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いとこはアイドル

はじめまして、喜多川〇〇といいます。
大学進学を機に上京して一人暮らしをはしめて2年が経ちまして、早3年目となりました。

いやー、時が経つのは早いものです。

東京で一人暮らし。
さぞ楽しい悠々自適な大学生活を謳歌しているだろうとお思いの皆様も多いと思いますが、残念ながら僕の東京での生活は狂ってしまったのです、二人のいとこのおかげで。

ピンポーン

一人暮らしの部屋のインターホンが鳴る。
誰かわかるので大きめの声で返事をした。

〇〇「開いてんでー」

1DKのリビングから顔をのぞかせながら言うとガチャッと玄関のドアがあいて入ってきたのはやはり予想通りの人物。

僕の東京の生活を狂わせてる一人。

茉央「ただいまー、〇兄ぃ、疲れた〜」

荷物を手にいとこの五百城茉央が遠慮なくリビングまでやってくると、慣れた動作で荷物をおいてソファーに腰を下ろした。

いちおう言っておきますけど、一緒に住んでないですからね。
茉央の家は別にありますからね。

〇〇「おかえりー、ってか、疲れたなら自分の家に帰りなさいよ」

茉央「えー、ええやん、こっちのほうが落ち着くし〜

〇〇「いや、せやかて茉央、お前―」

茉央に話していると不意に玄関のドアがふたたびガチャッと空いたと思ったら、もうひとりの元凶が姿を見せた。

陽子「ただいま~、お兄ぃ〜、つかれた~、おなかすいた~」 

インターホンすら鳴らさずにもうひとりのいとこの正源司陽子が入ってきたと思ったら、そのまま一直線にリビングまで来て茉央がくつろぐソファーへ半ばダイブするように身を投げだした。

茉央も陽子を受け入れてよしよしと頭を撫でる。

いや、もう一回言うけど、陽子も家は別にあるからね。
ここは僕の一人暮らしの家だからね。

〇〇「陽子まで。だから疲れたなら自分の家に帰ってゆっくりしたらええやろ?」

陽子「えー、そんなことゆうたかて、こっちのほうが落ち着くんやからしゃーないやん! もうこっちが家であっちは別荘!」

茉央「あ、それいい! 茉央もそうする〜、決定!」

〇〇「いやいや、ここ俺の家やから! それに、キミたちアイドルでしょ!」

そう、何を隠そう、僕のいとこは現役アイドルなのだ。
しかも二人とも日本を代表するアイドルグループの一員。
茉央は乃木坂46で、陽子は日向坂46のメンバー。
いくらいとことはいえ流石にまずいだろ。

茉央「親戚なんやから大丈夫!」

陽子「せやせや! なんなら生まれたときから一緒なんやから家族も同然やん!」

〇〇「だとしてもさ―」

僕が反論しようとすると

陽子「…陽子たちのこと嫌いなん?」
茉央「…一緒にいたくないん?」

二人してすがるような目。
いや、その目はズルい。

わかっていたさ。二人には勝てないことが。僕は昔から二人には弱かった。


東京の大学に合格して一人暮らしをはじめたときも

〇〇「は? なんて?」

それは実家の母親からの電話だった。

〇母「やから、茉央ちゃんも東京行くから面倒見たってな」

〇〇「ちょ、なんで茉央が!?」

〇母「なんや、アイドルグループに入るんやって。今日つくらしいから、詳しくは茉央ちゃんに直接聞きー」

そんな電話をしていると

ピンポーン

恐る恐る玄関を開けると

茉央「〇兄ぃ〜! 会いたかったよ〜!」

茉央が目の前に立っていて、目が合うなり抱きついて挙句の果てに泣くから大変だった。


その半年後

ふたたび母親から電話がかかってきた。

〇〇「もしもし母さん?」

〇母「あ、〇〇? 陽子ちゃんそっちついた?」

〇〇「は? 陽子? 何いってんの??」

〇母「あれ、言うてへんかったっけ? 陽子ちゃんも東京行くからよろしくな」

〇〇「ちょっとまて! なんで陽子まで!?」

〇母「陽子ちゃんもなんやアイドルになるんやって。親戚から二人もアイドルなんて鼻が高いわ〜」

呑気なことを言っている母親に若干のイラつきを覚えていると、ガチャガチャと玄関のドアノブを回す音が聞こえてきた。

恐る恐るドアに近づくと、ドア越しに聞き覚えのある声が聞こえてきた。

陽子「あれ〜? 鍵かかってるやん、おらへんのかな? お兄ぃ? おらんの〜?」

そういいながらドアを直接どんどんと叩く陽子。
慌てて鍵を開けてドアをひらいた。

〇〇「ち、ちょっと陽子、ドア叩くなって!」

陽子「やっぱりおったー! お兄ぃ会いたかったー!」

茉央のときと同じくです。
いきなり抱きつかれて泣かれて、まあ大変でした。



まぁ二人ともアイドルって夢を見つけて頑張ってるんだから、多少のわがままは聞いてあげたいけど、こう毎日毎日家に入り浸られるとなー

友達よんだりとか、彼女よんだりとかも、なかなかできない。
まぁ、残念ながら呼べる彼女なんていないんですけどね。

まあ、しばらくは二人のわがままに付き合ってあげるか。

茉央「〇兄ぃ?」
陽子「お兄ぃ?」
茉央&陽子「「どーしたん?」」

可愛すぎるいとこのお陰で、僕の大学生活はまだまだ狂い続けそうです。











陽子「なぁ、お兄ぃってまだ気づいてないんやんな?」

茉央「気づいてないとおもうよ。私達が〇兄ぃを追いかけるためにアイドルになったってこと」

陽子「あのときの茉央ちゃんの抜け駆けは一生許さへんからなw」

茉央「ごめんやん、陽ちゃんもこれたんやから、結果オーライやろw」

陽子「まさかアイドルになるって手があるとは気が付かれんかった」

茉央「まぁ、アイドルにはなりたかったんやけどね」

陽子「それな、でも…」

茉央&陽子「「(〇兄ぃ・お兄ぃ)は離さない!」」


僕が二人の想いに気づくのはまだ少し先のお話。





おわり



この物語はフィクションです。
実在する人物などとは一切関係ございません。

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