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数分で終わるので、臨死魔法をかけさせてもらえませんか?

日雇いの仕事は割りが良いのか悪いのか分からない。

時給にして1200円、炎天下の下で自分に興味のない人たちの関心を惹くのはラクじゃない。むしろつらい。人間、無視されるのが一番堪えるのだ。

「あの。少しお時間よろしいでしょう……」
「お時間よろ……」

世の中、そんなに甘くない。こんな見た目のヤツの話に足を止めるはずがあるわけない。
「まぁ……少しなら」
世の中、ホントに分からない。こんな見た目のヤツを信用する人もいるのだから。

無事確保したおじさんを近くの雑居ビルに案内した。どうしてこうもアタシを信じられるのか。やらしいことがワンチャンあると思っているのだろうか。あるわけねぇよ、この時給で。

ヒラヒラの黒いドレスを着たアタシは笑顔でおじさんを説得する。
「では魔法をかけさせていただきます。ちょっとだけチクっとするかもしれないですけど、大丈夫なんで」
「え、魔法とは……?」
「いわゆる魔法ですよ。黒魔術的な」
「どうなるんです?」
「魔法で3日ほど死んでもらいます。では、タクマカシージャリコンポップン……」
「ちょっと、ちょっと! し、死にたくないです」
「あー、臨死みたいことなんで」
「は?」
「いやいや」

アタシは魔法使いのバイトを始めた。


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