部以上に若い世代の声を行政に反映させていくことの必要性が高い中、政策の影響を一番受ける現役世代で平日の昼間にリアルで役所に出向いていける人などほとんどいません。
できるのは、議員を生業にする覚悟をしたほんの一握りの人たちだけです。
その他大勢の人たちは、できないししたいとも思えないわけですね。
このような現状は、リタイアした高齢者たちが議員になるために最適化された仕組みであり、現役世代が自動的に排除されているとも言えます。

であれば、今後若い世代や優秀な人たちが行政に関わっていけるように最適化していくための一歩として、様々なツールを活用して時間と労力を削減し、効率化を推進していくことが大切です。

地方議会における質疑や質問は、一度にまとめて行うのではなく、メールやチャットなどの非同期ツールを用いて普段から随時応答を行うことで、格段に労力と時間を削減できるとともに、意思決定の精度も高まります。

未来を摘んでしまうことのないよう、古い仕組みの柔軟な見直しが求められています。


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