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「AM局放送休止」の最悪見出し。みんな落ち着け。

これはねぇ。さすがに悪意を感じますよ、マジで。

民放AM局のいわゆる「FM転換」についてはいつか書こうと考えていて、何度か下書きを書いては消し、を繰り返していました。
それだけ誤解が多いと予想してたからです。

が、上掲のポストにより、すでにふたつの意味で誤解が生じており、とうとう書かねばならなくなってまいりました、やれやれ。

まず見出しの「34局」は「13社・34中継局(一部AM親局)」だぞコノヤロー
そして「中継局(一部AM親局)からの放送一時休止」であって「閉局」「倒産」「会社終了」じゃねーんだぞよく読め、ということであります。

みんな見出ししか目に入らないのか、父ちゃん情けないぞ。

さらにこちらのポストには、墓碑銘のように社名が並んでしまい、さらなる誤解が激烈に加速しております。

こんなん明らかにミスリードじゃねーか、インプレゾンビじゃねーかと、ボクちゃん昨夜から激おこぷんぷん丸です。

タイムラインを同エリア内のAM局名で検索すると、「〇〇ラジオなくなるのか」だの「〇〇ラジオ終わるの激震」みたいに、盛大に閉局のそれと勘違いされており、「こどもの頃はよく聴いてたのに残念です」というお気持ち表明まで散見され、まるでローカル線廃止のような惨状です。

おまけに「プロフ見て」ポストもどさくさ紛れに激増しており、本当に本当に本当に気の毒でなりません。

そもそも、なぜAM局が一部地域で放送を休止することになってるのか。
見出ししか読まない人には意味がないとは思いつつ、この記事を紹介しておきます。
これ、よくまとまってると思うので。

まずマンションなど、AM局が聴こえない住戸が増えた問題がすべての発端です。

電波の特性上仕方ないんですが、AM波は鉄筋の建物内に届かない(都市型難聴)わけで、家庭からラジオ受信機が消えてしまい、こども世代が「ラジオ知らず」で育っていたわけです。
一時は「若者のラジオ離れ」とも言われましたが、そもそも家にないんだから「ラジオ知らず」が正解です。

そこで2015年以降、すべてのAM局で都市型難聴の解消手段として、従来の90.1MHzより高い周波数の「ワイドFM」(FM補完放送)を放送しています。

で、多くのAM局がFM送信施設も所有することになりますが、数年経って経営がどんどん苦しくなり、コロナで詰んできて「んもぉ、AM設備めっちゃ金食い虫!」となってきたわけですね。

上の記事ではAMとFMの設備更新費用が書かれていますが、具体的な金額はさておき、数倍どころじゃない差があるんですよ。

で、この状況により、多くのAM局が「FM転換」 のスローガンの下、FM波をメインとすべく動き出したわけです。

好事家からは「補助金でなんとかならんのか」という声もありますが、結局皆さんの税金ですから、免許をもらってるだけの私企業にそんな金をジャブジャブ注ぎ込むなんて、国民が許さないでしょう。

いきなりAMを停止してしまうと、その放送を聴けない地域が出てしまうのも大問題です。

つまり、現状はFM補完放送やケーブルテレビといった代替手段で、AM波を停めても放送が滞りなく聴けるかを絶賛確認中、というわけでして、これが衝撃的な見出しとともにタイムラインをホットにしちゃってるわけです。

それと、このハナシをさらにややこしくしてる問題があります。
「FM転換」の意味を「番組が全部音楽番組になる」と、コンテンツ方面で捉えちゃう人もいるんですよ。

別にFM放送には「全放送の何パーセント音楽番組にしなければならない」なんて法律も教典も戒律もありません。
トークがメインか、音楽がメインかなんて問題は、はっきり言えば「その会社の文化」なんですよね。
現にトークがメインのFM局だってありますから、さいたまに。

どのAM局も誤解される前に「FM局になるための準備中です」ってわかりやすく説明できればいいんですけどね。

トークで勝負してるわりに、みんな口下手で筆不精なんですよ、この界隈。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。