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スタジオジブリの撮影術

昨年末に『撮影監督・奥井 敦の仕事のすべて』が発売されました。

こちらの書籍ではスタジオジブリの東小金井スタジオの設立時から現在に至るまでジブリ作品の撮影やデジタル化の中心を担ってきた、現スタジオジブリ エグゼクティブ イメージングディレクターの奥井敦氏のこれまでの仕事や実際の作品で使用された技法などが紹介されています。
ジブリ作品の撮影技術に絞った内容という事もあり、アニメ業界でも撮影関係者を中心に話題になり、既に3刷りとなる人気です。
ちなみに著者の奥井さんは自分が在籍当時所属していたデジタル部の上司に当たります。

本書は奥井さんがジブリに移籍する以前の旭プロダクション時代の仕事から、ジブリでの撮影部の立上げ、またその後のデジタル化の流れなど今まであまり語られてこなかった「アニメーション撮影」の目線で語られるジブリ史とともに、アナログからデジタルへの移行期の苦労やデジタル化に必要な技術的な話題、またフィルム制作の時代の作品を含めた撮影技術に関する技法の解説、また最終的に上映さる劇場の環境に至るまで多岐にわたる内容が網羅されています。
特にフィルム時代の線画台(アニメーション撮影台)の紹介や撮影の様子などの解説はデジタル以降に撮影を始めた世代の撮影従事者やアニメ制作に関心のある方には興味深いものでは無いでしょうか。

フィルム撮影台による撮影の解説
デジタル撮影による特殊効果の解説

スタジオジブリでは撮影のデジタル化は業界でも比較的早い時期に始まっており、本格的な導入は1997年公開の『もののけ姫』から行われ、1999年公開の『ホーホケキョ となりの山田くん』の制作時には仕上げ以降の工程は完全にデジタル化されました。

スタジオジブリではデジタル撮影及び仕上げには当時から現在に至るまでToonzというアニメーション制作専用のソフトウエアが使用されています。このソフトウエアはイタリアのDigital Video社が開発したものですが後に日本の制作環境に合わせてジブリ社内で独自に改良を施したGHIBLI Editionを経て現在はOSSのOpen Toonzとして公開され、今もジブリ作品の制作に使用されています。最新作の『君たちはどう生きるか』もOpen Toonzで制作されました。
本書もデジタルの解説部分ではToonz、Open Toonzでの処理や技法について書かれています。Open ToonzはOSSですので商用を含め、誰でも自由に使用する事が可能になっていますので実際にソフトを見ながら読んでみるのも良いかもしれません。
また合成の方法や考え方は基本的には一般的なデジタル合成と同様なのでAfter Effectsを使用する場合でも十分参考になります。

そして今週土曜日に阿佐ヶ谷ロフトAにて本書の出版記念イベントが開催されます。
今回はスタジオポノックの最新作『屋根裏のラジャー』の監督である百瀬義行さんも登壇されますので、より多くのお話が聞けるのではないかと思います。
既にチケットは完売とのことですが、配信もありますし場合によっては当日券が少数出るかもしれませんので、気になる方は阿佐ヶ谷ロフトAのアカウントをチェックしてみてください。
また当日終演後にサイン会の予定があるそうなので希望の方は、書籍を持参の上ご来場くださいとのことです。(当日物販コーナーでも販売もあるそうです)

当日は私も観覧の予定です。自分自身所属していた時に気になったことは直接聞いたりしていましたが、フィルム時代のことやデジタル化された当初のカラーマネージメントや近年のHDR対応など聞いてみたいことはたくさんあるので、どんな話が聞けるか非常に楽しみです。

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