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不意に突きつけられた2択

前回の投稿が意外と人目に触れて嬉しくなったので先月のバイト先での話もしたくなってしまった。

僕は塾講師のバイトをしている。勉強を教えるのも苦じゃないし結構性に合っていると思っている。何より厄介な人間関係がないし。職場に行って話すことと言えば常勤講師との打ち合わせくらいで面倒な協力や世間話などは必要ない。さらに僕は努めて他のバイトと無関係でいるようにしている。無駄話をしていると思われるのもいやだし気遣いをするのも面倒だからだ。

今年から3年生を担当することになったのだが、もう1人の担当が非常勤の女性だった。非常勤同士だと帰るタイミングはだいたい同じだ。僕は苦手な食べ物は無いが人間関係に苦手は甘やかされた5歳児並みに多い。あまり知らない人と一緒に帰ることもその一つだ。それもタイムカードを切った後に余計な気を遣うのはもはや残業に感じられ、何としても避けたいと思っている。帰るタイミングを毎週巧妙にずらしていたのだが、ついにタイムカードを同じ時間で切る時がきてしまった。

当日の授業の感想などを言いながら共に校舎をでて、駅に向かおうとすると女性が「あ!」と言って校舎にもどって行ってしまった。恐らく忘れ物でもしたのだろう。
「しまった」次の瞬間僕はそう思った。何故「じゃあ来週」と即座にいえなかったのだろうか。これでは先に帰るべきか待っているべきなのか完全に分からなくなってしまったではないか。勝手に先に帰って社交性がないとも思われたくないし、待っていて一緒に帰りたかったと烙印を押されるのも嫌だ。
もしかしたら向こうも一緒に帰るのが嫌で忘れ物をした振りをした可能性もある。待つか待たないか、言われた側がフォーカスされがちだがきっとマラソン大会で「一緒に走ろうな」と言った側も友達が鈍足すぎたら困るに違いない。悩んだ挙句先に帰って翌週急いでいたと弁明することにした。

翌週、その旨を彼女に告げると「まさか待ってて欲しいなんてとんでもないですよ」と返された。安堵すると共にやはり向こうもタイミングをずらしに来たのではと勘繰ってしまった。一緒に帰るのは嫌だけど一緒に帰りたくないと思われるのは嫌だなと思い、「告白はしないで欲しいけど好きではいて欲しい」と言っていた女友達の気持ちを5年越しに理解した経験であった。


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