蟲ふるう夜に「フェスティバル」/逆境の中で奮い立たせる力


「蟲ふるう夜に」というバンドの新曲。「フェスティバル」というタイトル。

これが、なかなかによいのですよ。グッとくる。

話を聞いたんだけど、彼らはどうやらいろいろあったバンドらしくて。去年にはギターの慎乃介が難病のフィッシャー症候群になってしまって、バンドは一時活動休止。今年4月にミニアルバム『スターシーカー』をリリースして、半年の休養を経て6月4日(=蟲の日)に渋谷クラブクアトロで復活のワンマンライブを予定していたら、今度はヴォーカルの蟻がインフルエンザになってしまって痛恨のキャンセル。そういう上手くいかない状況をバネにするために作られた曲なのだとか。

そして、この曲は、2010年代のロックやバンドシーンにおける、一つの局面を象徴しているなあ、とも思う。それは「内面性」と「踊り」が結託している、ということ。そしてそれが、この曲のタイトルでもある「フェスティバル」という場所のイメージになっている。

たとえば前のミニアルバム『スターシーカー』には、ラッパーのGOMESSをフィーチャーした「同じ空を見上げてた」という曲も収録されていて。

二人の対談を読むと、ボーカルの蟻も、フィーチャリングのGOMESSも、それぞれにキツい内面を抱えながら、いろいろと食いしばって今に至っているということがわかる。「孤独」が表現のガソリンになっているというか。

で、そういう「一人」の内面性を持った作り手が、「みんな」を踊らせるためのリズムの上で歌っている、という。

もうさんざ語ってきたけど、その一つの理由はやっぱり「フェス」という場所の持つ力、特に邦楽のバンドにとってはそこがリスナーと触れ合うチャンネルになっている、という現状があるんだと思う。

でも、単に「そういうものが盛り上がるから〜」とか「今はそういうのが流行りだから〜」みたいな、そういう戦略性とか機能性だけでそれが選ばれている、という感じもしないんだよなあ。

音楽が持つ「奮い立たせる」力というものが、今も昔も求められているというか。

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