MEE科目のOutline - Will

はじめに

 NY Barを受験するにあたって、MBE(択一)科目についてはいわゆる「日本人ノート」と呼ばれているインプット用のノートがありますが、MBE科目以外のMEE科目についてはそのような教材がないため概念の理解に悩む受験生も多いのではないかと思います。私自身、時間もない中で英語のアウトラインとにらめっこしながら悪戦苦闘して、多少の予備知識があればいいのに!と思ったので、自分の知識整理も兼ねてMEE科目(の一部)の基本事項について整理したノートを作成しました。どこまで続くか分かりませんが、まずはみんなが悩みやすいと言われているWillから始めてみたいと思います。


Willとは?

 遺言(will)というタイトルになっているが、遺言だけでなく、相続にまつわる論点を取り扱う科目。

勉強のポイント

1.用語の暗記

 概念の理解や答案を書く上でどうしても必要になる。代替することができない用語も多く、覚えていないと答案をスムーズに書けないので、覚えるのが得策。

2.登場人物の把握

 誰がどのような地位に基づいて、どのような主張をしているのか(できるのか)を把握することが重要。登場人物が多数に上ると混乱すること必至なので、図を書いて整理するのも大事。

3.場面の把握

 Willが存在する場合はそのwillの成立や解釈が問題となるのに対して、willが存在しない場合は、いわゆる法定相続(遺言がない場合に誰がどれだけ相続するかを法律で定めたルール)が問題となるので、問題文の事案がどちらのパターンなのかを掴むことが重要。
 以下では、最初に遺言がない場合(intestacy)の説明をして、その後にwillについての主要論点の説明をしているが、Barでは後者(willが存在するケースが)の設問が多いので、前半(Intestacy)で混乱しそうな場合はひとまず後半(Execution of Will)から勉強を進めるのもあり。


Intestacy

 Intestacyとは、遺言(will)を残さないことである。有効なwillが存在しない場合、法律が定める一定のルールに従って遺産(estate)を分配されることになる。Willが作成されたが何らかの理由で無効になってしまった、といった場合にも検討する必要がある。
 以下ではそのような遺言がない場合のルール(rules of intestacy)について説明する。Rules of intestacyで相続できるのは、被相続人の配偶者(surviving spouse)とその他の近親者のみであり、相続人となる近親者については、直系卑属の相続人(Issue)とそれ以外の近親者に分けて考える必要がある。

誰が相続するのか

1.Surviving spouse(生存配偶者)

 Intestacyの重要な論点の1つは、どのような条件を満たせば"surviving spouse"に該当するのか、ということである。この論点は、family lawとも関係してくる。

1) 婚姻要件(Marriage Requirement)
 州によって異なるが、法的に婚姻していると認められる要件を充足する必要がある。
 ①推定上の配偶者(putative spouses)
  婚姻が法的に有効でない場合でも、当事者がin good faithで有効と信じている限り、putative spousesとsurviving spouseとして認められる。
 ②放棄(abandonment)
  全ての州ではないが、一定期間配偶者を放棄した場合、婚姻関係は終了するとされる。この場合、surviving spouseとはならない。
 ③別居(separation)
  単に別居している、離婚手続中の場合はspouseであり、最終的な婚姻解消があった場合のみspouseではなくなる。

2.Issue

 Issueとは、被相続人の直系卑属であり、相続人となる者である。このissueには、子、孫、ひ孫など全ての直系卑属が含まれる。

1) 養子(Adoption)
 Willにおいてchildrenは、養子(adoption)を含み、相続上は実子と同様に取り扱われる。

2) 婚外子(No-marital child)
 多くの州では、以下の場合のみ実父(natural farther)から相続できるとする。
 ①後に実父と実母が結婚した
 ②自分の子として引き取り、扶養するか、自分の家に受け入れた
 ③父の死後、父子関係が(by clear and convincing evidence)証明された
 ④父の生存中、父子関係が(by a preponderance of evidence)証明された

3.Ancestors and Remote Collaterals

 Surviving spouseやissueがいない場合には、遺産は、被相続人の直系尊属(ancestors)や傍系血族(remote collateral relatives)に分配される。

4.生存要件(Survival Requirements)

 USDAは、被相続人の死亡後120時間生存していたことを示す証拠(by clear and convincing evidence)を要求する。例えば、被相続人とその子供が同じ交通事故で死亡した場合になどに問題となり、子供が被相続人の死亡から120時間生存していたことが証明できない限り、その子供は被相続人の死亡時に死亡していたものとして扱われる。

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