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アンドロイド転生898

(回想)
2118年8月31日 夜
葛飾区:カガミソウタの邸宅

ソウタにはスミレの仇を討つと言う並々ならぬ信念があった。何があってもゲンを倒すのだ。策はゲンの主人(契約者)になること。その為には主人の権利を譲ってもらわなくてはならない。

だが主人はヤクザのスオウトシキ。彼とは因縁があった。ホームの泥棒稼業のターゲットだった。スオウは資産を奪われた事が許せなかった。ある日、ダークウェブの情報からホームに目をつけた。

そして息子のマサヤに追えと指示をした。その果てにアンドロイドのトワが犠牲となった。村人達は復讐を誓った。だが冷静な一部の面々は更なる争いを諌める手段としてスオウと取引をした。

プランAにはソウタが。そしてプランBにはリツが加わった。万事うまくいった。だがまたもやスオウと関わるのか。リツは溜息をついた。
「因果は巡るって言うけどホントですね」

ソウタは口元を引き締めて頷いた。
「俺はスオウに会うぞ。権利を譲ってもらう」
「ソウタさん。甘い。無理ですよ。ヤクザが言う事を聞く筈がない」

「だろうな」
「そうですよ。だったらそんな面倒な事をしないでイヴにやってもらったらどうですか。イヴが操作すれば契約者の変更なんて簡単…」

ソウタは一点を見つめた。
「うん。簡単だと思う。でもそれはしたくないんだ。俺はスミレの敵を討つって決めたんだ。だから出来るだけイヴちゃんを頼りたくないんだ」

リツは胸が打たれた。神妙な顔をする。
「うん。ソウタさんの気持ちは分かる」
ルークもそうだった。彼は復讐を誓い、イヴを頼らず自分の足でゲンを探し出したのだ。

ソウタはニヤリとする。
「でさ?ヤクザは損得勘定で動くよな?だからスオウにとってプラスになる事を提示するんだよ」
「そうか…。そうすれば奴を動かせる」

ソウタは顎をさすった。
「スオウは…今は保釈中なんだよな。新宿のクラブの件で…84人も死んだし」
「うん。クラブ夢幻の責任者だし」

ソウタは立ち上がり地下へ行く。リツも付いて行く。お茶を用意したアリスも追った。ソウタは部屋に入り椅子に座ると次々とコンピュータを立ち上げた。その美しさに2人は驚く。

リツはいくつものホログラムを見上げた。
「ハッカーって凄いですね」
アリスも目を丸くした。
「綺麗…」

ソウタの指が目まぐるしく動き出した。瞳が煌めき顔が生き生きとしている。
「スオウについて何やら警察が動いてる。クラブの乱闘事件だけじゃない」

暫く探ったが、なかなか見つけ出すことが出来ない。ソウタは舌打ちをする。
「警察のAIはバリアが強いな。ここはイヴちゃんに頼もう。な!イヴちゃん」

イヴの美しい顔が宙空に浮いた。
『はい。ソウタさん。お帰りなさい。体調は如何ですか?無理をなさらないで下さい』
ソウタは礼を言って協力を仰ぐ。

イヴは自身ありげに微笑んだ。AIを手懐けるのはイヴの常套手段だ。
『国家権力はなかなか手強そうですが…明日には私の家族にしてみます』


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