見出し画像

加工令和6年3月15日法務省民二第535号「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(相続人申告登記関係(通達))

令和6年3月15日法務省民二第535号「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(相続人申告登記関係(通達))

 

民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号。以下「改正法」という )の施行に伴う不動産登記事務の取扱い(相続人申告登記関係。令和6年4月1日施行)については、下記の点に留意するよう、貴管下登記官に周知方お取り計らい願います。

なお、本通達中、「法」とあるのは改正法による改正後の不動産登記法(平成16年法律第123号)を、「令」とあるのは不動産登記令(平成16年政令第379号)を、「規則」とあるのは不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第7号。以下「改正省令」という。)による改正後の不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)を、「準則」とあるのは不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号当職通達)をいいます。

 



第1部   本通達の趣旨

本通達は、所有者不明土地の増加等の社会経済情勢の変化に鑑み、所有者不明土地の発生を予防するとともに、土地の適正な利用及び相続による権利の承継の一層の円滑化を図るための民事基本法制の見直しを内容とする改正法の施行に伴い、不動産登記事務の取扱い(相続人申告登記関係)において留意すべき事項(民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(相続登記等の申請義務化関係 (令和5年9月12日付け法務省民二第927号当職通達)において示したものを除く。)を明らかにしたものである。

第2部   相続人申告登記に関する事務の取扱い

第1 通則

定義

(1)「相続人申出」とは、法第76条の3第1項の規定による申出をいうとされた(規則第158条の2第1号)。

(2) 「相続人申告登記」とは、法第76条の3第3項の規定による登記をいうとされた(規則第158条の2第2号)。

(3) 「相続人申告事項」とは、法第76条の3第3項の規定により所有権の登記に付記する事項をいうとされた(規則第158条の2第3号)。

(4) 「相続人申告名義人」とは、相続人申告登記によって付記された者をいうとされた(規則第158条の2第4号)

(5) 「相続人申告事項の変更の登記」とは、相続人申告事項に変更があった場合に当該相続人申告事項を変更する登記をいうとされた(規則第158条の2第5号)。

(6) 「相続人申告事項の更正の登記」とは、相続人申告事項に錯誤又は遺漏があった場合に当該相続人申告事項を訂正する登記をいうとされた(規則第158条の2第6号)。

 

(7) 「相続人申告登記の抹消」とは、相続人申告登記を抹消することをいうとされた(規則第158条の2第7号)。

 

(8) 「相続人申出等」とは、相続人申出、相続人申告事項の変更若しくは更正の申出又は相続人申告登記の抹消の申出をいうとされた(規則第158条の2第8号)。

(9) 「相続人申告登記等」とは、相続人申告登記、相続人申告事項の変更の登記、相続人申告事項の更正の登記又は相続人申告登記の抹消をいうとされた(規則第158条の2第9号)

(10)「相続人電子申出」とは、規則第158条の4第1号に掲げる方法による相続人申出等をいうとされた(規則第158条の2第10号)

2

(11) 「相続人書面申出」とは、規則第158条の4第2号に掲げる方法による相続人申出等をいうとされた(規則第158条の2第11号)。

(12) 「相続人申出等情報」とは、規則第158条の3第1項各号、第158条の19第1項各号又は第158条の24第2項各号に掲げる事項に係る情報をいうとされた(規則第158条の2第12号)。

(13) 「相続人申出書」とは、相続人申出等情報を記載した書面をいうとされた(規則第158条の2第13号)。

(14) 「相続人申出等添付情報」とは、相続人申出等をする場合において、規則第3章第3節第2款の2の規定によりその相続人申出等情報と併せて登記所に提供しなければならないものとされている情報をいうとされた(規則第158条の2第14号)。

(15) 「相続人申出等添付書面」とは、相続人申出等添付情報を記載した書面をいうとされた(規則第158条の2第15号)

2 相続人申出等情報

(1)        相続人申出等において明らかにすべき事項

ア 相続人申出等は、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならないとされた(規則第158条の3第1項)。

(ア) 申出人の氏名及び住所

(イ) 代理人によって申出をするときは、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名

(ウ) 申出の目的

(エ) 申出に係る不動産の不動産所在事項

イ 相続人申出等情報の内容とする前記ア(ウ)の申出の目的は、次の振り合いによるものとする。

(ア) 相続人申出の場合「相続人申告」

(イ) 相続人申告事項(氏名)の変更の申出の場合「何番付記何号名義人氏名変更」

(ウ) 相続人申告事項(住所)の変更の申出の場合「何番付記何号名義人住所変更」

(エ) 相続人申告事項(氏名)の更正の申出の場合「何番付記何号名義人氏名更正」

(オ) 相続人申告事項(住所)の更正の申出の場合「何番付記何号名義人住所更正」

(カ) 相続人申告事項(氏名又は住所以外)の更正の申出の場合「何番付記何号相続人申告事項更正」

(キ) 相続人が単独でした相続人申出に係る相続人申告登記についての抹消の申出「何番付記何号名義人抹消」

(ク) 相続人が複数人でした相続人申出に係る相続人申告登記の一部についての抹消の申出の場合「何番付記何号名義人一部抹消」

(2) 不動産番号の取扱い前記(1)ア(エ)にかかわらず、不動産番号を相続人申出等情報の内容としたときは、同(エ)に掲げる事項を相続人申出等情報の内容とすることを要しないとされた(規則第158条の3第2項)。

(3) 相続人申出等情報の内容とするものとする事項)相続人申出等においては、前記(1)ア(ア)から(エ)までに掲げる事項のほか、次に掲げる事項を相続人申出等情報の内容とするものとするとされた(規則第158条の3第3項)。

ア 申出人又は代理人の電話番号その他の連絡先

イ 相続人申出等添付情報の表示

ウ 申出の年月日

エ 登記所の表示

3 相続人申出等の方法

相続人申出等は、次に掲げる方法のいずれかにより、相続人申出等情報を登記所に提供してしなければならないとされた(規則第158条の4)。

ア 電子情報処理組織を使用する方法

イ 相続人申出書を提出する方法

4 相続人申出等情報の作成及び提供

ア 相続人申出等情報は、申出の目的及び登記原因に応じ、一の不動産及び申出人ごとに作成して提供しなければならないとされた ただし、次に掲げるときは この限りでないとされた(規則第158条の5)

(ア) 同一の登記所の管轄区域内にある一又は二以上の不動産について、後記第2の1(1)ア(ア)から(ウ)までに掲げる事項(相続人申出において明らかにすべき事項)が同一である相続人申出をするとき。

(イ) 同一の登記所の管轄区域内にある一又は二以上の不動産について、同一の相続人申告名義人の氏名又は住所についての変更又は更正の申出をするとき。

(ウ) 同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について、抹消の理由並びに抹消すべき後記第2の3(1)ア(エ)及び(オ)に掲げる事項(所有権の登記名義人及び中間相続人について相続が開始した年月日等)が同一である相続人申告登記の抹消の申出をするとき。

イ 前記ア(ア)の「後記第2の1(1)ア(ア)から(ウ)までに掲げる事項が同一である相続人申出」とは、例えば、所有権の登記名義人についての相続により所有権を取得した当該登記名義人の配偶者及びがする相続人申出が該当する。

 

ウ 前記ア(ウ)の「抹消の理由」とは、抹消の申出の対象とする相続人申告登記において該当する後記第4の1(1)ア(ア)又は(イ)(相続人申告登記の抹消の申出に係る要件)の内容を指すものである。

これにより、例えば、同一の登記所の管轄区域内にある複数の不動産の所有権の登記名義人である者に係る一人の相続人申告名義人が、相続放棄をしたことを理由として、各不動産の相続人申告登記の抹消の申出を一括で行うことができる。

また、同一人が同一の登記所の管轄区域内にある複数の不動産についての相続人申出を一括で行った場合において、申出の権限を有しない者による申出であることを理由として、当該申出に基づく各不動産の相続人申告登記の抹消の申出を一括で行うこともできる。

 

5 相続人申出等添付情報

代理人によって相続人申出等をするときは、当該代理人の権限を証する情報をその相続人申出等情報と併せて登記所に提供しなければならないとされた(規則第158条の6)。

なお、後記7(2)のとおり、相続人電子申出において送信する代理人の権限を証する情報については、他の相続人申出等添付情報と異なり、作成者の電子署名を要しない。相続人書面申出における代理人の権限を証する情報については、作成者の押印又は署名を要しない。

6 相続人申出等添付情報の省略等

(1) 同一の登記所に対して同時に二以上の相続人申出等をする場合において 各相続人申出等に共通する相続人申出等添付情報があるときは、当該相続人申出等添付情報は、一の相続人申出等の相続人申出等情報と併せて提供することで足りるとされた(規則第158条の7において準用する規則第37条第2項)。

(2) 前記(1)の場合においては、当該相続人申出等添付情報を当該一の相続人申出等の相続人申出等情報と併せて提供した旨を他の相続人申出等の相続人申出等情報の内容としなければならないとされた(規則第158条の7において準用する規則第37条第2項)。

(3) 法人である代理人によって相続人申出等をする場合において、当該代理人の会社法人等番号を提供したときは、当該会社法人等番号の提供をもって、当該代理人の代表者の資格を証する情報の提供に代えることができるとされた(規則第158条の7において準用する規則第37条の2)。

7 相続人電子申出の方法

(1)相続人電子申出における相続人申出等情報及び相続人申出等添付情報は、法務大臣の定めるところにより送信しなければならないとされた。ただし、相続人申出等添付情報の送信に代えて、登記所に相続人申出等添付書面を提出することを妨げないとされた(規則第158条の8第1項)。

(2) 前記(1)本文により送信する相続人申出等添付情報(規則第158条の6に規定する代理人の権限を証する情報(前記5の代理人の権限を証する情報)を除く)は、作成者による規則第42条の電子署名が行われているものでなければならないとされた(規則第158条の8第2項において準用する令第12条第2項及び規則第158条の8第3項において準用する規則第42条)。

なお、前記(1)本文により送信する相続人申出等情報については、電子署名を要しない。

(2)        前記(2)の電子署名が行われている相続人申出等添付情報を送信するときは、規則第43条第2項の電子証明書を併せて送信しなければならないとされた(規則第158条の8第2項において準用する令第14条及び規則第158条の8第3項において準用する規則第43条第2項)。

 

8 相続人電子申出において相続人申出等添付書面を提出する場合についての特例等

(1) 前記7(1)ただし書(いわゆる別送方式)により相続人申出等添付書面を提出するときは、相続人申出等添付書面を登記所に提出する旨及び各相続人申出等添付情報につき書面を提出する方法によるか否かの別をも相続人申出等情報の内容とするものとするとされた(規則第158条の9第1項)。

(2) 前記(1)の場合には、当該相続人申出等添付書面は、相続人申出等の受付の日から二日以内に提出するものとするとされた(規則第158条の9第2項)。

(3) 前記(1)の場合には、申出人は、当該相続人申出等添付書面を提出するに際し、規則別記第4号の2様式による用紙に次に掲げる事項を記載したものを添付しなければならないとされた(規則第158条の9第3項)。

受付番号その他の当該相続人申出等添付書面を相続人申出等添付情報とする申出の特定に必要な事項

イ 前記7(1)ただし書(いわゆる別送方式)により提出する相続人申出等添付書面の表示

9 相続人書面申出の方法

(1)       相続人書面申出をするときは、相続人申出書に相続人申出等添付書面を添付して提出しなければならないとされた(規則第158条の10第1項)。なお、相続人申出書に押印することを要しない。

 

(2) 相続人申出書に記載する文字は、字画を明確にしなければならないとされた(規則第158条の10第2項において準用する規則第45条第1項)。

 

(3) 相続人申出書につき文字の訂正、加入又は削除をしたときは、その旨及びその字数を欄外に記載し、又は訂正、加入若しくは削除をした文字に括弧その他の記号を付して、その範囲を明らかにしなければならないとされた。この場合において、訂正又は削除をした文字は、なお読むことができるようにしておかなければならないとされた(規則第158条の10第3項)。

 

(3)        申出人又はその代理人は、相続人申出書が二枚以上であるときは、各用紙に当該用紙が何枚目であるかを記載することその他の必要な措置を講じなければならないとされた(規則第158条の10第4項)。

10 相続人申出書等の送付方法

(1) 相続人申出等をしようとする者が相続人申出書又は相続人申出等添付書面を送付するときは、書留郵便又は信書便事業者による信書便の役務であって当該信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによるものとするとされた(規則第158条の11第1項)。

(2) 前記(1)の場合には、相続人申出書又は相続人申出等添付書面を入れた封筒の表面に相続人申出書又は相続人申出等添付書面が在中する旨を明記するものとするとされた(規則第158条の11第2項)。

11 受領証の交付の請求

(1) 相続人書面申出をした申出人は、申出に係る登記が完了するまでの間、相続人申出書及びその相続人申出等添付書面の受領証の交付を請求することができるとされた(規則第158条の12において準用する規則第54条第1項)。

(2) 前記(1)により受領証の交付を請求する申出人は、相続人申出書の内容と同一の内容を記載した書面を提出しなければならないとされた。ただし、当該書面の申出人の記載については、申出人が二人以上あるときは、相続人申出書の筆頭に記載した者の氏名及びその他の申出人の人数を記載すれば足りるとされた(規則第158条の12において準用する規則第54条第2項)。

(3) 登記官は、前記(1)による請求があった場合には、前記(2)により提出された書面に相続人申出等の受付の年月日及び受付番号並びに職氏名を記載し、職印を押印して受領証を作成した上、当該受領証を交付しなければならないとされた(規則第158条の12において準用する規則第54条第3項)

12 相続人申出等添付書面の原本の還付請求

(1) 相続人申出等添付書面を提出した申出人は、相続人申出等添付書面の原本の還付を請求することができるとされた。ただし、当該申出のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでないとされた(規則第158条の13において準用する規則第55条第1項)。

(2) 前記(1)本文により原本の還付を請求する申出人は、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならないとされた(規則第158条の13において準用する規則第55条第2項)。

(3) 登記官は 前記(1)本文による請求があった場合には 調査完了後当該請求に係る書面の原本を還付しなければならないとされた。この場合には、前記(2)の謄本と当該請求に係る書面の原本を照合し、これらの内容が同一であることを確認した上、前記(2)の謄本に原本還付の旨を記載し、これに登記官印を押印しなければならないとされた(規則第158条の13において準用する規則第55条第3項)。なお、当該原本還付の旨の記載は、準則第30条の例によるものとする。

 

(4) 前記(3)により登記官印を押印した前記(2)の謄本は、登記完了後、申請書類つづり込み帳につづり込むものとするとされた(規則第158条の13において準用する規則第55条第4項 。)

(5) 前記(3)にかかわらず、登記官は、偽造された書面その他の不正な相続人申出等のために用いられた疑いがある書面については、これを還付することができないとされた(規則第158条の13において準用する規則第55条第5項)。

(6) 前記(3)による原本の還付は、申出人の申出により、原本を送付する方法によることができるとされた。この場合においては 申出人は送付先の住所をも申し出なければならないとされた(規則第158条の13において準用する規則第55条第6項)。

(7) 前記(6)の場合における書面の送付は、前記(6)の住所に宛てて、書留郵便又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによってするものとするとされた(規則第158条の13において準用する規則第55条第7項)。

(8) 前記(7)の送付に要する費用は、郵便切手又は信書便の役務に関する料金の支払のために使用することができる証票であって法務大臣が指定するものを提出する方法により納付しなければならないとされた(規則第158条の13において準用する規則第55条第8項)。

 

(9) 前記(8)の指定は、告示してしなければならないとされた(規則第158条の13において準用する規則第55条第9項)

 

(10) 相続人申出における相続人申出等添付書面の原本の還付を請求する場合において 後記第2の1(2)ア(ア)から(ウ)までに掲げる情報(相続人申出において提供しなければならない情報)に係る相続関係説明図が提出されたときは、当該相続関係説明図を当該情報を記載した書面の謄本として取り扱って差し支えない。

 

13 相続人申出等の受付等

(1) 登記官は、前記3(相続人申出等の方法)により相続人申出等情報が登記所に提供されたときは、当該相続人申出等情報に係る相続人申出等の受付をしなければならないとされた(規則第158条の14第1項)。

(2) 前記(1)による受付は、受付帳に申出の目的、申出の受付の年月日及び受付番号並びに不動産所在事項を記録する方法によりしなければならないとされた(規則第158条の14第2項)。なお、当該受付帳は、規則第18条の2第1項の登記の申請について調製する受付帳を指す。

 

(3) 登記官は、相続人申出等の受付をしたときは、当該相続人申出等に受付番号を付さなければならないとされた(規則第158条の14第3項)。

(4) 登記官は、相続人書面申出の受付にあっては、前記(2)により受付をする際、相続人申出書に申出の受付の年月日及び受付番号を記載しなければならないとされた(規則第158条の14第4項)。

(5) 前記(1)、(2)及び(4)は、後記第3の4(2)の許可があった場合(相続人申告事項の更正をすべき場合)又は後記第4の3(4)により相続人申告登記の抹消(申出によらない相続人申告登記の抹消)をしようとする場合について準用することとされた(規則第158条の14第5項)。

(6) 前記(1)から(5)までのほか、相続人申出等の受付及び相続人申出書等の処理に関する取扱いについては、準則第31条及び第32条の例によるものとする。

14 調査

登記官は、相続人申出等情報が提供されたときは、遅滞なく、相続人申出等に関する全ての事項を調査しなければならないとされた(規則第158条の15において準用する規則第57条)。

15 相続人申出等の却下

(1)        登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、相続人申出等を却下しなければならないとされた。ただし、当該相続人申出等の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申出人がこれを補正したときは、この限りでないとされた(規則第158条の16第1項)。

ア 申出に係る不動産の所在地が当該申出を受けた登記所の管轄に属しないとき。

イ 一個の不動産の一部についての申出を目的とするとき。

ウ 申出に係る登記(相続人申告登記のうち規則第158条の19第1項第1号に規定する中間相続人に係るものを除く )が既に登記されているとき。

エ 申出の権限を有しない者の申出によるとき。

オ 相続人申出等情報又はその提供の方法が規則により定められた方式に適合しないとき。

カ 相続人申出等情報の内容である不動産が登記記録と合致しないとき。

キ 相続人申出等情報の内容が相続人申出等添付情報の内容と合致しないとき。

ク 相続人申出等添付情報が提供されないとき。

 

(2) 登記官は 前記(1)ただし書の期間を定めたときは 当該期間内は当該補正すべき事項に係る不備を理由に当該相続人申出等を却下することができないとされた(規則第158条の16第2項)。

 

(3) 登記官は、相続人申出等を却下するときは、決定書を作成して、これを申出人ごとに交付するものとするとされた。ただし、代理人によって相続人申出等がされた場合は、当該代理人に交付すれば足りるとされた(規則第158条の16第3項において準用する規則第38条第1項)。

(4) 前記(3)の交付は、当該決定書を送付する方法によりすることができるとされた(規則第158条の16第3項において準用する規則第38条第2項)。

 

(5) 登記官は、相続人申出等添付書面が提出された場合において、相続人申出等を却下したときは、相続人申出等添付書面を還付するものとするとされた。ただし、偽造された書面その他の不正な相続人申出等のために用いられた疑いがある書面については、この限りでないとされた(規則第158条の16第3項において読み替えて準用する規則第38条第3項)。

 

(6) 前記(1)から(5)までのほか、相続人申出等の却下に関する取扱いについては、準則第28条の例によるものとする。

16 相続人申出等の補正期限の連絡等

相続人申出等の補正期限の連絡等に関する取扱いについては、準則第36条の例によるものとする。

 

17 相続人申出等の取下げ

(1)        相続人申出等の取下げは、次のア及びイに掲げる相続人申出等の区分に応じ、当該ア及びイに定める方法によってしなければならないとされた(規則第158条の17第1項において準用する規則第39条第1項)。

相続人電子申出 法務大臣の定めるところにより電子情報処理組織を使用して相続人申出等を取り下げる旨の情報を登記所に提供する方法

 

イ 相続人書面申出 相続人申出等を取り下げる旨の情報を記載した書面を登記所に提出する方法

(2) 相続人申出等の取下げは、登記完了後は、することができないとされた(規則第158条の17第1項において準用する規則第39条第2項)。

(3) 登記官は、相続人申出書又は相続人申出等添付書面が提出された場合において、相続人申出等の取下げがされたときは、相続人申出書又は相続人申出等添付書面を還付するものとするとされた(規則第158条の17第2項前段)。ただし、偽造された書面その他の不正な相続人申出等のために用いられた疑いがある書面については、この限りでないとされた(規則第158条の17第2項後段において準用する規則第38条第3項ただし書)。

(4)前記(1)から(3)までのほか、相続人申出等の取下げに関する取扱いについては、準則第29条の例によるものとする。

 

18 登記の方法等

(1) 相続人申出に関する登記は、付記登記によってするものとするとされた(規則第3条第3号)。

(2) 登記官は、同一の不動産に関し相続人申出等が二以上あったときは、これらに係る相続人申告登記等を受付番号の順序に従ってするものとする。同一の不動産に関し権利に関する登記の申請及び相続人申出等があったときも同様とする。

19 相続人申告登記等の完了通知

(1) 登記官は、相続人申告登記等を完了したときは、申出人に対し、職権による登記が完了した旨を通知しなければならないとされた。この場合において、申出人が二人以上あるときは、その一人に通知すれば足りるとされた(規則第158条の18第1項)。

(2) 前記(1)の通知は、当該登記に係る次に掲げる事項を明らかにしてしなければならないとされた(規則第158条の18第2項)。

ア 申出の受付の年月日及び受付番号

イ 不動産所在事項

ウ 登記の目的

(2)        前記(1)の通知は、次のア及びイに掲げる相続人申出等の区分に応じ、当該ア及びイに定める方法によるとされた(規則第158条の18第3項)。

ア 相続人電子申出 法務大臣の定めるところにより、登記官の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された通知事項(職権による登記が完了した旨及び前記(2)アからウまでに掲げる事項をいう。以下同じ。)を電子情報処理組織を使用して送信し、これを申出人又はその代理人の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法

イ 相続人書面申出 通知事項を記載した書面を交付する方法

なお、前記(1)の通知は、別記様式又はこれに準ずる様式により行うものとする。

(4) 送付の方法により通知事項を記載した書面の交付を求める場合には、申出人は、その旨及び送付先の住所を相続人申出等情報の内容としなければならないとされた(規則第158条の18第4項)。

(5) 送付の方法により通知事項を記載した書面を交付する場合における書面の送付は、前記(4)の住所に宛てて、書留郵便又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによってするものとするとされた(規則第158条の18第5項において準用する規則第55条第7項)。

(6) 前記(5)の送付に要する費用は、郵便切手又は信書便の役務に関する料金の支払のために使用することができる証票であって法務大臣が指定するものを提出する方法により納付しなければならないとされた(規則第158条の18第5項において準用する規則第55条第8項)。

(7) 前記(6)の指定は、告示してしなければならないとされた(規則第158条の18第5項において準用する規則第55条第9項)。

(8) 登記官は、次に掲げる場合には、前記(1)にかかわらず、申出人に対し、職権による登記が完了した旨の通知をすることを要しないとされた(規則第158条の18第6項)。

ア 前記(3)アの方法により通知する場合において、通知を受けるべき者が、登記官の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに通知事項が記録され、電子情報処理組織を使用して送信することが可能になった時から30日を経過しても、自己の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該通知事項を記録しないとき。

イ 前記(3)イの方法により通知する場合において、通知を受けるべき者が、登記完了の時から三月を経過しても、通知事項を記載した書面を受領しないとき。

なお、前記イの場合には、通知事項を記載した書面は適宜廃棄して差し支えない。送付の方法により通知事項を記載した書面を交付する場合において、当該書面が返戻されたときも、同様とする。

20 相続人申出等情報等の保存

相続人申出等情報及びその相続人申出等添付情報その他の相続人申出等に関する登記簿の附属書類については、権利に関する登記の申請情報及びその添付情報その他の登記簿の附属書類と同様に保存するものとする。なお、申請書類つづり込み帳には、権利に関する登記の申請と相続人申出等とを区別せず、受付番号の順序に従ってこれらの書類をつづり込むものとする。

 

21 登記事項証明書に付記する事項相続人申告事項を記載した登記事項証明書には、「「登記の目的」欄に「相続人申告」と記載されている登記は、所有権の登記名義人(所有者)の相続人からの申出に基づき、登記官が職権で、申出があった相続人の住所・氏名等を付記したものであり、権利関係を公示するものではない。」と記載するものとする。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

第2 相続人申告登記

1 相続人申出において明らかにすべき事項等

(1) 相続人申出において明らかにすべき事項

ア相続人申出においては、次に掲げる事項をも明らかにしてしなければならないとされた(規則第158条の19第1項)。

(ア) 所有権の登記名義人(申出人が所有権の登記名義人の相続人の地位を相続により承継した者であるときは、当該相続人(以下「中間相続人」という。))の相続人である旨

(イ) 所有権の登記名義人(申出人が所有権の登記名義人の相続人の地位を相続により承継した者であるときは、中間相続人)について相続が開始した年月日

(ウ) 中間相続人があるときは、次に掲げる事項(当該事項が既に所有権の登記に付記されているときを除く。)

a 中間相続人の氏名及び最後の住所

b 中間相続人が所有権の登記名義人の相続人である旨

c 所有権の登記名義人について相続が開始した年月日

イ前記ア(ウ)aの中間相続人の最後の住所として中間相続人の最後の本籍を相続人申出等情報の内容としたときは、当該本籍を中間相続人の最後の住所とみなして差し支えないものとする。

(2) 相続人申出において提供しなければならない情報

ア相続人申出においては、次に掲げる情報をもその相続人申出等情報と併せて登記所に提供しなければならないとされた(規則第158条の19第2項)。

(ア) 申出人が所有権の登記名義人(申出人が所有権の登記名義人の相続人の地位を相続により承継した者であるときは、中間相続人)の相続人であることを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

(イ) 申出人の住所を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

(ウ) 前記(1)ア(ウ)aからcまでに掲げる事項を相続人申出等情報の内容とするときは、次に掲げる情報

a 中間相続人が所有権の登記名義人の相続人であることを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報

b 中間相続人の最後の住所を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

イ前記ア(ア)又は(ウ)aに掲げる情報の一部として戸籍の謄本若しくは抄本若しくは戸籍に記載した事項に関する証明書又は除かれた戸籍の謄本若しくは抄本若しくは除かれた戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)が提供された場合であって、所有権の登記名義人である被相続人の登記記録上の住所が当該戸籍謄本等に記載された本籍と異なる場合で被相続人の住民票の写し又は戸籍の附票を提出することができないときは、「所有権の登

記名義人と戸籍謄本等に記載された被相続人とは同一である」旨の印鑑証明書付きの申出人の上申書をもって同一性を認めて差し支えないものとする。前記(1)ア(ウ)aからcまでに掲げる事項が既に所有権の登記に付記されている場合に前記ア(ア)に掲げる情報の一部として戸籍謄本等が提供された場合においても同様とするものとする。

(3) 申出人が第三次相続人である場合等の取扱い

所有権の登記名義人の相続人(以下この(3)、別紙1及び別紙3において「第一次相続人」という。)が当該登記名義人についての相続により所有権を取得し、当該相続により第一次相続人が取得した所有権を第一次相続人についての相続により第二次相続人(当該相続により当該所有権を取得した者をいう。以下この(3)、別紙1及び別紙3において同じ。)が取得し、当該相続により第二次相続人が取得した所有権を第二次相続人についての相続により申出人が取得した場合における相続人申出においては、第一次相続人及び第二次相続人のいずれも前記(1)及び(2)の中間相続人に該当することとなり、この場合の相続人申告事項に係る相続人申出等情報及び相続人申出等添付情報は、それぞれ次のア及びイのとおりとなる。

ア相続人申出等情報

(ア) 申出人の氏名及び住所(前記第1の2(1)ア(ア))

(イ) 申出人が第二次相続人の相続人である旨

(ウ) 第二次相続人について相続が開始した年月日

(エ) 第二次相続人の氏名及び最後の住所

(オ) 第二次相続人が第一次相続人の相続人である旨

(カ) 第一次相続人について相続が開始した年月日

(キ) 第一次相続人の氏名及び最後の住所

(ク) 第一次相続人が所有権の登記名義人の相続人である旨

(ケ 所有権の登記名義人について相続が開始した年月日

イ相続人申出等添付情報

(ア 申出人が第二次相続人の相続人であることを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

(イ 申出人の住所を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

(ウ) 第二次相続人が第一次相続人の相続人であることを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

(エ) 第二次相続人の最後の住所を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

(オ) 第一次相続人が所有権の登記名義人の相続人であることを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

(カ) 第一次相続人の最後の住所を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)なお、申出人が第二次相続人についての相続により所有権を取得し

た者(別紙1及び別紙3において「第三次相続人」という。)の相続人であるときも、同様となる。

2 相続人申出における相続人申出等添付情報の省略

(1) 法定相続情報一覧図の写し等の提供による添付省略

ア相続人申出をする場合において、申出人が所有権の登記名義人又は中間相続人についての相続に関して法定相続情報一覧図の写し(規則第247条の規定により交付された法定相続情報一覧図の写しをいう。以下同じ。)又は法定相続情報番号(11桁の番号であって、当該法定相続情報一覧図を識別するために登記官が付したものをいう。以下同じ。)を提供したときは、当該法定相続情報一覧図の写し又は当該法定相続情報番号の提供をもって、前記1(2)ア(ア)又は(ウ)aに掲げる情報(申出人が所有権の登記名義人等の相続人であることを証する情報又は中間相続人が所有権の登記名義人の相続人であることを証する情報)の提供に代えることができるとされた。ただし、法定相続情報番号を提供する場合にあっては、登記官が法定相続情報(規則第247条第1項に規定する法定相続情報をいう。以下同じ。)を確認することができるときに限るとされた(規則第158条の20第1項)。 -

イ相続人申出をする場合において、申出人が申出人の住所又は中間相続人の最後の住所が記載された法定相続情報一覧図の写し又は法定相続情報番号(法定相続情報一覧図に申出人の住所又は中間相続人の最後の住所が記載されている場合に限る。以下同じ。)を提供したときは、当該法定相続情報一覧図の写し又は当該法定相続情報番号の提供をもって、前記1(2)ア(イ)又は(ウ)bに掲げる情報(申出人の住所証明情報又は中間相続人の最後の住所証明情報)の提供

に代えることができるとされた。ただし、法定相続情報番号を提供する場合にあっては、登記官が法定相続情報を確認することができるときに限るとされた(規則第158条の20第2項)。

(2) 出生の年月日等の提供による添付省略

ア相続人申出をする場合において、申出人が申出人又は中間相続人についての次に掲げる情報(住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)第30条の9の規定により機構保存本人確認情報の提供を受けて登記官が申出人の住所又は中間相続人の最後の住所を確認することができることとなるものに限る。)を提供したときは、当該情報の提供をもって、前記1(2)ア(イ)又は(ウ)bに掲げる情報(申出人の住所証明情報又は中間相続人の最後の住所証明情報)の提供に

代えることができるとされた(規則第158条の21)。

(ア) 出生の年月日

(イ) 氏名の振り仮名(日本の国籍を有しない者にあっては、氏名の表音をローマ字で表示したもの)

イ前記ア(ア)及び(イ)に掲げる情報は、いずれも住民票に記載又は記録されたものを意味し、当該情報並びに相続人申出等情報の内容である申出人の氏名及び住所又は中間相続人の氏名及び最後の住所により、機構保存本人確認情報の提供を受けて登記官が申出人の住所又は中間相続人の最後の住所を確認することができる場合には、前記アによる添付省略が認められる。

なお、日本の国籍を有しない者であって、氏名の表音をローマ字で表示したものが住民票に記載又は記録されていない者については、日本の国籍を有する者とみなして前記ア(イ)を適用するものとする。

 

(3) 電子証明書の提供による添付省略

相続人申出をする場合において、申出人が相続人電子申出における相続人申出等情報又は委任による代理人の権限を証する情報に規則第42条の電子署名を行い、当該申出人の規則第43条第1項第1号に掲げる電子証明書を提供したときは、当該電子証明書の提供をもって、前記1(2)ア(イ)に掲げる情報(申出人の住所証明情報)の提供に代えることができるとされた(規則第158条の22)。

(4) 法定相続人情報の作成番号の提供による添付省略・・・

ア相続人申出をする場合において、申出人が所有権の登記名義人又は中間相続人に係る法定相続人情報(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の特例に関する省令(平成30年法務省令第28号。以下「所有者不明土地法特例省令」という。)第1条に規定する法定相続人情報をいう。以下同じ。)の作成番号(法定相続人情報に当該申出人が所有権の登記名義人又は中間相続人の相続人として記録されている場合に限る。)を提供したときは、当該作成番号の提供をもって、前記1(2)ア(ア)又は(ウ)aに掲げる情報(申出人が所有権の登記名義人等の相続人であることを証する情報又は中間相続人が所有権の登記名義人の相続人であることを証する情報)の提供に代えることができるとされた(改正省令による改正後の所有者不明土地法特例省令第8条第3項)。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=430M60000010028

 

イ相続人申出をする場合において、申出人が法定相続人情報の作成番号(法定相続人情報に当該申出人の住所が記録されている場合に限る。)を提供したときは、当該作成番号の提供をもって、前記1(2)ア(イ)に掲げる情報(申出人の住所証明情報)の提供に代えることができるとされた(改正省令による改正後の所有者不明土地法特例省令第8条第4項)。

3 相続人申告登記

(1) 相続人申告事項

ア登記官は、相続人申出があったときは、職権で、その旨、申出人の氏名及び住所並びに次に掲げる事項を所有権の登記に付記することができるとされた(法第76条の3第3項及び規則第158条の23第1項)。

(ア) 登記の目的

(イ) 申出の受付の年月日及び受付番号

(ウ) 登記原因及びその日付

(エ) 所有権の登記名義人(申出人が所有権の登記名義人の相続人の地位を相続により承継した者であるときは、中間相続人)について相続が開始した年月日

(オ) 中間相続人があるときは、次に掲げる事項(当該事項が既に所有権の登記に付記されているときを除く。)

a 中間相続人の氏名及び最後の住所

b 中間相続人が所有権の登記名義人の相続人である旨

c 所有権の登記名義人について相続が開始した年月日

イ前記ア(ウ)の登記原因は「申出」とし、登記原因の日付は相続人申出の受付の年月日とする。

(2) 2回以上の相続を付記するときの方法

登記官は、相続人申告登記によって2回以上の相続についての相続人申告事項を所有権の登記に付記するときは、当該相続ごとにこれを付記するものとするとされた(規則第158条の23第2項)。

(3) 相続人申告登記に関する登記の記録例

相続人申告登記に関する登記の記録(相続人申告事項の変更の登記、相続人申告事項の更正の登記又は相続人申告登記の抹消に関するものの記録を除く。)は、別紙1の振り合いによるものとする。

第3 相続人申告事項の変更の登記又は相続人申告事項の更正の登記

1 相続人申告事項の変更又は更正の申出

(1) 相続人申告事項の変更又は更正の申出をすることができる場合

相続人申告事項に変更又は錯誤若しくは遺漏があったときは、その相続人申告事項に係る相続人申告名義人又はその相続人は、登記官に対し、相続人申告事項の変更又は更正を申し出ることができるとされた(規則第158条の24第1項)。

(2) 相続人申告事項の変更又は更正の申出において明らかにすべき事項

ア前記(1)による申出においては、次に掲げる事項をも明らかにしてしなければならないとされた(規則第158条の24第2項)。

(ア) 登記原因及びその日付

 

(イ) 変更後又は更正後の相続人申告事項

イ相続人申出等情報の内容とする前記ア(ア)の登記原因及びその日付は、次の振り合いによるものとする。

(ア) 相続人申告事項(氏名)の変更の申出の場合

「年月日【氏名に変更が生じた年月日】氏名変更」

(イ) 相続人申告事項(住所)の変更の申出の場合

「年月日【住所に変更が生じた年月日】住所移転」

(ウ) 相続人申告事項の更正の申出の場合

「錯誤」

(3) 相続人申告事項の変更又は更正の申出において提供しなければならない情報

前記(1)による申出をする場合には、相続人申告事項について変更又は錯誤若しくは遺漏があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)をもその相続人申出等情報と併せて登記所に提供しなければならないとされた(規則第158条の24第3項)。

2 相続人申告事項の変更又は更正の申出における相続人申出等添付情報の省略

ア前記1(1)による申出(変更又は更正の申出)の申出人が相続人申出等情報と併せて申出人又は中間相続人についての次に掲げる情報(住民基本台帳法第30条の9の規定により機構保存本人確認情報の提供を受けて登記官が申出人の住所について変更若しくは錯誤若しくは遺漏があったこと又は中間相続人の最後の住所について錯誤若しくは遺漏があったことを確認することができることとなるものに限る。)を提供したときは、当該情報の提供をもって、申出人の住所について変更若しくは錯誤若しくは遺漏があったこと又は中間相続人の最後の住所について錯誤若しくは遺漏があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができるとされた(規則第158条の25)。

(ア) 出生の年月日

(イ) 氏名の振り仮名(日本の国籍を有しない者にあっては、氏名の表音をローマ字で表示したもの)

イ前記第2の2(2)イの取扱いは、前記アについても同様とする。

3 相続人申告事項の変更の登記又は相続人申告事項の更正の登記

(1) 登記官は、前記1(1)による申出(変更又は更正の申出)があったときは、職権で、相続人申告事項の変更の登記又は相続人申告事項の更正の登記をすることができるとされた(規則第158条の26第1項)。

(2) 登記官は、相続人申告事項の変更の登記又は相続人申告事項の更正の登記をするときは、登記の目的、申出の受付の年月日及び受付番号、登記原因及びその日付、変更後又は更正後の相続人申告事項並びに変更前又は更正前の相続人申告事項を抹消する記号を記録しなければならないとされた(規則第158条の26第2項)。

(3) 相続人申告事項の変更の登記又は相続人申告事項の更正の登記に関する登記の記録は、別紙2の振り合いによるものとする。

4 相続人申告事項の更正

(1) 相続人申告事項の更正の通知

登記官は、相続人申告登記、相続人申告事項の変更の登記又は相続人申告事項の更正の登記を完了した後に相続人申告事項に錯誤又は遺漏があることを発見したときは、遅滞なく、その旨をこれらの登記に係る相続人申出等をした者に通知しなければならないとされた。ただし、当該相続人申出等をした者が二人以上あるときは、その一人に対し通知すれば足りるとされた(規則第158条の27第1項)。

イ前記アの通知は、準則別記第71号様式に準ずる様式による通知書によりするものとし、当該通知をした場合には、各種通知簿(準則第18条第6号)に準則第117条の例により所定の事項を記載するものとする。また、当該通知書が返戻された場合の取扱いについては、準則第121条第1項の例によるものとする。

(2) 相続人申告事項の更正をすべき場合

登記官は、前記(1)アの場合において、相続人申告事項の錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、遅滞なく、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長の許可を得て、相続人申告事項の更正をしなければならないとされた。この場合において、登記官は、当該許可をした者の職名、許可の年月日及び登記の年月日を記録しなければならないとされた(規則第158条の27第2項)。

(3) 相続人申告事項の更正の完了の通知

ア登記官が前記(2)の相続人申告事項の更正をしたときは、その旨を前記(1)ア本文の相続人申出等をした者に通知しなければならないとされた(規則第158条の27第3項前段)。ただし、当該相続人申出等をした者が二人以上あるときは、その一人に対し通知すれば足りるとされた(規則第158条の27第3項後段において準用する同条第1項ただし書)。

イ前記アの通知は、準則別記第72号様式に準ずる様式による通知書によりするものとし、当該通知をした場合には、各種通知簿に準則第117条の例により所定の事項を記載するものとする。また、当該通知書が返戻された場合の取扱いについては、準則第121条第1項の例によるものとする。

(4) その他相続人申告事項の更正に関する取扱い

前記(1)から(3)までのほか、相続人申告事項の更正に関する取扱いについては、準則第104条、第105条及び第106条並びに不動産登記法附則第3条第1項の規定による指定を受けた事務に係る登記簿の改製作業等の取扱いについて(平成17年4月18日付け法務省民二第1009号当職通達)第2の例によるものとする。また、同通達第2の1に基づく包括的な許可をもって、同通達第2の1の例による前記(2)に係る包括的な許可とみなすものとする。

第4 相続人申告登記の抹消

1 相続人申告登記の抹消の申出

(1) 相続人申告登記の抹消の申出をすることができる場合

ア相続人申告登記が次の(ア又は(イのいずれかに該当するときは、当該相続人申告登記によって付記された者は、その付記に係る相続人申告登記の抹消の申出をすることができるとされた(規則第158条の28第1項)。

(ア 前記第1の15(1)アからエまでに掲げる事由のいずれかがあること。

(イ) 相続人申告名義人が相続の放棄をし、又は民法(明治29年法律第89号)第891条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったため法第76条の2第1項に規定する者に該当しなくなったこと。

イ前記アの申出をすることができる者は、前記第1の15(1)アからエまでに掲げる事由のいずれかに該当する相続人申出に係る相続人申告登記によって付記された者又は前記ア(イ)の事由に該当する相続人申告名義人のみであり、相続人申告名義人以外の者(相続人申告名義人の相続人を含む。)において前記アの申出をすることは認められない。

(2) 相続人申告登記の抹消の申出において提供しなければならない情報

前記(1)アによる申出においては、当該相続人申告登記が前記(1)ア(ア)又は(イ)に該当することを証する情報をもその相続人申出等情報と併せて登記所に提供しなければならないとされた(規則第158条の28第2項)。

2 相続人申告登記の抹消

(1) 登記官は、前記1(1)アによる申出(相続人申告登記の抹消の申出)があったときは、職権で、相続人申告登記の抹消をすることができるとされた(規則第158条の29第1項)。

(2) 登記官は、相続人申告登記の抹消をするときは、抹消の登記をするとともに、抹消すべき事項を抹消する記号を記録しなければならないとされた(規則第158条の29第2項)。

(3) 相続人申告登記の抹消に関する記録は、別紙3の振り合いによるものとする。

3 申出によらない相続人申告登記の抹消

(1) 登記官は、相続人申告登記、相続人申告事項の変更の登記又は相続人申告事項の更正の登記を完了した後にこれらの登記が前記第1の15(1)アからウまでのいずれかに該当することを発見したときは、当該登記に係る相続人申出等の申出人に対し、一月以内の期間を定め、当該申出人がその期間内に書面で異議を述べないときは、当該登記を抹消する旨を通知しなければならないとされた。ただし、通知を受けるべき者の住所又は居所が知れないときは、この限りでないとされた(規則第158条の30第1項)。

(2) 前記(1)本文の通知は、次の事項を明らかにしてしなければならないとされた(規則第158条の30第2項)。

ア抹消する登記に係る次に掲げる事項

(ア) 不動産所在事項及び不動産番号

(イ) 登記の目的

(ウ) 申出の受付の年月日及び受付番号

(エ) 登記原因及びその日付

(オ) 申出人の氏名及び住所

イ抹消する理由

(3) 登記官は、前記(1)の異議を述べた者がある場合において、当該異議に理由がないと認めるときは決定で当該異議を却下し、当該異議に理由があると認めるときは決定でその旨を宣言し、かつ、当該異議を述べた者に通知しなければならないとされた(規則第158条の30第3項)。

(4) 登記官は、前記(1)の異議を述べた者がないとき、又は前記(3)により当該異議を却下したときは、職権で、前記(1)の登記を抹消しなければならないとされた。この場合において、登記官は、登記記録に登記の抹消をする事由を記録しなければならないとされた(規則第158条の30第4項)。

(5) 前記(1)から(4)までのほか、申出によらない相続人申告登記の抹消に関する取扱いについては、準則第107条、第109条及び第110条の例によるものとする。

第5 経過措置

規則中相続人電子申出に関する規定は、規則附則第3条第1項の規定による改製を終えていない登記簿(電子情報処理組織による取扱いに適合しない登記簿を含む。)に係る申出については、適用しないとされた(改正省令附則第3条)。

第6 その他

前記第1から第5までのほか、相続人申出等に関する事務の取扱いについては、その性質上適当でないものを除き、権利に関する登記の申請に関する事務の取扱いの例によるものとする。