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サメ(本物)とゾンビの取っ組み合い!イタリアの鬼才ルチオ・フルチのゾンビ「サンゲリア」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(517日目)

「サンゲリア」(1979)
ルチオ・フルチ監督

◆あらすじ
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ある日、ニューヨーク湾内で奇妙な事件が発生した。漂流中のクルーザー内に踏み込んだ警備船の警官2名が、全身腐乱した男に襲われたのである。男に噛まれた警官1人が犠牲となり、男は全身に銃弾を打ち込まれて海中に姿を消した。
クルーザーの持ち主の娘であるアン・ボールズと新聞記者ピーター・ウェストは、アメリカ人夫婦ブライアンとスーザンのクルーザーに同乗し、アンの父親がいるはずのカリブ海に浮かぶマトゥール島へ向かう。だがそこは、死んだ者が蘇って生者を貪り喰い、噛まれた被害者もゾンビになる恐るべき魔境と化していた。(Wikipediaより抜粋)
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ゾンビ映画界の巨匠ジョージ•A・ロメロ監督作「ゾンビ」(’78)の世界的大ヒットを受けて製作された後発作品です。

監督を務めたのはイタリアの鬼才ルチオ・フルチ氏で、この作品でホラーのジャンルでも注目されたフルチ監督は「地獄の門」(’80)や「ビヨンド」(’81)と立て続けにホラー作品を発表しました。

ルチオ・フルチ監督
サム・ライミ氏やクエンティン・タランティーノ氏など数多くの映画監督に影響を与えました。
(ルチオ・フルチWikipediaより引用)

ゾンビの造形自体はロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」や「ゾンビ」に登場するゾンビと同じ方向性ですが、蛆やミミズが湧いていたり、腐乱している様子を特殊メイクで再現したりとかなり生々しく、リアリティのあるゾンビを作り上げています。

特殊メイクを担当したデ・ロッシ氏もこの作品で評判を上げたそうです。

現在、配信などはしていないようです。私は五反田のTSUTAYAにてレンタルしました。

海外での公開時、気分が悪くなった時用にと来場者全員にエチケット袋が配られたそうです。また日本公開時、ゾンビのことを字幕で“サング”と呼称したそうです。
(映画.comより引用)

原題は「Zombie2」です。

ロメロ監督の「ゾンビ」はイタリアホラーの巨匠ダリオ・アルジェント氏が製作、音楽を務めており、もちろんイタリアでもこの「ゾンビ」は上映され大ヒットを記録しました。

「Zombie2」にはロメロ氏もアルジェント氏も携わっておりませんし、もちろん話のつながりもありません。おそらくは「ゾンビ」の大ヒットに便乗して名付けられたタイトルなのではないでしょうか。

邦題の「サンゲリア」は流血を意味するイタリア語“Sangue”が由来で、配給会社である東宝東和が自社の大ヒット作「サスペリア」に似た感じに語尾を変化させて作った造語です。ちなみに、この翌年に公開された「Dead & Buried」はこの『〜リア』のムーブに乗っかり、「ゾンゲリア」と名付けられました。

『アンが父親を探すために、ピーターらと共にマトゥール島に向かい、そこでゾンビに襲われる』

という中盤からクライマックスまでの脚本は「ゾンビ」の公開前から完成していたそうです。
しかし、「ゾンビ」のヒットを受けたプロデューサーが「ゾンビ」との関連性を持たせるため、急遽『ニューヨーク湾のクルーザー内で警官が襲われるくだり』『ニューヨーク市内でもすでにゾンビパンデミックが発生しているというラスト』をそれぞれ冒頭と最後に付け足したそうです。

(amazonより引用)

ちなみにラストのカット『ブルックリン橋を歩くゾンビの集団』はゲリラで撮影を行ったらしく、よく見ると普通に乗用車が走っているのが分かります。

◇冒頭の出来事をきっかけに船の持ち主である父親を探す娘と事件の匂いを嗅ぎつけた新聞記者が休暇中のアメリカ人夫婦のクルーザーに同乗させてもらい、怪しげな島に向かう。

と、島に着くまでに自然な流れで登場人物も移動手段も揃えてしまう状況や設定作りが非常に巧みです。ちなみに新聞記者ピーターの上司役はルチオ・フルチ監督です。

そして今作の見どころの一つでもあるシーンが

島に向かう途中の“サメ(本物)とゾンビの水中格闘シーン”です。

主人公たちを同乗させたブライアンの妻スーザンが海の記録用の写真を撮るために海中に潜りますが、撮影中にサメと遭遇して大パニック!ブライアンもライフルでサメを撃退しようとしますがうまくいきません。

ここで一度サメを避けるためにスーザンが再び海に潜り岩場に隠れるとそこで今度はゾンビに襲われます。慌てて逃げ出すスーザン。命からがらクルーザーに戻り事なきを得ます。その一方、腹ペコのゾンビはサメに狙いを定めて、がっつり取っ組み合い、噛み付いたりもします。

このシーンのインパクトがとにかく凄まじく、
「サメ本物じゃん!」と少々引いてしまうレベルでした。

調べたところによると、サメはイタチザメという種類だそうです。普通に獰猛な部類で、撮影時はエサをたらふく食べさせ、更には鎮静剤も打って、人を襲わないように最深の注意を払ったそうです。

イタチザメ
(イタチザメWikipediaより引用)

そして、サメとタイマンを張るゾンビはサメと対峙した時にファイティングポーズに近いような体勢を取っており、動きの一つ一つにゾンビらしからぬ明確な意思を感じました。

なんでも本物のサメ相手に取っ組み合うことに怖気づいたゾンビ役の俳優が逃げ出し、このイタチザメの調教師の方が急遽ゾンビ役を務めたそうです。
(水中写真家のラモン•ブラボー氏がこのシーンのゾンビを務めたという説もあります)

島に着いてからは王道というか、しっかりとゾンビの脅威を見せつつ、がっつりグロもあり、非常に見応えがあって面白いです。特に眼球串刺しのシーンには並々ならぬこだわりを感じました。

ジャケ写にもなるレベルです。
(amazonより引用)

死者が蘇る原因は解明されていませんが、どうやらブードゥーの力が関係しているようです。実際、島では度々ブードゥー教徒が奏でているであろう楽器の音が聞こえますがそれがゾンビとどう関係しているのかは分かりません。

島の医師•デビッドはゾンビを研究しており、頭部を破壊すれば倒せることを発見し、島で死んだ人間はゾンビ化する前に頭を撃たれ埋められています。

先述しましたがゾンビのクオリティが非常に高く、腐敗し皮膚がめくれた様子や目からミミズの塊が飛び出していたり、蛆が湧いている様子は非常にグロテスクでした。

amazonより引用

ちなみに撮影に使用した蛆は本物で、撮影中にゾンビ役の俳優さんの鼻の中に入ってしまったりと中々に大変だったそうです。

ここで

『墓から復活したゾンビの視点から映る空』

というカットが2回だけ差し込まるのが印象的でした。ゾンビ映画は古今東西たくさんありますが、“ゾンビの視点”というのはあまり無いように思います。一瞬だけではありますが“ゾンビから見える空”というのは非常に斬新でした。

命からがら島から脱出したアンとピーターでしたが、ニュヨークでもゾンビパンデミックが起こっていることを知り、更にはクルーザー内のブライアンの死体がゾンビ化し、周りに何も無い海の上で絶体絶命。

という美しさすら感じる絶望的な終わり方は非常に好みでした。

ちなみに

「Zombie3」(’88)というルチオ・フルチ監督作品に「サンゲリア2」という邦題がついていますが、内容は一切繋がりがありません。監督曰く、最も嫌いな作品だそうです。

☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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