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アンドロイド転生869

2118年9月2日 正午過ぎ
東京都内:品川区立高校の屋上

ルイの目の前にカナタとシオンの立体画像が浮いている。ルイはパンを食べていた。
「よお。どうだった…?」
カナタとシオンは苦笑した。

ルイも苦笑した。
「その顔は俺と同じかもな」
昨日。其々の高校の初登校日だったが生徒達の反応は良い意味で凄かった。

3人の外見は異質なのだ。ルイは赤毛で銀目。カナタはブルーアイ。シオンは銀髪で紫色の瞳をしている。そして全員色白だ。メラニン色素に異常を来している。近親婚の末の結果だ。

ルイは自分の容姿が人に受けいられないだろうと懸念していたが杞憂に終わった。生徒達は目を輝かせてルイに集まったのだ。この時代は髪を染めたり瞳の色を変えるという概念がない。 

自分達と違う色合いのルイに興味津々だった。
「オレンジの髪はキャプテン・ジョーだ」
「綺麗な目の色!!銀なんて凄い!」
「新民者って皆んなそうなの?」

矢継ぎ早に質問されてオロオロとするばかり。今日から授業が始まり落ち着いたものの彼らはルイを盗み見た。休み時間になると多くの生徒達が集まって来る。だが皆んな好意的だった。

昼休みになると皆んなから誘われた。学食に行ったものの人が集まり過ぎた。何とかパンとジュースを買って屋上に逃げてきたのだ。ルイは飲み物をゴクゴクと飲んだ。はぁと息を吐いた。

だがここも多くの生徒達がおり、ルイに注目して集まって来た。家族に連絡を取りたい。頼むから時間が欲しいと言うと理解してくれた。元来、人は物事に執着しないのだ。

「シオンは?なんか言われたか?」
『妖精とか…天使とか…』
とりわけ美しいシオンの事だ。現実的ではない例えをされると思ったがその通りだった。

シオンは不思議そうな顔をした。
『授業はどうだった?なんだか…凄く簡単なんだけど…。僕の学校だけかな?』
ルイもカナタも同意した。確かに単純だった。

彼らは知らないが、ホームの人間は知能が高かった。近親婚はメラニン色素の弊害だけではなく頭脳という恩恵を齎したのだ。だがそれを役立てる機会がなかった。閉鎖的な村では。

3人とも教師アンドロイドが教える全てを直ぐに理解した。さらにそこから独創的な発想が生まれた。昇華させて突き詰めるのだ。彼らにとって勉強とは新たなる発見であった。

特にルイは子供の頃から物事を深く追求する事が好きだった。疑問に思ったら答えが知りたい。納得して知識を増やしたいのだ。
「なぁ!図書館ってあるらしいぞ?行こうぜ」

カナタは鼻で笑った。
『行かねえよ!そんなとこ!俺はモールに行くんだ。買い物をするんだ』
自分で選んだ物を手に入れる。カナタの夢だ。

シオンは優雅に微笑んだ。
『ねぇ?今度の日曜日にホストファミリーが家でパーティするんだって。2人も来ない?』
間髪を入れずにカナタは行くと応えた。

ルイは笑った。カナタなら当然の反応だろう。俺は…どうしようかな。パーティになんて行ったらまた注目の的になるだろうな。でも見聞を深めたい。よし。行こう。ルイも頷いた。

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