#172 「〇〇農業」が多すぎて分かりづらい!!

地理では、〇〇農業や〇〇栽培とつく単語が多く混乱しやすい。
いくつかのまとまりで理解すると覚えやすい。

まず、「園芸農業」のまとまり。
「園芸農業」とは、大都市への出荷を目的として野菜や花を育てる農業である。現代では多くの農業が園芸農業と言える。
園芸農業の中に、「近郊農業」と「輸送園芸農業」がある。近郊農業は文字通り都市の近郊で行われる園芸農業であり、その近さを生かして新鮮な野菜をいち早く都市に出荷する。それに対して輸送園芸農業は、比較的都市から遠いところで行われる農業で、高速道路を使ってトラックで出荷を行う。
近郊農業は輸送園芸農業と都市との距離で区別されるが、〇㎞以上・未満など厳密な区別はない。
園芸農業の中には、「施設園芸農業」もある。ビニールハウスなどの施設を利用して行う園芸農業で、こちらは都市からの距離による区別は関係ない。そのため、近郊農業かつ施設園芸農業という場合や、輸送園芸農業かつ施設園芸農業という場合もある。施設を使わない農業として、「露地栽培」という単語がある。露地栽培は施設を使用せず地面にそのまま作物を植えて育てる農業を指すが、露地栽培には都市向けの園芸農業という意味合いはないので、厳密に施設園芸農業の対義語というわけではない。

次に、促成栽培と抑制栽培のまとまり。
どちらも本来の収穫の時期をずらすことで農作物が市場に出回っていない時期に作物を高値で出荷するという点は共通している。
促成栽培は作物の生長を早める農業で、比較的温暖な地域で、ビニールハウスを用いる場合が多い。高知平野や宮崎平野のなす・ピーマンなどの栽培が代表例である。
抑制栽培は作物の生長を遅らせる農業で、比較的冷涼な高地で栽培されるキャベツやレタスなどの高原野菜が代表例である。愛知県や沖縄県行われている菊の電照栽培も抑制栽培の一種である。電照栽培では、夜間に電球で畑を明るくすることで、菊の開花時期を遅らせている。

「〇〇作」という単語もいくつもあって混同しやすい。
二毛作は、夏は米、冬は麦というように、一年の間に同じ畑で違う作物を育てる栽培方法で、歴史にも登場する。同じ作物を同じ場所で作り続けると、土地の栄養分が偏って作物が育ちづらくなる。これを「連作障害」というが、二毛作は作物の相性を工夫して行うことで連作障害を防ぐことができる。

二期作は、同じ田んぼで米を二度栽培する方法で、日本では沖縄のように温暖な気候の場所でないとできない。熱帯の東南アジアでは広く行われている。

輪作とは、農地をいくつかに分割し、数年単位でローテーションを行って違う作物をつくる農業で、これも連作障害を予防するために行われる。世界史に登場する三圃式農業もこの一例である。

ヨーロッパの農業で登場する「混合農業」は、輪作を取り入れた農業の形態で、輪作で育てる牧草を利用して畑作に家畜の飼育も合わせて行うことをさす。
同じくヨーロッパの農業で出てくる「地中海式農業」は、輪作とは違い、場所によって違う作物をつくる農業である。地中海は夏に乾燥する気候のため、夏の間は丘陵地で行われる乾燥に強いオリーブやコルクガシ(コルクの原料)の栽培、冬は平地で行われる小麦栽培(主に自給用)を行う。丘陵地ではぶどうやオレンジなどの果樹栽培もさかんである。
比較的乾燥に強いヤギや羊などの牧畜も行われるが、夏の乾燥と暑さを避けるため、夏は山の上へ移動し、冬は山を下りるという「移牧」を行う。

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