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タラチネ

昨夜から迷子になった猫が一匹。残された家族は慌てて同じ道順をグルグルと廻った。猫を探し出したら、居場所が見つかったら、部屋に戻ってきたら、すべての悩み事は消えてなくなるかのように。あくまでも、『かのように』であって、あなた方の問題は解決はしない。一方で猫の方はというと、家族の心配には見向きもしない様子。素知らぬ顔でルーティンのように路地を闊歩する。そもそも、吾輩は孤独でなければ、飯に困っているわけでもない。それはこの物語の始まる前からの前提である。寂しいという感覚は君たちの世界特有の捉え方なのだ。とどのつまりは。

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