月の人

精神科医/ライター。 ポップカルチャーは裏切らないをモットーに Real Soun…

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精神科医/ライター。 ポップカルチャーは裏切らないをモットーに Real Soundでも執筆中→https://realsound.jp/person/about/812327 依頼などありましたら本noteの仕事依頼タブに連絡先あります

マガジン

  • ポップカルチャーは裏切らない

    ”好きなものを好きだと言う"を基本姿勢に、ライブレポート、ディスクレビュー、感想文、コラムなどを書いている、本noteのメインマガジン。

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  • ポッドキャスト「ポップカルチャーは裏切らない」

    毎週火曜に更新予定のポッドキャスト。暇つぶしにだらだらと好きなカルチャーについて喋っています。

記事一覧

固定された記事

「ぼっち・ざ・ろっく!」とアジカンが寄り添う自傷的自己愛

臨床場面で向き合う自傷的自己愛精神科外来では様々な病状を抱えた患者と向き合い治療を行う。ストレスの原因となる職場や家庭の環境調整を行い、薬剤を適切に使用すること…

月の人
1年前
283

“穴”を前にして語ること/加藤拓也『滅相も無い』

加藤拓也が脚本・演出を務めたSFドラマ『滅相も無い』は語り甲斐しかない作品だった。「演劇をやれば映像的だ、映画をやれば演劇的だと言われることに嫌気が差し」(参照)、…

月の人
1日前
9

円環的時間を生きる〜2024.03.09 Base Ball Bear『天使だったじゃないか』ツアー@福岡DRUM Be-1

もう3ヶ月も前のことだが、今こそBase Ball Bear『天使だったじゃないかツアー』の福岡公演を振り返ってみようと思う。基本的にはいかに早く出すかを考えてきたライブレポ…

月の人
5日前
9

2024年5月を振り返る

今月書いたnoteディスクレビューを2本。こういうのサラッとした短文が良いのはわかってるんですが、書いてるうちにあれもこれも、となってしまいます。 映画の感想は1本。…

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6日前

2024年5月に更新したPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

今月は2本。この2本でオープニングSEが終了することを散々仄めかしましたが7/9まではあのSEで出来そうなので、よろしくお願いします 5月末でSpotify for Podcastersでの録…

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8日前
13

バンドたちはなぜメシを食うアーティスト写真やMVを撮るのか

MONO NO AWAREの新曲「同釜」、そのミュージックビデオは“メシを食うこと”を中心に据えた作品だった。和中洋と次元を移ろいながらメシを食う。最後に演奏シーンがあり、…

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2週間前
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ケアも寄り添いも無いとして/『私のトナカイちゃん』【ドラマの感想】

イギリス・スコットランドのコメディアン/劇作家であるリチャード・ガッドが主演・脚本・製作総指揮を担ったNetflixドラマ『私のトナカイちゃん』が凄まじかった。売れない…

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2週間前
11

アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる③(52話-76話)

3月に①、4月の②に続き、ラスト。アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』を論考する記事のシリーズ。初期の癖のあるシュールな作風から、中ボス戦を重ねて徐々に明解な笑いへと変…

月の人
3週間前

“ロックバンドはなぜメシを食うアーティスト写真やMVを撮るのか”ということを真剣に考えようと思いますので、皆さんも是非、知っているメシ食いアー写、メシ食いMV、メシ食いジャケットなどありましたらコメントのほうにお知らせくださいませ!

https://x.com/shapemoon/status/1790726835401277883?s=46&t=-k9_j8GZ1rpOiu8zMMHJag

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3週間前
4

異化される現世/Tempalay『((ika))』【ディスクレビュー】

Tempalay、3年ぶり5枚目のオリジナルアルバム『((ika))』に取り憑かれている。19曲72分という大巨編でありながら、その多彩で奇異な楽曲たちに身を委ねているうちにいつの…

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3週間前
16

罪の在る結末/濱口竜介『悪は存在しない』【映画感想】

濱口竜介監督による『ドライブ・マイ・カー』以来の長編映画『悪は存在しない』。その重厚な映画体験を今も反芻している。というより、あのように切断的に現実へと投げ出さ…

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1か月前
16

境界で踊る〜橋本絵莉子『街よ街よ』【ディスクレビュー】

橋本絵莉子の2ndアルバム『街よ街よ』に感動しきっている。前作『日記を燃やして』では柔らかなアレンジはアコースティックギターの音色も印象的だったが、本作はずっしり…

月の人
1か月前
9

2024年4月を振り返る

新年度。育休明けの仕事にヘロヘロになる日もありますが、色々書きました。 今月書いたnote映画の感想を2本。どちらも今観ておいて良かったと思う作品。 そしてドラマが…

月の人
1か月前
4

2024年4月のPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

今月は2回、合計4本の更新。 まずはハタショーさんとの定例企画「ポップカルチャー定期健診」。今回は2024年1-3月までの昨日の中から気に入ったものを3本ずつ、そして今あ…

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1か月前
14

また甘えられる世界へ〜『異人たち』と『異人たちとの夏』【映画感想】

山田太一の小説『異人たちとの夏』を原作とし、アンドリュー・ヘイ監督がアンドリュー・スコットを主演に迎えて映画化した『異人たち』。孤独に生きる脚本家の男がふと幼少…

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1か月前
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《あ》ASIAN KUNG-FU GENERATION 【50音で語る】

せめて週に1度はなんらかのnoteを更新したい、しかしライフステージも変わり毎週新作の何かを摂取できるわけじゃない。ということでその代わりになる、長くできそうな企画…

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1か月前
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固定された記事

「ぼっち・ざ・ろっく!」とアジカンが寄り添う自傷的自己愛

臨床場面で向き合う自傷的自己愛精神科外来では様々な病状を抱えた患者と向き合い治療を行う。ストレスの原因となる職場や家庭の環境調整を行い、薬剤を適切に使用することで改善するのが一般的だが、そういった治療だけでは回復に至らない患者も多い。 たとえば過剰に思える程の自己否定を行う患者たち。自分の外見やステータスを卑下したり、社会や家庭環境に不満を述べたりしながら、周囲を困らせる行動を取ったり、時に希死念慮に繋がったりもする。そのような"生き辛さそのもの“を訴える患者はスッキリとし

“穴”を前にして語ること/加藤拓也『滅相も無い』

加藤拓也が脚本・演出を務めたSFドラマ『滅相も無い』は語り甲斐しかない作品だった。「演劇をやれば映像的だ、映画をやれば演劇的だと言われることに嫌気が差し」(参照)、本作ではそのどちらの手法も用いられて作られている。 自分の人生を8人が語り合うBBQの場面は映像作品として見せられるが、それぞれの語りの内容は舞台上で披露する様を見せられる。舞台上には劇伴を演奏するUNCHAINがおり、役柄の決められていない俳優たちが8人の人生の場面を演じて再現していく。ドラマの中に演劇がある構

円環的時間を生きる〜2024.03.09 Base Ball Bear『天使だったじゃないか』ツアー@福岡DRUM Be-1

もう3ヶ月も前のことだが、今こそBase Ball Bear『天使だったじゃないかツアー』の福岡公演を振り返ってみようと思う。基本的にはいかに早く出すかを考えてきたライブレポートであるが、思考を熟成することでより深まった部分もあるし、今回の新作『天使だったじゃないか』の意義を考えることに繋がるような気がしたからだ。 ティーンネイジ・ファンクラブが流れ続ける開場SEが終わり、ライブは幕を開ける。1曲目「ランドリー」からまずもってその出音がこれまでとまるで違うことに驚く。特に小

2024年5月を振り返る

今月書いたnoteディスクレビューを2本。こういうのサラッとした短文が良いのはわかってるんですが、書いてるうちにあれもこれも、となってしまいます。 映画の感想は1本。これはあまり他の人が書いてない観点だと思います。おすすめ! ドラマの感想は1本。観るつもりのなかった作品がとんでもなかったというケース。危うく逃すところだった。 Twitterで小バズりしたツイートから発展させたもの。「真剣に考えるとか言ってメシ食ってるアー写集めてるだけ」とかRT先で言われたのでクソムカつ

2024年5月に更新したPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

今月は2本。この2本でオープニングSEが終了することを散々仄めかしましたが7/9まではあのSEで出来そうなので、よろしくお願いします 5月末でSpotify for Podcastersでの録音/編集が終了する事態に際して最近の回で移転などをほのめかしてきましたが、やはりここでPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』を続行します、という宣言の回です。あと時間が余ったので、「自由に踊って」問題について喋りました。 別刊 is Back!!! 高校時代の同級生と録音する

バンドたちはなぜメシを食うアーティスト写真やMVを撮るのか

MONO NO AWAREの新曲「同釜」、そのミュージックビデオは“メシを食うこと”を中心に据えた作品だった。和中洋と次元を移ろいながらメシを食う。最後に演奏シーンがあり、そして高笑いする玉置周啓(Vo/Gt)もいる。異様なビデオだ。 このようにメシを食うミュージックビデオや、もしくはメシを食うジャケットのアートワーク、そしてメシを食うアーティスト写真などはバンドにおいては思いつく限りでもかなりある。これはどんな意味があるのだろう、と考えたくなった。 そこで上のツイートを

ケアも寄り添いも無いとして/『私のトナカイちゃん』【ドラマの感想】

イギリス・スコットランドのコメディアン/劇作家であるリチャード・ガッドが主演・脚本・製作総指揮を担ったNetflixドラマ『私のトナカイちゃん』が凄まじかった。売れないお笑い芸人ドニー・ダン(リチャード・ガッド)がバイト先の酒場で、金が無くて泣き出しそうになっていた女性マーサ(ジェシカ・ガニング)に紅茶を奢る。その日を境にマーサはドニーのストーカーになり、次第にエスカレートしていく、というのが本作の導入部のあらすじだ。 マーサのストーカー行為はホラーサスペンス、またはブラッ

アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる③(52話-76話)

3月に①、4月の②に続き、ラスト。アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』を論考する記事のシリーズ。初期の癖のあるシュールな作風から、中ボス戦を重ねて徐々に明解な笑いへと変貌していく流れについてをここまで書いてきた。 これは有名な話だが放送最後の半年はノンスポンサーで放送された。テレビ朝日と東映アニメーションが共同出資で存続させただの、スタッフキャストが身銭を切って存続させただの、真偽不明の都市伝説が出回っており、このような噂の数々もアニメボーボボが伝説とされている要因だろう。さて、

“ロックバンドはなぜメシを食うアーティスト写真やMVを撮るのか”ということを真剣に考えようと思いますので、皆さんも是非、知っているメシ食いアー写、メシ食いMV、メシ食いジャケットなどありましたらコメントのほうにお知らせくださいませ! https://x.com/shapemoon/status/1790726835401277883?s=46&t=-k9_j8GZ1rpOiu8zMMHJag

異化される現世/Tempalay『((ika))』【ディスクレビュー】

Tempalay、3年ぶり5枚目のオリジナルアルバム『((ika))』に取り憑かれている。19曲72分という大巨編でありながら、その多彩で奇異な楽曲たちに身を委ねているうちにいつの間にか時が過ぎる。幽玄で、猥雑で、耽美で、乱暴で、果てしのない幻想譚。紛れもなく最高傑作だろう。 本作最古のシングル「あびばのんのん」のインタビューで前作『ゴーストアルバム』についてフロントマンの小原綾斗はこう語っていた。またその後『Q/憑依さん』のインタビューでも、メンタルがかなり落ち込んでいた

罪の在る結末/濱口竜介『悪は存在しない』【映画感想】

濱口竜介監督による『ドライブ・マイ・カー』以来の長編映画『悪は存在しない』。その重厚な映画体験を今も反芻している。というより、あのように切断的に現実へと投げ出される結末を受け取っておきながらそうしないわけにはいかない。 緊張と緩和、長回しとぶつ切り、相反する要素を織り交ぜながら得体の知れない感情を炙り出してくる本作。全編に渡って人間の心が持つ柔らかさと不気味さの両方が喉元に突きつけられる。私なりの解釈で本作の精神を分析していきたい。 疎通の可能性 本作の舞台となる町はグラ

境界で踊る〜橋本絵莉子『街よ街よ』【ディスクレビュー】

橋本絵莉子の2ndアルバム『街よ街よ』に感動しきっている。前作『日記を燃やして』では柔らかなアレンジはアコースティックギターの音色も印象的だったが、本作はずっしりとしたグルーヴを活かしたロックバンドらしさ溢れる1作。ライブでの経験値が制作にも反映された好例だろう。 40歳を迎えた橋本が自身の年齢を「若くもないけど老いてもいない、この感じがちょうど踊り場っぽいなって。(中略)ただスッと過ぎていくだけ、次の階に向かうための通り道にすぎないっていうか。」と上記インタビューで語る。

2024年4月を振り返る

新年度。育休明けの仕事にヘロヘロになる日もありますが、色々書きました。 今月書いたnote映画の感想を2本。どちらも今観ておいて良かったと思う作品。 そしてドラマがとにかく面白い春。どうなってるんですか。嬉しい。 始めたからにはやり遂げる。ボーボボ論考その②。 そして今月からの新企画。不定期に、新作を最近観れてナイヨ~、語るものがナイヨ~っていう時に現れます。皆様へ送りたい念も最後に書いてます。 今月の寄稿記事余談ですが今回の米津玄師の記事は、私がReal Soun

2024年4月のPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

今月は2回、合計4本の更新。 まずはハタショーさんとの定例企画「ポップカルチャー定期健診」。今回は2024年1-3月までの昨日の中から気に入ったものを3本ずつ、そして今あえて観ている過去作1本ずつ紹介。 以下、トークトピックス。 ハタショーさん→🚩 月の人→🌙 【前編】 街裏ぴんく ランジャタイのがんばれ!地上波 王様戦隊キングオージャー 🚩『ユニコーンオーバーロード』(ゲーム) こまばアゴラ劇場 🌙Base Ball Bear『天使だったじゃないか』(音楽) フジフ

また甘えられる世界へ〜『異人たち』と『異人たちとの夏』【映画感想】

山田太一の小説『異人たちとの夏』を原作とし、アンドリュー・ヘイ監督がアンドリュー・スコットを主演に迎えて映画化した『異人たち』。孤独に生きる脚本家の男がふと幼少期の住んでいた家を訪れると、そこには30年前に亡くなった両親がその時のまま生活しており、かつてのような親子としての交流を行う、というあらすじだ。 このあらすじは大林宣彦監督、風間杜夫主演による1988年の日本映画版にも共通している。今回の英国版で異なるのは主人公がゲイであること、彼とタワーマンションの中で交流を持つ人

《あ》ASIAN KUNG-FU GENERATION 【50音で語る】

せめて週に1度はなんらかのnoteを更新したい、しかしライフステージも変わり毎週新作の何かを摂取できるわけじゃない。ということでその代わりになる、長くできそうな企画をと思ってまるで古のインターネットかのようなテーマでnoteを書いていこうと思います。 【50音で語る】ということで"あ"から"ん"まで、その頭文字から始まる自分の好きなものやことについて書いていきます。基本的には自分の根源や血肉に近いような、高校生ぐらいまでに摂取したものについてスラスラ語っていこうと思います。