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150円のマンスリーよしもとで生き延びていた話

地方の片田舎に生まれ、恐らく「厳しい」に分類される両親に育てられた。

中学生時代。クラスメイトが携帯電話を持ち始めた。「皆が持っているから私にも持たせてほしい」とねだったら、「""皆""とは誰だ。全員の名前を言え」と突っぱねられた。
インターネットの使えるパソコンは父の部屋にあり、触ることのできない環境だった。

食事中にテレビを観ることは許されていた。たまたま、M-1グランプリ2007が放送されていて、「お笑い」という文化に衝撃を受けた。
翌日から、新聞のラテ欄で「お笑い」「爆笑」などの文字がある番組を片っ端から録画するようになった。そこで『爆笑オンエアバトル』に出会い、ますますお笑いが好きになった。

本屋で雑誌のコーナーを眺めていたら、平積みされた『お笑いポポロ』という雑誌を見つけた。パラパラと捲って、違和感を感じ、そっと戻した。
片隅に『マンスリーよしもと』と書かれた冊子が置いてあった。価格は、150円。M-1のトロフィーが表紙だった。
150円は中学生でも躊躇なく買える価格設定だった。
そこではM-1グランプリ2007の特集が組まれていた。決勝メンバーの紹介だけでなく、敗者復活戦のレポートもあった。
その中に、『爆笑オンエアバトル』で覚え始めた芸人も載っていた。『マンスリーよしもと』には私の知らないお笑いの世界が広がっていて、隅々まで読み込んだ。

『マンスリーよしもと』は月刊誌。月替りで様々な特集を組んでいた。「男前/ブサイクランキング」の特集の号などはあまり私に刺さらなかったが、刺さらない特集のときでも、欠かさず買っていた。どうしても読みたいページがあったからだ。

『マンスリーよしもと』で毎月穴があくほど読み込んでいたのは、各劇場のスケジュールのページだ。
ルミネやNGKなどに誰が出るかが書かれていて、「あ!この日はAさんとBさんが出る日だ!もし私が行けるなら、この日の公演に行きたい!!」と、地方の片田舎で夢を膨らませるのが楽しかった。
「いつか生でネタを観るんだ。そのために大阪か東京の大学に進学するんだ」と決意し、大学受験に励んだ。
その間に『マンスリーよしもと』は『マンスリーよしもとPLUS』に変わり、価格も500円になった。当時の私の少ないお小遣いでは、この金額の差は大きかったが、それでも買い続けたのは、劇場のスケジュールを読み込みたいからだった。

インターネットがもっと使える環境だったら、PLUSに移行した段階で買うのをやめていたかもしれない。ホームページで出演者が見られただろうから。
しかし私の家庭環境では、『マンスリーよしもとPLUS』に縋り付くしかなかった。

私は『マンスリーよしもと』の各劇場のスケジュール欄と、食事中に観させてもらえるお笑い番組(当時は『爆笑レッドカーペット』とか『イロモネア』とかだった気がする)(妹が大好きだった『ヘキサゴン』と被っていたため、『くりぃむナントカ』は録画で観た。笑いすぎて酸欠になり、頭が痛くなったのは『くりぃむナントカ』が初めてだった)と、深夜の勉強の合間にこっそり観る『爆笑オンエアバトル』、『笑・神・降・臨』、『銀シャリのbaseベイベー/銀シャリの5upベイベー』、地方のローカルお笑い番組(これが案外充実していた)を励みに、受験勉強を頑張った。

センター試験直前のM-1グランプリは、両親に「私はお笑いが好きです。今は勉強をしなければならない時期ですが、今日だけはテレビで夜までM-1を観ることをお許しください」と頼み込み、有り難いことに受け入れてもらえた。

本屋さんに寄ることに関しては、両親は口出ししてこなかったので、『マンスリーよしもと』以外で好みだなと思えるお笑い雑誌も買った。『お笑いTVライフ』、『splash!!』、『Quick Japan』などは定期的に購入し、『爆笑オンエアバトル10→11(オンバトの11年間の歴史を纏めた雑誌)』や『読んでから笑え』などの特別号は、発売日に本屋に駆け込んだ。

学生には少し高かったが頑張って買ったQJたち
逆に今「潜在異色」時代の二人のインタビューを
読み返すと感じるところがあるかもしれない



テレビの「お笑い」が好きで、雑誌の「お笑い」が好きだった。特に『マンスリーよしもと』は、私の世界を広げてくれた、一番想い出深い雑誌だ。

今の私は、あまりお笑い雑誌を買っていない。そこにお金を使うなら、ライブに行きたいからだ。

就活で挫折したため、私が学生の頃に理想としていた「お笑いとの関わり方」は出来なかったけれど、今、生でいろんな芸人さんのネタを楽しめているのは、とても幸せなことだ。そのキッカケをくれたのは、間違いなく、150円時代の『マンスリーよしもと』だ。

先日、実家の片付けをした際に、大量のお笑い雑誌が出てきた。
『お笑いTyphoon!』まで出てきた時には、思わず笑ってしまった。私がハマる前のお笑いだからだ。
きっと当時の私は、BOOKOFFでお笑い雑誌を漁りまくり、自分の知らない時代のお笑いも知りたいと思って購入したのだろう。

少し抜けのある『お笑いTyphoon!』

「こんなに大切なものたちをどうして新居に持ってこなかったのだろう」と私は反省し、すべてを現在暮らしている家へと送った。
ズボラな私にしては保存状態が良く、読む人が読めば「宝の山」かもしれない。これを一人で独占するのは、なんだか勿体無い気がする。

「誰彼構わず貸したい」とは思えない。私が少ないお小遣いでコツコツ集めて、今までずっと大切に保管しておいた雑誌が借りパクされたり、傷んだ状態で返ってきたら、私はきっと泣いてしまう。
しかし、「信頼している人(私の「信頼している人」のハードルはかなり高い)」には、貸してあげたいなと思う。
私はもう若いお笑いファンではないから、過去のお笑いを知りたいと思う人には、還元していきたい。

もしこのnoteを読んで、「小川のコレクションを読んでみたい」と思う人がいたら、連絡してほしい。お断りする可能性もあるけれど、もちろん貸す可能性だって多いにある。私のコレクションを読んで「面白い」「ワクワクする」「勉強になる」と思ってもらえたら、こんなに嬉しいことはない。

私は『マンスリーよしもと』周辺のお笑い雑誌に支えられてきた。それを今、若い人たちに還元するのが、一番の恩返しなのかもしれない。

特に想い入れのある4冊
オンバトのオタクからしたら
たまらないかもしれない雑誌

今は電子化が進んでいるけれど、こうして何年もの間、大切にできるのは紙媒体の雑誌の特権かもしれない。

集めた雑誌たちは、これからも繰り返し読み返すだろう。
私に「夢」と「目標」を与えてくれた150円の『マンスリーよしもと』たち、本当にありがとう。これからもよろしくね。

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