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2021年3月に聴いてよかったアルバム&EP

すっかり4月の半ばになってしまったけど、これは続けるよ。

書かないと忘れてしまう。SNSやニュースサイトばかり見ていると、他者の憤りや苛立ちや虚栄心に胸の内を掴まれて、自分のすきなもの、自分を成り立たせているものを見失ってしまう。わかっちゃいるけどやめられない。

自分の書く文章の、一番大事な読み手は他の誰かじゃなくて3年後、5年後、10年後の自分だ。そのことはずっと覚えておくべきこと。だから繰り返しここにも書いておこう。


そういうわけで3月によく聴いたアルバム。

■東京スカパラダイスオーケストラ『SKA=ALMIGHTY』

これはアルバム全体というよりも、「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。 feat.長谷川白紙」が飛び抜けてよくて、あまりに強烈で、この曲ばっかり聴いてた。MVも最高。

長谷川白紙と東京スカパラダイスオーケストラの相性がこんなにいいとは。スカパラのど真ん中なメロディと、それを脱構築していく長谷川白紙の勇敢さ。そして歌詞を紐解くと、ここに居ない誰かと音楽を通して幽霊的に出会えるということをモチーフに、とても詩的で美しい表現になっている。

■ラナ・デル・レイ『Chemtrails Over The Country Club』


冒頭のピアノバラード「White Dress」がとてもすき。キングス・オブ・レオンやホワイト・ストライプスの名前と共に19歳だった頃の回想を歌うこの曲。吐息混じりのハイトーンで歌う《Down at the Men in Music Business Conference》(そこは音楽業界人たちが集まる会議)のフレーズが、すごく耳に刺さる。感傷的であること、ノスタルジックであることは彼女の表現の核だけれど、それを徹底して研ぎ澄ましていくことで、詩人としての高みに達している感がある。

■ESME MORI『隔たりの青』

サウンドプロデューサー、シンガーソングライターのESME MORIの1stアルバム。とてもよいです。「Spicule」の重心低いベースと歌とデジタルクワイアの融合が絶妙で、誰かと思えば小森雅仁さん(米津玄師とか宇多田ヒカルのミックスした人)の仕事。「Tomorrow Loves You feat.七尾旅人」のメロウネスも抜群。

■ジャスティン・ビーバー『JUSTICE』

新作はメンタルヘルスや、神への信仰や、家族への愛と献身を歌うとてもパーソナルな内容。でありつつ、コラボを通じて様々な方向に開けているのが「ポップスターとして生まれついた」ジャスティン・ビーバーならではの主題と手法との結びつきを感じてとても興味深い。全体は3つのパートにわけられ、スローテンポで内省的な序盤の6曲ではJuice WRLD の弟子的な存在のKid LAROIをフィーチャーした「Unstable」が、80‘sテイストあふれるシンセ・ポップの中盤はBROCKHAMPTONのDominic Fikeを迎えた「Die For You」が、そしてダンサブルな後半はナイジェリア出身のアフロビートの新星Burna Boyとの「Love By You」がとてもいい。自分自身が持つ“触媒”としての作用に自覚的になっているのが、大きなポイントになっているように思う。

■underscores『fishmonger』

blackwinterwellsとかhelix tears周辺とかhyperpopを追ってて知ったunderscoresのデビューアルバム。めちゃめちゃいい。00年代のエモやガレージロックを最新型のhyperpopにしてる感じ。カリフォリニア在住らしいが素性は謎。

■Tempalay『ゴーストアルバム』

Tempalay化けたなーと思う。新作は彼らにしかできないタイプのサイケ・ファンクで,えいろんな文脈入りつつ不思議なオリエンタル感があって、かつ定型からの逸脱とポップな聴き応えが同居している。「シンゴ」は楳図かずおの『わたしは真悟』だし、アルバムの曲は他にも引用元が沢山あって、でもそれが全く新たな発想で化けている。オリジナリティってこういうことだよなと思う。

■LIL SOFT TENNIS 『Bedroom Rockstar Confused』

大阪出身のラッパー/シンガーソングライターの1stアルバム。kZmやsic(boy)や、いわゆるオルタナティブ・ロックを経由した日本語のラップミュージックを鳴らす人がどんどん出てきているここ数年のシーンで、なんだか気になってしまうのが彼。タイトルが象徴するように、XXXTENTACION以降の「ベットルームロックスター」という感じ。

■Tate Mcrae『TOO YOUNG TO BE SAD』

カナダ出身、2003年生まれのシンガーソングライター/ダンサー。最初に知ったのは去年に聴いた「you broke me first」で、そこからずっとすき。「Z世代」というバズワードでくくるのは乱暴な気もしてきたけれど、それでもこの繊細で、内に強さを秘めた声は、すごく今の時代との共鳴を感じる。



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