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Shiggy Jr.「サマータイムラブ」/「1時間」が「永遠」になる恋

Shiggy Jr.のメジャーデビュー曲「サマータイムラブ」。いい曲!

「ポップでポップなバンド」というキャッチコピーの4人組。今年の始め頃から「2015年の一押しニューカマーは?」みたいに訊かれるたびにいろんなところで彼らの名前を喋ったり書いたりしてきたけど、ほんと期待に100%応える曲をメジャーデビューのタイミングで作ってきた感がある。

そしてこのMV。一時代前のアメリカン・ホームドラマ風の映像。もう言い切っちゃうけど、これはダサい! 色使いとかフォントとか演出とか、一つ一つが確信的にダサい。「聖なるマシュマロ女子」後藤聖菜演じる「恋する女の子」に奇跡が起こるというストーリー。ナタリー(http://natalie.mu/music/news/149119 )の記事を見ると

MVについて池田は「私の大好きなホームドラマをモデルに、コミカルでポップなMVを作りました。監督の田辺さんがアイディアをばっちり汲み取って下さって、最高のMVになっています! 是非観てみて下さい! そして拡散してね!笑」とコメントしている。

とのことで、メンバー発信のアイディアが活かされているという内容になっている。いやあ、相当フザケてる。最高です。

まあMVのことは置いておくとして、この曲の「よさ」ってどこにあるかっていう話。いろんなポイントがあるけど、注目すべきは歌詞なんですよ。

サマータイムラブ 1時間だけ長く側にいられる
神様 この季節がいつまでも続きますように

ということで、曲名にある「サマータイム」というのは、欧米で定着した「夏時間」のこと。夏の間は時計を1時間だけ早める、という。それにからめて「1時間だけ長く側にいられる」というわけ。

こうして見ていくと、ここに登場する主人公の女の子の恋はずっと一方通行。

何でも打ち明けられる 大切な友達
たった一つの気持が どうしても言えないよ
いつだってあの子の話ばかり
それでも構わない 君に会えるなら
片耳ずつ分け合うイヤフォン
君が好きな歌 私の歌になる
大事なことを言い出せないまま
振り返らずに遠ざかっていく君の
背中を見つめてる

恋してる気持ちは、結局「君」には届かない。

でも、だからこそ、最後のサビで「全部忘れて楽しい事しようよ」と歌うわけだ。

Shiggy Jr.は「ポップでポップなバンド」だし、メロディも曲調も見せ方も「ハッピーで楽しい」ということに、とても真っ直ぐに向っている。でも、誰もが知ってるように、楽しいことなんて大抵ずっとは続かない。キラメキは刹那だからこそ輝く。

思えば「LISTEN TO THE MUSIC」もそういう曲だった。

listen to the music
listen to my heartbeat
楽しい時間 is forever
全て忘れてしまえよ

と歌う曲。「楽しい時間 is forever」というのは「音楽を聴いてる時間だけはそうなる」ってこと。その間は瞬間が永遠になる、っていう曲。

「Saturday night to Sunday morning」もそう。

今を噛み締めて
夢のようなときを
二度と戻れない
一度きりのグルーヴで

Shiggy Jr.がテーマにしてきた「ポップ」は、単に明るいとか楽しいとかハッピーとか売れそうとかそういうことだけじゃなくて、「一度きりの瞬間を永遠にする」音楽の魔法のことを言ってるんだと僕は思う。

だから、このメジャーデビュー曲で繰り返し繰り返し「1時間だけ」と歌ってることも、なんだか、すごく象徴的に思えるのです。(50/100)




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