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「穴の中の君に贈る」

 平らに伸ばした粘土状のケーキミックスを二重丸の型でくり抜くと生のドーナツと団子が一つづつとれた。うっすらとケムリが立つ油にくにゃりと薄べったいそれらを投入すると、ベーキングパウダーがはじけ穴はしぼみ団子は大きくふくらむ。さっきまで自分がそこにいたのが嘘のようだと感慨深く古巣の穴を見やるに違いない団子に心があれば。
 菜箸で掬いあげるとキッチンペーパーで油分をきり砂糖をふりかける。
「あたしはお団子をいただくわ」
「遠慮するなんてらしくないわ」
二人の女子はより低カロリーなほうを取ろうとしているのだろうか。
「このウールのハイネックのセーター縮んだのかしら。なんか窮屈だわ」
「普通の洗剤で洗ったからでしょ」
団子を選んだほうがリング状のドーナツをチョコにくぐらせカラフルなスプレーをまぶしている。もう一人は締めつける首枷からふっくらとした顔をのぞかせる。
「これ、あなたに贈るわ」
私だって本当はなりたかったのに某航空会社のCA。

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