カレーを作りすぎた人の末路
カレーを作りすぎるのは、日本人の病なんだと思う。
今日も作りすぎたカレーを薄暗い部屋で食べている。
引っ越しのときに邪魔になってテレビを置いてきた家は殺風景だ。
彼氏を探すために勧められたマッチングアプリも飽きてきた。
カレーは飽きないのに。
2年後。あたしはカレー屋でバイトしていた。
あれだけカレーを作りすぎていたのだから当然といえば当然だが、そこそこ給料の良かった事務職を辞めてまですることか、と旧友にあしらわれてた。
「いいじゃん。カレー好きだし」
「ウチも好きだよ、だから来てあげてるんだし」
「でも、ここスープカレー屋だよ」
「まぁ……。そこはちょっと驚いたけど」
本当はカレーに人生を捧げたくなったわけではなかった。
同期や後輩の女子社員たちとウマが合わずにベッドから起き上がれなくなったのだ。無視されたり、愛想笑いされたり、冷ややかに注意されたり。
ちょっと要領の悪い人間は結局いつになっても居場所なんてないんだ。
昔、本で読んだ「大人になれば居場所がある」は嘘なのだと気づくと涙が止まらなくなった。そんな日々が半年が経った。
鍋を使うこともなくなった。カレーを作りすぎることも……。
「ダメだ、あたし。このままじゃ」
そんなとき、このスープカレー屋のバイトを見て、辞職願を出した。
あっさり受理され、それから1か月後には厨房に立っていた。
ここのスープカレーはドロドロしていないし、後からやってくる辛さもない。それがあたしの救いになったんだろうか。
そして今、店長と正式にお付き合いさせてもらっている。
それがアタシの運命を左右するとも知らずに。
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