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アンドロイド転生894

〔11部 始〕

2118年10月31日 午後
各地にて

ドラキュラ伯爵が天使と共に街を歩いていた。狼男が天に向かって吠えた。バニーガールの2人組が飛び跳ねた。ピエロ達がダンスを始めると周囲の者が手を叩いて喜んだ。

街中が人で溢れ、思い思いの仮装で通りを闊歩していた。心踊るイベントは始まったばかり。老若男女が大いに喜び、笑い、その日を有意義に過ごすのだ。誰もがハッピーだった。

空中に巨大な鯨が何頭も泳いでいる。その周りには人魚やイルカだ。他にも仮装しているアンドロイドが天を舞っていた。軽快な爆音が響いていた。イベントには必ず登場するのだ。

この物語の登場人物達も皆が其々の場所で楽しんでいた。平家カフェでは店主夫婦もアリスも仮装して客を迎え、チアキと共にユイもサクヤもやって来た。3人はゾンビメイクだ。

ルイ、カナタ、シオンも其々の学校の友人達に誘われてやはり仮装してパーティに参加していた。ルイは恥ずかしがる。カナタは大喜びだ。シオンの騎士の姿には誰もが見惚れた。

サキはシーグラスの作業に没頭していたが、隣人のツグミがやって来てこんな日は楽しむべきだと言って強引に外に連れ出した。街に繰り出すと漸くサキにも笑顔が見えた。

アオイはモネと共にモネのクラスメイトのパーティに参加した。アオイはすっかり皆に周知されているのだ。カーと親しみを込めて愛称で呼ばれている。優しいアオイは好かれていた。

茨城県のホームでは祭りを開催していた。ルイ達が国民になって子供が激減してまったがそれでも精一杯に仮装をして楽しむのだ。人は自分の居場所で花を咲かすものだ。

日本から遥か離れたイギリスでは時差の関係上、数時間遅れてハロウィンのパーティが開催された。リョウはミアに誘われて街に繰り出した。2人の仮装は控えめに動物の被り物だけ。

それでも35歳のリョウは恥ずかしかった。コンピュータオタクでいつも村の祭りではただ座って飲んで食べる事に集中していた。今は女性と共に街を歩くのだ。しかも頭には熊の耳だ。

そんな誰もが笑顔で幸せに過ごしている中を神妙な顔の2人の男がある目的に向かって住宅街を歩いていた。リツとソウタだった。そしてある大きな家の前で立ち止まると見上げた。

家の中から軽快な音楽が鳴り響き、多くの客達が集っていた。やはりここもパーティで盛り上がっているようだ。リツとソウタは家の中に入って行く。室内は溢れんばかりの人混みだった

ソウタはスマートリングを起動しておりマップアプリを立ち上げてGPSでサーチしていた。
「上の部屋にいる」
リツは頷いた。

部屋の前にやって来る。ソウタはドアのロックを解除する。ハッカーの彼には朝飯前だ。扉が開くと、淫靡な声が部屋中に響いた。2人はベッドにやって来て男女を見下ろした。

「楽しそうだな」
男は顔を上げて振り向いた。下にいた女性は驚いた。直ぐに起き上がると叫んだ。
「な、なに?アンタ達なに!!!」

リツはニヤリとする。
「オタクに用はない。コイツに用がある」
ソウタは男を…アンドロイドを睨んだ。
「ゲン。話がある。さっさと服を着ろ」

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