ニュルンベルク契約書開示、判決解説




第一部 導入
①敗訴と法律の撃ち合い

結果は敗訴でしたが、法律の撃ち合いではかなりの勝利を収めている内容でした。

速報的まとめでは、①薬害を認めない。②死者重篤者を無視して生命侵害を無視している。という結論になっていますが、それらは法律の撃ち合いに勝ってたどり着いた判決です。まず、相手は、内容の判断までいかないで終了しないといけないわけです。内容まで行くと勝っても薬害が判例に刻まれてしまうことになります。
まずは、その法律の撃ち合いで即死を狙ってきた重要なところを3つ紹介。

2、法律の撃ち合い
必殺の攻撃
、「契約書は裁判官も見ることができない。だから何を開示するかは議論にならない。いきなり終了です。乙でした(要約)」
これが相手の最初の主張です。
これを崩さないとここで終わります。
開示対象は契約書です。
ゆえにこちら側は、「契約書の条項は類型化・抽象化できる。ゆえにその一般化した条項に対して訴訟が継続できる」と主張して、訴訟の続行になりました。
ここは、他の契約書開示訴訟等でも使える技です。

必殺の攻撃②、「契約とは生命に関して書かれているわけではない。ゆえに契約が生命の危険のために開示する文書とはならない。」
とんちです。値段とか在庫処分とか責任条項とかが相対的に書かれていますが、生命について書かれているわけではないと言われればそう見えなくもないし、それらが生命の危険があると法的に組み上げるのはなかなか大変そうです。これは民法の本を探していたら、「契約は本来的に生命を侵害しない保護義務を負う」という基本原理があったので法的な評価で契約と生命の関連性は論証されました。

必殺の攻撃③、「承認を受けた薬剤であるから違法業務ではない」
この点については今回では相手側に軍配が上がったようです。
当然承認されても薬害は生じるので、承認が即業務の適正さにはならないという簡単な理屈ですがここで折れると違法業務になるので司法もここは譲らないようです。まだ先で争うところです→今回は承認が適正な業務の論証として用いられています。


以上をふまえて、判決の相手の主張、こちらの主張のダイジェストをお届け。



第二部 判決
1,ニュルンベルク契約書開示 主な争点
 
(1)製薬の利益を守る規定の適用はあるのか(情報公開法5条2号)
(2)厚労省の業務の適正さは認められるか(情報公開法5条6号)
(3)厚労大臣は薬害において契約書を裁量において開示する義務があるか 
  (情報公開法7)

  以上主な争点は三つだが、(2)において厚労省の業務を適正と認め、それ以上の判決は必要ないとして(1)は主張だけ記載したまま判決は出さなかった。製薬会社への判断をなぜ避けたのか?そこはおそらく法的な争いになるので今回は書かれません。


2,製薬の利益の争点
   被告の主張(以下会社名黒塗り)

 

製薬の利益にかかる原告の主張



3,厚労省の業務の適正さに関する争点
業務の適正さの被告の主張


業務の適正さの原告の主張


業務の適正さの裁判所の判断(判決)


以上、厚労省の業務の適正さについての判決


製薬会社の利益を判決として出さない理由

要約「厚労省の業務は不適正ではないと裁判所は判断する。製薬の適正さについては判断しない」
(→違法に製薬会社の法的評価をしない逃げ)


4,厚労大臣は薬害において契約書を裁量において開示する義務があるか



控訴は、すでに提出されているので今後も続きます。
予想されたように様々な論点は切り詰められましたが、ある程度法律で撃ち合って勝っているために、治験不正・1291の有害事象・心筋炎・感染予防詐欺などはこちらの主張としては、判決に残るところまではいったようです。他の様々な主張は切り捨てられましたが、今後の審理はまだわかりません。
法律的にさらなる主張は予定されているので、ここまでの解説になりますが、文脈解釈よりも、ここでこういう理屈で判決を結ばなければいけない状態はどういうことなのか、という読解で見る必要はあると思います。
情報公開法5条2号の国民の生命を守るという規定に基づき裁判は続行されます。


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