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『スペースロマンサー』第21話 性分(さが)

倉庫にて水と食料、酸素ボンベの仕分け作業を行った二人。
「よし、これでミッションに必要な分の食料は確保できた。
あとは、水と空気・・・、おい!つまみ食いをするな!」

後ろで作業していたはずのジローを振り返るとその周りには食べ物を包んでいた包装紙がいくつも散乱しており、すでに多くの食料が消費されたことがわかる。

「デェス?」
ジローのすっとぼけ具合に、流砂の穴に戻したくなるノヴァだった。

そんなこんなで、50日分の食料を4つに分けることが完了した。

「ローバーはなるべく軽い方がいいからな。最初に積む量は少なめにしておこう」

ローバーの移動速度は軽いほど早くなる。このため、ノヴァは当初に乗せる物資の量を少なめにし、ピックアップポイントに振り分ける量を多めにした。

「あとは、この物資をどうやってジローの船まで運ぶかだな」
片道数時間の道のりを数回往復するというのは、それだけで時間のロスが大きすぎる。
なにか良いアイディアがないだろうかと思案するノヴァ。

「ここまでならば呼べるデスよ」

「呼べるってなにを?」

「私の船デス!」

「でも、ジローの船も壊れてるんじゃないのか?」

「飛ぶことはできなくても地面を移動することはできるデス。
たぶん、ここまでくるエネルギー程度は残っているデス!」

ジローは腕についているコンソールガジェットを操作する

~数時間後~

船の外に物資を運びだして、待つ二人。

「あ!見えてきたデス!」
ジローの指を指す方を確認するノヴァ。
「どこだ?」
「あれデス!あの動いているやつデス!」
地平線の向こうでなんとなく、黒い点が動いているのが見えた。
ノヴァのスーツも望遠能力を備えているので、遠方のものをとらえやすくなっているはずだが、ジローの視力はそれをはるかに凌駕しているようだった。

もうしばらくして、ノヴァもそれが砂埃を巻き上げて進んでいるジローの船であることを視認できるようになった。

「へぇ、陸上移動用にも使えるのか」

「戦車としても優秀デス!」

ジローの船が地面をすべるようにして、近づいてきて、二人の目の前でつくと移動を停止した。

別の文明によって製造されたジローの船は、ノヴァにとって、未知の技術と設計思想に溢れていた。初めてジローの船に遭遇したときはどたばたしており、よく確認することができなかったのが気がかりだった。

ジローの船にぴったりとくっつき、まじかで眺めながら。

「表面が非常になめらかだ・・・・・・・、卵型のフォルムも地球では見ない形状だな・・・・、そうか!これで大気圏への突入時の抵抗を最低限に抑えているのか。走行としての機能も担っていて・・・・・・・これはこれで、一つの機能美を追求しているのか・・・・」
ぶつぶつとなにかをいっているノヴァ

「ノヴァさん、どうしたんデスか?」
変なものでも見るように、怪訝そうにノヴァの要素をうかがうジロー。

「マスターは、こういう時は非常に気色が悪いんですよ」とイブから通信が入る。

「ジロー、船の表面を少し削ってもいい?舐めて、味を確かめてみたいんだ」

「味を確かめてどうするんデスか!だめデス!」

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