マハーバーラタ/4-12.パーンダヴァ達の捜索

4-12.パーンダヴァ達の捜索

ドゥルヨーダナはスパイを各国に送ってパーンダヴァ達の居場所を探していたが、良い知らせは未だにやってこなかった。

ドゥルヨーダナは弟達やラーデーヤ、ドローナ、ビーシュマ、トリガルタ兄弟と共に集会場でスパイ達の報告を聞いた。
「パーンダヴァ達を探して国中の隅々まで行きましたが見つかりませんでした。全ての森の中もくまなく探しましたが、見つかりません」
「ドヴァーラカーに行って探しましたが、見つかりません。町の人々はまるでパーンダヴァ達のことすら知らない様子でした」
「パーンチャーラにもいませんでした。彼らが生きている気配が全くしません。ドゥルヨーダナ様、もうあなたはライバル無しでこの世界を楽しんでよいと思います」
「パーンダヴァ達は発見できませんでしたが、しいて言えば小さなニュースがあります。マツヤ国の軍の総司令官キーチャカをご存じですね? トリガルタを打ち負かしたことがあるあの英雄が暗殺されたそうです。一人の女性のせいで彼は死んだと人々は噂しています。彼の弟達、ウパキーチャカもその女性の夫のガンダルヴァによって殺されたそうです」

ドゥルヨーダナはスパイ達をねぎらい、報酬を与えて帰らせた。

「一体どこへ行ったんだ? もう一度探さないと。時間がない。あと数日で13年目が終わってしまう。
もし発見できなければ、彼らは私の前に現れて国を要求してくるだろう。もっと有能なスパイを送らなければ。
いや、これだけ探しても見つからないということは、スパイ達の言う通り、もう彼らは死んだのだろう。そうであれば素晴らしいことだが」

ドローナが立ち上がった。
「ドゥルヨーダナ、そんな期待をするんじゃない。ユディシュティラ達がそんなに早死にするはずがない。そして、なぜそんなにやっきになって探そうとするんだ?
あなたは不正な方法で森に送り、彼らの富を13年間楽しんだんだ。彼らが戻ってきて王国を要求するなら返してあげればいいのだ。
そうすればあなたの名声は不滅のものとなるだろう」

ビーシュマが続いた。
「ドローナ先生の言うことは正しい。
ドゥルヨーダナよ。私のアドバイスはあなたの耳を喜ばせないと思うが、聞きなさい。
パーンダヴァ達が滅びることはないだろう。きっと死んではいない。
ユディシュティラ達がいる場所を知りたいのだろう? ならば、彼らを探す手がかりを教えよう。
ダルマある所に勝利あり。
ユディシュティラがいる所には実りあり。
ユディシュティラがいる場所には妬みも、野蛮な言葉も、怒りも無く、ユディシュティラのような祈り深い人々が集まる。
雨が降るべき時に雨が降る。ユディシュティラの住む場所には素晴らしい収穫があり、花は甘く香り、果物は瑞々しく甘くなる。
ユディシュティラが住む場所では牛達が甘いミルクを出し、いつも陽気な空気がある。
そんな栄光を持つ国を探すといいだろう。
だが、今話したこのアドバイスはドゥルヨーダナという王の歪んだ望みを叶えるためのご機嫌取りの言葉だ。
では、あなたを愛する祖父として言おう。
パーンダヴァ達はもう十分苦難に耐えてきた。
あなたは一人の王子だ。気前の良い性格を持つ王子だ。
その寛大な性格をもって、なぜ彼らに王国を返してあげられないのか?
あなたはもう子供ではない。これからの日々は平穏に過ごしたいと思わないのか? 年を重ねることは人の考えを優しくすると言う。この13年の終わりを仲違いで終わらせないようにできないのか? なぜ破滅の道を歩もうとするのだ?」

ドゥルヨーダナは祖父の話が気に入らなかった。
顔を歪めて話し始めた。
「祖父よ、それはない。私はパーンダヴァ達に対する憎悪の気持ちを手放すことはない。彼らは敵だ。王国も返さない。
もう12年森へ送る為なら、天界だろうが地上だろうがどこでも探します」

クリパが話し始めた。
「ドゥルヨーダナ、もう死ぬ覚悟を決めたのだね。
パーンダヴァ達はもうすぐ姿を現すだろう。そして王国を返さないと心に決めているのであれば、きっと戦争となるだろう。
であれば、あなたのすべきことは軍隊を集めることだ。戦争になった時に味方になる者を見つけておくのだ。
怒ったパーンダヴァ達は猛毒を持つ蛇のようなものだ。決してあなたに容赦したりしない。もう時間がない。今すぐにでも準備を始めるべきだ。
たくさんの王達に会って説得し、味方につくよう約束を得るのだ」

ドゥルヨーダナはしばらく熟考した。
突然体を起こして再びスパイを呼んだ。
「キーチャカの死についてもっと詳しく話してくれ。知っていることは全てだ」
マツヤ国から帰ってきたスパイはさらに詳しく報告した。

ドゥルヨーダナはしばらく考え込んでから話し始めた。
「そうか。きっとそうだ。
この地上において肉体の力、勇敢さにおいてインドラよりも勝るのはたった四人。
バララーマ、ビーマ、シャルヤ、そしてキーチャカ。五人目はいない。
この四人は甲乙つけがたい。
つまりキーチャカを殺した者はその中にいるということだ。
これが何を意味するか?
ビーマは生きている。パーンダヴァ達は生きている。
ビーマがキーチャカを殺したんだ。
ちょうど一年前にマツヤ国の王妃の元に、サイランドリーという名の奇妙な女性がやってきたと言う。五人のガンダルヴァを夫に持つと話していたそうだ。
サイランドリーはドラウパディーだ。あの美女を見たキーチャカは我慢できなかったはずだ。人間の姿をした蛇に求愛してビーマに殺された。
それしかキーチャカの死を説明しようがない。
武器無しに、一対一の対決でキーチャカを殺した。
しかも殺され方があまりに特徴的だ。
彼の腕と足は胸に押し込まれ、顎も押し込まれていたそうだ。
これは明らかに典型的なビーマのやり方だ。
ダンスホールでの深夜の逢引き、謎の殺人、つまり何かを隠そうとしている。キーチャカを殺した者とサイランドリーは何かを秘密にしようとしている。何者であるかをなんとか隠そうとしていたのは明らかだ。
あんな卑怯な殺し方をする怪物に恋をしてしまった哀れなキーチャカよ。
ユディシュティラ達の居場所はマツヤ国だ!
あの国なら祖父が教えてくれた手がかりに全て合致する。
マツヤ国のヴィラータの所へ行こう!
きっとあの地にパーンダヴァ達は隠れている。
そうだな。牛を奪うことにしよう。
王が危険にさらされた時、パーンダヴァ達は必ず友の為に戦うはずだ。
あのネズミどもを巣穴から燻り出してやろう。
13年目が終わる前に見つけ出して、もう12年森へ送るんだ。
マツヤ国を攻撃する! 準備を整えるんだ!
何か他の意見はあるか?」

トリガルタのスシャルマーが話した。
「ドゥルヨーダナよ。私はいつもマツヤ国と敵対してきました。
キーチャカやケーカヤ兄弟、サールヴァの助けがあったのでヴィラータは私を打ち負かしてきました。
しかし、軍の司令官キーチャカが死んだ今、簡単な仕事です。
私をぜひ遠征に加えてください」

ラーデーヤが言った。
「それがいいでしょう。私達の連合軍を二つに分けて、それぞれ別の方向からマツヤ国を攻撃しましょう。きっと勝てます」

ドゥルヨーダナは決意を固めた。
「ドゥッシャーサナ! 私達の軍を集めるんだ。急げ!
我が祖父ビーシュマ、クリパ、ドローナ、アシュヴァッターマー達に私達の軍を率いさせます。
ラーデーヤ、私、シャクニも行く。
あなたも他の弟達を一緒に向かうんだ。
スシャルマー、あなたはトリガルタの自軍を率いて、明日ヴィラータの南側から攻撃して家畜を奪いなさい。
あなた達が攻撃した次の日、私達が北側から攻めます。
では会議は解散だ。準備を整えなさい」

ヴィラータ侵攻の準備が大急ぎで始まった。

(続く)

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