子供の夢を叶えるイベントで、大人が夢を叶えてしまった話。

初めての投稿。こんにちは、shaker。です。

「ツバキハウス」という同人誌の個人サークルを細く長く続けており、2015年夏から「自分で作るスタグルメ」という、Jリーグのスタジアムで食べたごはん(スタジアムグルメ=スタグルメ、スタグルとも略す)を自宅の台所で再現して、そのレシピ集を発行している食いしん坊でまあまあ料理の好きな人……という感じだろうか。

作った本は、基本的にコミックマーケット(コミケ)などの同人誌即売会や、「燃えろ!J2党」「ヨコハマ・フットボール映画祭」などのサッカーサポーターが集まるイベントの物販コーナーに参加させていただいて本を頒布したり、一部の書店さんに委託をまったりお願いしたりしている。

同人誌なので、色々気をつけなくてはいけない所もある。
例えば3巻掲載の「讃岐風コロッケ」は本当はそんな名前じゃないんじゃなかったっけ?というツッコミが入るだろう。
でも同人誌だから、よそ様の商標や著作物への扱いは特に注意が必要だ。頒布価格という「印刷代と最低限の経費程度の価格なのでお目こぼしくださいね」というしばりの中でも本を売ってお金を得るので、商標などは勝手に使う事は出来ない。基本はNG。なので料理の名前を微妙にそれっぽくいじったりしている。

表題の話に戻って「子供の夢を叶えるイベントで、大人が夢を叶えてしまった話」って一体なんだろう?

サッカーサポーターの方ならご存知の方も多いかと思われるが、日本代表の試合などで応援席にいるちょんまげ姿のツンさん。
この方は被災地ボランティアなども精力的に活動しておられ、被災地の中学生をブラジルやロシアのワールドカップに連れて行って子供達に希望と見聞を与えたり、映画「MARCH」を制作して、福島第一原子力発電所から30km圏内にあった学校のマーチングバンドが震災とそれに伴う避難生活を経て、再び「SEEDS+」として立ち上がる、子供があきらめないで夢を叶える映画を色々な人たちに鑑賞会を開いていたりする、そんな方だ。

その映画「MARCH」のイベントが2017年3月にJFAハウスで行われた。
私はクラウドファンディングの一番安い枠に乗っかっただけなので恐れ多いのだけれど、イベントへのご招待をいただくことができた。
そして、イベントに西芳照シェフがゲストとしていらっしゃる事も途中で知った。

「チャーンス!」
私の顔は、一気に悪だくみを考えているオタクの顔になり。

イベント当日。
その日は会社を早退すると事前に上司の許可を得ておき、昼休みにパーテーションで区切られた自席でお弁当を食べ終えると、机の上に「自分で作るスタグルメ」の1〜3巻(当時の最新刊まで)をPP袋に入れ、それぞれに「西芳照様」「足立梨花様」と筆ペンでスケッチブックの紙に名前と似顔絵を書いて袋づめをしていた。

そうしてイベントに参加し、映画とトークショーをしっかり見た後。

私は昼休みに袋詰めした本と、西シェフの著書「世界と戦う サムライブルーの必勝ごはん」というレシピ集とマジックを持って前方に向かった。

まずはあだっちーこと足立梨花さんに手渡して、「フクアリにも来てくださってありがとうございます。いつも応援しています」と伝え、次の人がたくさん待っていたので素早く離脱。

そして西シェフ。
初めて会う馬の骨が、いきなり同人誌なんか持ってきてプロの料理人、ましてや日本代表の専属シェフという一流の中の一流のプロは怒りやしないだろうか……? と心配になりながら、少し震えた声で「西さん」と声をかけてみた。

「ん?」と振り返った西シェフはパッと私の手元のレシピ集と、似顔絵を描いた袋に気がついたようで「それ!」と明るい声をあげた。
そうして、似顔絵の入った同人誌の袋を「これ、素人がホント申し訳ない本なのですが……。 同人誌なので、まあその」と言い訳しながら手渡して、手元のレシピ本の扉に快くサインを入れていただけた。

「西京焼き、作ってみたけど結構難しかったですよ。西京味噌を東京で探すのがまず大変でしたもん。そこから。」「そーかなー?! 大変だった?」あくまで西シェフは笑顔が明るい、誰にでも親切で穏やかな方だった。

スタグル本という同人誌を作り始めてしばらく経った時に、ぼんやりと「いつかこの本、ちゃんとプロの方に見てもらえたりする機会があったらいいなあ……。 もちろん、ツッコミ入れられるのもアリで」と考えるようになって、こんなに早く、しかもサッカー日本代表の専属シェフという、日本のサッカー界で一番の「サムライブルーの料理人」を自負している方にお会いするだけでなく、自分の本を手に取っていただけるとは!

こうして、被災地の子供達が悲しみ、何かを諦めたような表情からやがてマーチングバンドを復活させ、目標に向かって笑顔になっていく「子供の夢を叶える映画のイベント」の席で、ちゃっかり一人の大人のオタクが夢を叶えてしまったのだ。

実はこの夢の話はこの一夜限りで終わる夢ではなく、続きがまたあるのだけれど、それはまたいつか。

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