日本酒の業界誌「酒蔵萬流」がおもしろそうなので軽率に課金してみた
きっかけ
日本酒の美味しさに目覚めて以来、「獺祭」について書かれた書籍や、山同敦子さんや山内聖子さんの本も読んだんだけれど、日本全国に1500カ所以上あるという他の蔵、いわゆるメディアに頻繁に取り上げられるような蔵以外はどのような状況なんだろう……?という好奇心が芽生えはじめた。同じ時期に、一橋ビジネスレビューのビジネスケース「新中野工業」(2020年春号)で、日本酒の業界誌「酒蔵萬流」の存在を知ったことがきっかけで購読してみた。
酒蔵萬流
酒蔵萬龍について
発行元
発行は、一橋ビジネスレビューでも取り上げられている醸造用精米機メーカー「新中野工業株式会社」さん。
ちなみに親会社?の「飯田グループ」さんについては、SAKE Streetさんの記事が本当に素晴らしい。
料金その他
料金等
ウェブマガジン(年間3000円)
様々な酒蔵の経営者や杜氏が酒づくりや蔵についての思いを語る「酒蔵紀行」
雑誌(年4回発行・一冊800円)
上記に加えて「特集」記事や「酒場巡り」、「日本酒見聞録」等
なお、プレミアム会員(年間4400円)には、ウェブマガジンの購読だけでなく雑誌も送付される。
清酒業界関係者(酒蔵や酒屋、居酒屋等)以外の人間も会員になることができる
私自身は、1000円ちょっとの追い課金で紙媒体まで送ってもらえるなんて神では……!しかも酒蔵だけではなく、関連する業界の状況を扱う特集記事もあるし……ということで迷うことなくプレミアム会員となりました。
感想とか感謝とか
豪雨や震災といった災害をきっかけに設備投資をしたことで品質向上につながったとか、「(それまでにつくっていたお酒が)どこに行ってもおいしくないとボロクソに言われた」とか、外資系の広告代理店で働いていたのに予期せず蔵を継ぐことになったとか、ホントもう、ドラマしかない。
ときどき、「継ぐ予定はなかった」みたいなことを言っている蔵元さんもいて、ちょっと驚いた。ちなみに、蔵元さんのプロフィールも付記してあるので、どのようなキャリアの方々が多いのかといった点も垣間見えて興味深い。
たとえば、私の大好きな「澤の花」の伴野酒蔵の蔵元さんは、「(蔵に呼び戻されたときに)「人生終わったな、と思いました」とか言っていて、事業承継って一口にいうけれど実際のところはたいへんなんだよなあ……となった。でもこの方がいなかったら、私は日本酒の美味しさがわからないまま、酩酊感だけを求めてアルコールを摂取し続けていたのだろうと思うと感謝しかない。(「もう味がわかりきっているお酒や特に美味しいとは思わないお酒は乾杯だけでいいよね」というムーブに落ち着いた結果、酒量が減りました……)
もともと専門が経営学、しかも主流の定量的研究よりも定性的研究の方がエモくて好き……みたいなところがあったこと、また数年前に読んだ「道端の経営学」(マイケル・マッツェオ, ポール・オイヤー, スコット・シェーファー, 楠木健監訳・江口泰子訳,ヴィレッジブックス,2015)がおもしろかったこともあり、日本酒そのものだけでなく、酒蔵とそれを支える人々が日々なにを考えてお酒をつくっているのかを「酒蔵萬流」を通じて知ることができるので、最高におもしろい。
よくわからないまま居酒屋さんで注文し、飲んだことがあった酒蔵の銘柄もいくつも取り上げられていたけれど、どのような思いでつくられたお酒なのかを知ったいま、もう一度飲んでみたいと思うようになった。
たとえば、天美の「長州酒蔵」さん。最近杜氏の方がおやめになられたらしいけど、彼女がつくったお酒と杜氏不在でつくったお酒をもう一度並べて飲んでみたいなと思う。(両方とも試飲はしたけれど、やっぱり並べて違いを味わってみたい!)
私の専門はマーケティングではないので詳しくないけれど、ナラティブやストーリー(ナラティブとストーリは違うんですよ!みたいなのも見たけれど……?)をマーケティングに活用することの意義をなんとなーく理解できた。
自分の専門的には、酒蔵の成り立ちや、担い手の方々のキャリア等が、思いのほか多様であること、そして、清酒産業の環境変化のなかで事業承継やイノベーション、戦略的なピボットがどのような経緯で行われたのかを知ることができて最高に興味深い。ビジネスケースとしても楽しめる記事が満載で嬉しい。味やスペック?と違う意味での、推し蔵(っていってもいいのかな?)ができてしまいそう……。
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