月の人

精神科医/ライター。 ポップカルチャーは裏切らないをモットーに Real Soun…

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精神科医/ライター。 ポップカルチャーは裏切らないをモットーに Real Soundでも執筆中→https://realsound.jp/person/about/812327 依頼などありましたら本noteの仕事依頼タブに連絡先あります

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    ”好きなものを好きだと言う"を基本姿勢に、ライブレポート、ディスクレビュー、感想文、コラムなどを書いている、本noteのメインマガジン。

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    一端の若手精神科医が日々の診療で感じていること、そこから連想したポップカルチャーの話をまじえながら書き残していく文章のシリーズです。

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「ぼっち・ざ・ろっく!」とアジカンが寄り添う自傷的自己愛

臨床場面で向き合う自傷的自己愛精神科外来では様々な病状を抱えた患者と向き合い治療を行う。ストレスの原因となる職場や家庭の環境調整を行い、薬剤を適切に使用することで改善するのが一般的だが、そういった治療だけでは回復に至らない患者も多い。 たとえば過剰に思える程の自己否定を行う患者たち。自分の外見やステータスを卑下したり、社会や家庭環境に不満を述べたりしながら、周囲を困らせる行動を取ったり、時に希死念慮に繋がったりもする。そのような"生き辛さそのもの“を訴える患者はスッキリとし

    • アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる③(52話-76話)

      3月に①、4月の②に続き、ラスト。アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』を論考する記事のシリーズ。初期の癖のあるシュールな作風から、中ボス戦を重ねて徐々に明解な笑いへと変貌していく流れについてをここまで書いてきた。 これは有名な話だが放送最後の半年はノンスポンサーで放送された。テレビ朝日と東映アニメーションが共同出資で存続させただの、スタッフキャストが身銭を切って存続させただの、真偽不明の都市伝説が出回っており、このような噂の数々もアニメボーボボが伝説とされている要因だろう。さて、

      • “ロックバンドはなぜメシを食うアーティスト写真やMVを撮るのか”ということを真剣に考えようと思いますので、皆さんも是非、知っているメシ食いアー写、メシ食いMV、メシ食いジャケットなどありましたらコメントのほうにお知らせくださいませ! https://x.com/shapemoon/status/1790726835401277883?s=46&t=-k9_j8GZ1rpOiu8zMMHJag

        • 異化される現世/Tempalay『((ika))』【ディスクレビュー】

          Tempalay、3年ぶり5枚目のオリジナルアルバム『((ika))』に取り憑かれている。19曲72分という大巨編でありながら、その多彩で奇異な楽曲たちに身を委ねているうちにいつの間にか時が過ぎる。幽玄で、猥雑で、耽美で、乱暴で、果てしのない幻想譚。紛れもなく最高傑作だろう。 本作最古のシングル「あびばのんのん」のインタビューで前作『ゴーストアルバム』についてフロントマンの小原綾斗はこう語っていた。またその後『Q/憑依さん』のインタビューでも、メンタルがかなり落ち込んでいた

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        「ぼっち・ざ・ろっく!」とアジカンが寄り添う自傷的自己愛

        • アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる③(52話-76話)

        • “ロックバンドはなぜメシを食うアーティスト写真やMVを撮るのか”ということを真剣に考えようと思いますので、皆さんも是非、知っているメシ食いアー写、メシ食いMV、メシ食いジャケットなどありましたらコメントのほうにお知らせくださいませ! https://x.com/shapemoon/status/1790726835401277883?s=46&t=-k9_j8GZ1rpOiu8zMMHJag

        • 異化される現世/Tempalay『((ika))』【ディスクレビュー】

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          罪の在る結末/濱口竜介『悪は存在しない』【映画感想】

          濱口竜介監督による『ドライブ・マイ・カー』以来の長編映画『悪は存在しない』。その重厚な映画体験を今も反芻している。というより、あのように切断的に現実へと投げ出される結末を受け取っておきながらそうしないわけにはいかない。 緊張と緩和、長回しとぶつ切り、相反する要素を織り交ぜながら得体の知れない感情を炙り出してくる本作。全編に渡って人間の心が持つ柔らかさと不気味さの両方が喉元に突きつけられる。私なりの解釈で本作の精神を分析していきたい。 疎通の可能性 本作の舞台となる町はグラ

          罪の在る結末/濱口竜介『悪は存在しない』【映画感想】

          境界で踊る〜橋本絵莉子『街よ街よ』【ディスクレビュー】

          橋本絵莉子の2ndアルバム『街よ街よ』に感動しきっている。前作『日記を燃やして』では柔らかなアレンジはアコースティックギターの音色も印象的だったが、本作はずっしりとしたグルーヴを活かしたロックバンドらしさ溢れる1作。ライブでの経験値が制作にも反映された好例だろう。 40歳を迎えた橋本が自身の年齢を「若くもないけど老いてもいない、この感じがちょうど踊り場っぽいなって。(中略)ただスッと過ぎていくだけ、次の階に向かうための通り道にすぎないっていうか。」と上記インタビューで語る。

          境界で踊る〜橋本絵莉子『街よ街よ』【ディスクレビュー】

          2024年4月を振り返る

          新年度。育休明けの仕事にヘロヘロになる日もありますが、色々書きました。 今月書いたnote映画の感想を2本。どちらも今観ておいて良かったと思う作品。 そしてドラマがとにかく面白い春。どうなってるんですか。嬉しい。 始めたからにはやり遂げる。ボーボボ論考その②。 そして今月からの新企画。不定期に、新作を最近観れてナイヨ~、語るものがナイヨ~っていう時に現れます。皆様へ送りたい念も最後に書いてます。 今月の寄稿記事余談ですが今回の米津玄師の記事は、私がReal Soun

          2024年4月を振り返る

          2024年4月のPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

          今月は2回、合計4本の更新。 まずはハタショーさんとの定例企画「ポップカルチャー定期健診」。今回は2024年1-3月までの昨日の中から気に入ったものを3本ずつ、そして今あえて観ている過去作1本ずつ紹介。 以下、トークトピックス。 ハタショーさん→🚩 月の人→🌙 【前編】 街裏ぴんく ランジャタイのがんばれ!地上波 王様戦隊キングオージャー 🚩『ユニコーンオーバーロード』(ゲーム) こまばアゴラ劇場 🌙Base Ball Bear『天使だったじゃないか』(音楽) フジフ

          2024年4月のPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

          また甘えられる世界へ〜『異人たち』と『異人たちとの夏』【映画感想】

          山田太一の小説『異人たちとの夏』を原作とし、アンドリュー・ヘイ監督がアンドリュー・スコットを主演に迎えて映画化した『異人たち』。孤独に生きる脚本家の男がふと幼少期の住んでいた家を訪れると、そこには30年前に亡くなった両親がその時のまま生活しており、かつてのような親子としての交流を行う、というあらすじだ。 このあらすじは大林宣彦監督、風間杜夫主演による1988年の日本映画版にも共通している。今回の英国版で異なるのは主人公がゲイであること、彼とタワーマンションの中で交流を持つ人

          また甘えられる世界へ〜『異人たち』と『異人たちとの夏』【映画感想】

          《あ》ASIAN KUNG-FU GENERATION 【50音で語る】

          せめて週に1度はなんらかのnoteを更新したい、しかしライフステージも変わり毎週新作の何かを摂取できるわけじゃない。ということでその代わりになる、長くできそうな企画をと思ってまるで古のインターネットかのようなテーマでnoteを書いていこうと思います。 【50音で語る】ということで"あ"から"ん"まで、その頭文字から始まる自分の好きなものやことについて書いていきます。基本的には自分の根源や血肉に近いような、高校生ぐらいまでに摂取したものについてスラスラ語っていこうと思います。

          《あ》ASIAN KUNG-FU GENERATION 【50音で語る】

          アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる②(25話-51話)

          前回1-24話にあたる感想を書いた。アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』の初期の作風、そして一貫して存在する笑いの概要についてはひと通り網羅できたつもりである。今回の記事はアニメの中盤戦にあたる25-51話についてを書こうと思う。 ところで、驚くようなニュースが飛び込んできた。ボーボボの舞台化が決定したのである。このやはり今年はボーボボと向き合うべき年だと確信したので、意気揚々とこの記事も書き進めたいと思う。異形のY2Kとしてのボーボボ考である。 シチュエーション大喜利の台頭2

          アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる②(25話-51話)

          皮膚との対話/『寄生獣ーザ・グレイー』【ドラマ感想】

          岩明均原作による漫画『寄生獣』を韓国で実写化されたNetflix『寄生獣ーザ・グレイー』。人の脳を奪って寄生する地球外生命体と人類の戦いという漫画の基本要素は引き継ぎつつも、寄生生物が韓国に飛来したという設定で繰り広げられる実質の完全新作。青年漫画らしい薄暗くもエモーショナルな作品性を見事に汲み取り、さらにスピーディな展開や血生臭さを付与し、激しく良い"動き"で魅せる良質で見ごたえあるドラマ版だ。 原作では主人公・泉新一とその右手に寄生したミギーの相棒的な関係性が全面に出さ

          皮膚との対話/『寄生獣ーザ・グレイー』【ドラマ感想】

          Netflix「三体」シーズン1が残してくれた関心について【ドラマの感想】

          Netflixで3/21より配信開始となったドラマ「三体」が異次元の面白さであった。元々原作小説の時点で興味はあったが、ドラマ化が決まり、ならばそちらをと思い先延ばしにしておいたのが功を奏してか、全ての展開に驚嘆しっぱなしである。 宇宙スケールのSF作品であり、得体の知れない概念をドカンと突きつけてくる一方、オックスフォードの同級生5人が知力を結集して好戦的な爺さんの下で大義を果たすお仕事ドラマらしい熱量もある。この贅沢な盛り合わせは実に魅惑的だ。 ここでは本作に散りばめ

          Netflix「三体」シーズン1が残してくれた関心について【ドラマの感想】

          分裂し続けるもの/クリストファー・ノーラン『オッペンハイマー』【映画感想】

          クリストファー・ノーランの12作目の長編映画『オッペンハイマー』を観た。原子爆弾の開発の中心人物であるオッペンハイマー博士を描いた本作。映画2~3本分とも言えるほどの膨大な情報量に圧倒されながら、まさにこれが劇場で観る映画体験であると強烈な実感を覚えた。 時代の異なる3つの物語を並走させる、ノーランらしい時間のコントロール演出で伝記モノである以上の語り口を提示する本作。この映画について、オッペンハイマー自身の“分裂”、そしてもたらされた最悪の結末を幼少期より教え込まれてきた

          分裂し続けるもの/クリストファー・ノーラン『オッペンハイマー』【映画感想】

          歌い踊り揺れる/宮藤官九郎『不適切にもほどがある!』【ドラマの感想】

          宮藤官九郎脚本によるTBS金曜22時ドラマ最新作『不適切にもほどがある!』が完結した。”好きなものを好きと言う“が基本姿勢でありながらもここ数年は総合点を重視した嗜好になっていたが、本作に関しては部分点が突き抜けすぎて自分にとってかなり好きなドラマになってしまった。 確かに雑な描写は多々あるし、正直サカエ(吉田羊)は最後までどう捉えれば良いか難しかった。しかしそれだけで見限ることは私には出来ない。今の私に必要な"揺さぶり"をくれる作品に思えたからだ。ゆえにこの記事では個人的

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          2024年3月を振り返る

          育休の隙間を縫ってあれこれ書きました。 今月書いた記事ベボベのレビューはかなり力が入った。人生と音楽って重なるもんですね。 読書、続いてます。森見登美彦は作風の地続き感がアーティストぽくて感想が書きやすい。 街裏ぴんくさん、おめでとうございます。お笑いをどう語るか、はまだまだ模索中。 自分のルーツと向き合うことも今年はしっかりやっていこうと思います。ボーボボ論考は全3回を予定。 ずっと書きそびれていたジブリパークの記録を、オスカー記念に。 遅日記は月イチペースかな

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