アンドロイド転生890
海岸で見つけたシーグラスを加工してサキはベビー用ピアスを作製した。簡易的な平家の紋章も彫った。それが人々に受け入れられた。ホームページを立ち上げると注文が殺到した。
サキはどんなに仕事の量が多くなっても仕上がりに妥協せず心を込めて作った。サキの技術は更に向上し、瞬く間に人気サイトになってしまった。恋人のケイも友人のツグミも彼女の成功を喜んだ
2119年10月2日 午後
千葉の海岸
今日もいつものようにケイと2人で海岸に訪れてシーグラスを探していると男女が声を掛けてきた。にこやかに微笑んでいる。
「もしかして…サキさんですか?」
サキは驚いた。見知らぬ人が自分を知っている。
「は、はい…。そうですけど…」
「僕達は太陽テレビの職員です。たまたま取材でここに来たんですけど…もしかしてと思って」
テレビの職員…。サキはそうなのかと思う。
「もし良かったら取材させてくれませんか?シーグラスピアスの事を知りたいって人達が沢山いるんです。お願いします」
サキは心底驚いて、取り敢えず連絡先だけ交換して家に帰った。直ぐに隣に住むツグミに報告した。ツグミは心から喜んだ。
「出なよ!TV!!」
サキは戸惑っていた。
「で、でも…恥ずかしいよ…」
「大丈夫。サキちゃんは可愛いし真面目だし、素敵なシーグラスは絶対に受け入れられるよ!
「そ、そうかな…。ホント…?」
ツグミは力強く頷く。サキは嬉しかった。友達っていいなと思う。こんな風に人の成功を喜んでくれるのだ。応援してくれるのだ。
ツグミは親友だ。だから打ち明けたくなった。
「あのね…話したいことがあるの。あ…あのね…ケイは…執事じゃないの。恋人なの」
「うん。そうかなぁ…って思ってた」
サキは目を見開いた。ツグミは微笑む。
「だって…仲が良いもん。それにサキちゃんの見る目が違う。彼氏って目で見てるもん。いいじゃない。ジェネなんて素敵だよ」
ジェネとはニュージェネレーションの略でアンドロイドに恋愛感情を抱く人間のことを指す。サキは嬉しかった。理解してくれるのだ。
「有難う」
ツグミはサキをじっと見つめた。
「サキちゃんは友達だから私も打ち明けるね」
ツグミ自分の腹を触った。妊娠7ヶ月だ。
「この子の父親はユウトじゃないの」
ユウトはツグミの夫だ。ツグミは微笑んだ。
「無精子症なの。だから私達はじっくりと話し合った結果、精子バンクに行ったの。遺伝的に繋がりはなくても僕の子供だって言ってくれる」
サキはツグミの言葉に感動していた。そんなプライベートな事を打ち明けてくれた。そして夫婦の決断も絆も素晴らしいと思った。
「ツグミさん。素敵だよ!」
ツグミはニッコリとする。
「子供はいらないってずっと思ってたんだけど、ある日スイッチが入っちゃった」
その言葉がまたサキの運命を大きく変えるのだ。
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