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アンドロイド転生888

2119年9月22日
世田谷区:カナタのホストファミリー宅

夕食時。カナタとサイトウ夫妻はテレビのホログラムを眺めていた。ニュースが流れている。人間と犬が病院に出向いていく。パートナードッグと言うボランティアだ。

カナタは目を見張った。
「え!そんなのあるの?」
サイトウ氏は微笑んだ。
「そうさ。犬には人を癒す力があるだろう?」

テレビでは病気の子供達の部屋に犬がやって来て愛嬌を振り撒いている。子供は大喜びだ。撫でたり、キスしたり、飛びついたり、きつく抱き締めたり。だが犬は動じない。

サイトウ氏の妻も微笑む。
「ちゃんと訓練されてるの。ギュッとされても嫌がらない。絶対に吠えたりしない。反対に…見て。優しくしてるでしょ?」

犬はベッドに上がらされると子供の側で横たわって寝そべった。尻尾を振っている。その尻尾を子供は強く掴んだ。やはり犬は動じない。反対に笑っているように見える。

カナタはじっと見つめた。
「凄い…」
「でしょ?こんな風に動物と人間が接する事で病気の人のモチベーションが上がるのよ」

カナタはリビングの隅で寝ている愛犬のシェリーを見た。ボルゾイという種類の大型犬だ。
「ダディ。マミー。俺もボランティアしたい。シェリーと一緒にやりたい」

カナタは2人をダディとマミーと呼ぶ事にしている。実の両親は父ちゃん母ちゃんだし、サイトウさん達は国際的だからな…と言う判断だ。夫妻は最初は照れたもののすっかり慣れた。

サイトウ氏はシェリーを見つめる。
「出来るかなぁ?訓練は大変だって聞くぞ?」
「大丈夫だよ!シェリーは賢いよ!」
「そうか?」

カナタは立ち上がるとシェリーの側に行ってしゃがみ込み、頭を優しく撫でた。
「シェリー?俺と一緒にやらないか?うん?」
犬は意味は分からずとも尻尾を振って喜んだ。

カナタはサイトウ氏を振り返った。
「ねぇ!ダディ!良いだろ?」
サイトウ氏は感心する。本当にカナタはと言う少年は前向きだ。いつもそうだ。

素直で快活で天真爛漫だ。学校も直ぐに慣れて勉強が楽しいらしい。友達も沢山出来た。部活も始めた。ダンスサークルらしい。家でも仲間を呼んで庭で練習をしている。とても上手だ。

「ねぇ!お願いだよ!」
サイトウ氏はニッコリとして頷いた。
「そうだな。他人の為になる事でカナタもシェリーも成長が出来るな。うん。やりなさい」

サイトウ氏から承諾をもらうと直ぐにカナタは訓練所を見つけて通い始めた。ニュースで知ってたったの3日後の事だった。彼は何でも善は急げというポリシーなのだ。

まだ2歳の若いシェリーは直ぐに訓練に慣れて瞬く間に吸収していった。カナタもパートナーとして学んでいく。ふたりは良き相棒なのだ。
「シェリー。頑張れ。で、楽しめ。な?」

シェリーはカナタを見上げてワンと鳴く。新しく増えた家族が大好きなのだ。動物の本能で彼に信頼を寄せている。トレーナーに声を掛けられてふたりは駆けて行く。さぁ!訓練だ!


※カナタとシェリーの出会いのシーンです


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