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アンドロイド転生882

2118年9月15日 夜
ロンドン:レストラン

「え!もう通わなくていいの?」
「うん。74日目で終わったんだ」
「エマは…許してくれたの?」
「うん」

ミアの顔がパッと輝いた。
「良かったねぇ!リョウの誠意が通じたね!」
「違うよ。きっとエマさんが強いんだ。どんなに辛い事でも跳ね返す力が元々あったんだ」

ミアはそう言い切ってしまえるリョウが好きだと思う。彼は自分の行いを驕らない。人を認められるのだ。だから彼に賛同した。
「うん。そうかもね。エマは強いね」

しかし直ぐにハッとなる。
「じゃ…じゃあ…!に…日本に帰るの?」
「ううん。もう少し居ようかなと思ってる」
ミアは心からホッとする。離れたくないのだ。

リョウの瞳が煌めいた。身を乗り出した。
「俺は…何かをしたい。人の役に立つ事を。自分のコンピュータスキルを活かしたい」
「いいね!」

リョウは周囲を見渡した。
「せっかく新しい世界に来たんだ。ここで何かを成し遂げたい。いや…そんなに上手くいかないとは思うけど…やりたいんだ」

リョウは笑った。
「それにはまずは…自分がちゃんとしないとって思うんだ。朝はリチャードが8時に来て起こすけど、もっと早起きをする。だから夜は早寝する」

リチャードとはエマの家の執事アンドロイドでリョウの世話をする為に毎日通って来る。リョウはエマの祖父の持ち部屋を借りているのだ。彼らの住まいは大通りを一本隔てたところだ。

ミアは親指を立てた。
「oh!リョウ。凄い変化ね」
「だからさ。ミアと食事も9時迄にする」
「ええー」

今だってそんなに遅く迄は共にはしない。だが1時間も早まるのか。リョウの決意を嬉しく思うものの、この楽しい時間が短くなるのは寂しかった。でも反対する権利などないのだ。

リョウは顔を引き締めた
「俺も変わる。いや。気付くのが遅かった。いい歳をして…村では毎日遅くまで起きて…ずっと寝坊してたんだ。恥ずかしいよ」

ミア笑った。
「レオもそうだよ」
大学生でやはりコンピュータが得意な弟のレオは時間を忘れて没頭する事が多いのだ。

リョウは恥ずかしそうに自分はオタクだと笑った。それが可愛く思える。ミアはまだ恋心を打ち明けられない。いや…好きだとは言ったのだ。だが彼はそれを『友達』として受け止めたようだ。

ミアの友人達はリョウのようなタイプは鈍感でミアの気持ちに気付かない。だからハッキリと告げるべきだとアドバイスをするが、なかなかその一歩が踏み出せなかった。

なので『友達』として誘ってみる。
「あ!ねぇ?リョウ。これからイギリスは雨季なの。だから室内で遊ぶ事が多くなるの。今度はプールに行かない?」

リョウはまた恥ずかしそうな顔をした。
「俺は山暮らしだったから泳げないんだ…」
「私が教えてあげる!」
リョウは頷いた。何事もまずは一歩からだ。

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